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word45 「もしも 世界に男が僕1人だけになったら」①

 もしも僕が空を飛べるとしたら――。


 たまにこんな妄想をすることがある。ふとした時に、学校の教室で、親が運転する車の中で、窓の外を見ながら思うのだ。


 あの広い大空を飛ぶことができたら、どれほど気持ちいいだろうかと――。


 景色の見え方はどうだろう。あの遠くに見える山を空から見下ろせば、どう感じるのだろう。綺麗だと思うのか。はたまた高くて怖いと思うのか。


 風の受け方はどうか、匂いはどうか、周囲からはどんな姿に見えるのか、頭の中で思い描いてみる。


 ただの暇つぶしだ。暇だけど、スマホをいじったりできないときにやるどうしようもない暇つぶし。やったところで意味は無い。実際飛べるようになる訳がないし、頭の中だけじゃ空を飛んだらどうなるかの答えも分かる訳がない。


 けれども、そんなことに没頭してしまう瞬間がある。目を開けたまま眠っているかのように、体の動きを止めて、口を開いて考える。自分だけの世界に入り込むって楽しい……。


 ……そして、またある瞬間に肩を叩かれたり、話しかけられたりして、窓の外の世界から現実に連れ戻されるのだ。


 ――妄想と言ったら、みんな日常的にやっていることだと思う。誰にも言わない、自分の頭の中だけの世界を創造する。そのジャンルは十人十色で様々であるだろうがきっとみんな頭の片隅にオリジナルの世界を持っている。


 女性だったら、恋愛の妄想をする人が多いだろう。もしもあの人と付き合ったら、結婚したら、どんな生活が待っているだろうか。相手は芸能人かもしれないし、好意を抱いているけれど絶対にそれを伝えられない人かもしれない。


 そういうケースだった場合、正に頭の中だけの世界。


 中学二年生だったら、自分が超能力を持っていた場合だとか、学校にいきなり不審者が侵入してきて、華麗に撃退するだとか。自分が他人とは違う特殊な人間だったらという妄想だ。


 自分の中にもう1人の自分を飼っている人もいるだろう。現実の自分とはかけ離れている……大人気アーティストである自分、超売れっ子アイドルである自分、日本代表のスポーツ選手である自分。そういった理想の自分を作り上げて、生活ぶりを妄想する。


 僕はと言えば、最近は好きな女子である折原とのデートを妄想することが多い。色々とシミュレーションした結果、折原との理想のデートは天気の良い日に素敵な公園を散歩して、雰囲気の良いカフェでスイーツとお茶を頂くのが1番という結論に至った。カラオケとかではなく、敢えて公園とカフェ。ミステリアスな彼女から色々な話を聞きたい。


 そんな各々持っている頭の中の世界に……実際行くことはたぶんどう頑張っても無理。行けるケースもあるだろうが、その場合でも難しくはあるだろう。


 しかし、僕が持っている1つの道具を使えば、行けないにしろ妄想をよりリアルなものにすることができる。


 もしも何々だったら……に対して、最も正確な答えを出すことができるのだ――。


『もしもあなたが想像しているように、あなただけが空中を自在に飛ぶことができるようになると、しばらく自宅にも学校にもマスコミが押しかけ、国の内外問わず様々な人間から体を調べさせてほしいと依頼が届き、個人情報をネットに晒されるでしょう。』


 こんな風に、身も蓋もないことを言われてしまうこともあるが……。

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― 新着の感想 ―
[一言] だって普通に考えて空飛ぶとか不法侵入しまくりだからな
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