番外編5 「幼なじみ 死姦」⑥
黒いパソコンが教えてくれた彼女の帰宅時間まではまだ2時間もある。何もせずに待つにはちと辛い長さだ。退屈になるだろうことを考えると、暑さも相まってだらしなく口が開いた。
一度家に帰る選択肢や、いっそ電気もクーラーも点けてしまう選択肢も頭に浮かんでくるけれど、俺はただベッドの下で目を閉じた。
理由は下手なことをしてこの先の幸せをおじゃんにしたくないからだ。2時間後のことを考えればこのくらいのことで文句を言っているとバチが当たると思った。
だって、今でさえ実のところ幸福のほうが大きい。鼻に香ってくる彼女の匂いだけで十分だ……。
狭い中で少しづつ態勢を変えながら、スマホをいじったり、目を閉じたりを繰り返す。時折、雫になって流れてくる汗は幼なじみの彼女のパンツで拭った。あまり吸水力が高いものでは無かったので、何度か肌に押し付けて。
まだ浅い夜なので、微かに周囲の部屋や外からの音が感じられた。自分の部屋で聞くのと同じようだけれど、少しづつ違う音だった。彼女は毎日この音を聞いている。
俺はその中で彼女との思い出を振り返ったりした。幼なじみの彼女は素直で愛嬌がある子だった。誰にでも笑顔で優しく接していたし、顔もかわいい。美人と言われるタイプではないけど、なんだかかわいかった。
スマホに保存してある彼女の写真を何度見てもそう感じる。
俺のことを内心気持ち悪いと思っていたようで、現在彼氏もいるらしいけれど今でも客観的に見て悪い子ではないはずだ。
黒いパソコンで調べたところ不純な恋愛ではないし、内心どんな風に思っていても相手にそれを悟られないようにするだけで優しいと言える。
色んな悪がいるこの世の中では、白いほうだ。清純と言っても過言ではない。いじめや犯罪の経歴もないし、親も兄弟も真っ当に生きている。殺される理由など何もない子だ。
だからこそ、そんな子を殺すって興奮する。あの白が似合う子が俺みたいなクズに好き放題汚されるなんてたまらない。俺にとって可哀想なのは抜けるのだ――。
ようやく玄関のドアが開く音が聞こえて、彼女が帰ってきたときには着ているシャツががっつり湿るくらいの汗をかいていた。見なくても背中と首周りは色が変わっている。
すぐに何の警戒もしてないだろう速度で彼女の足音が近づいてきて、部屋の電気とクーラーが点けられた。急に明るくなった部屋を、目を細めながら見れば、すぐそこに彼女の足が見えて、髪の毛が1本落ちてくる。
そしてそれを見た俺はもう興奮がピークに達した。まだ早いけれど、いつも1人で妄想している時であれば間違いなくピークと言える興奮度。思わず、強く吐息が漏れてしまったので、口を手で覆う。
続けてスカートが落ちてきたときはもうどうにも止められない。
おそらくはすぐにお風呂に入るつもり。さらに続けて、上に着ていた服がベッドの上に置かれる音、靴下を脱いで肌が見えるようになった足。俺は鼻も覆って荒くなる呼吸を抑える。
かくれんぼをしている時であれば見つかっていたに違いない。それくらいの吐息の音がしてしまったと思う。けれど、自分以外の人間が部屋にいるなんて思いもよらないだろう彼女はそのまま風呂場のほうへ向かった。
確認した俺はベッドの下から出た。本当は風呂に入ってるときに襲う予定だったけれど予定変更を体が強く求めた。
小さな洗面所で鏡を見る彼女と一瞬目が合う。その自分が知っているよりもっとかわいくなった顔が振り向くよりも早く、俺は彼女を羽交い絞めにして首を強く締めた。
殺人、人を死に至らしめるその行為をするのは想像の何倍もの恐怖を伴った。俺がそうしようとしているのが分かった彼女が全力で抵抗してきたからだ。
とても酒に酔っている女とは思えない、正に火事場の馬鹿力を発揮して、全く愛嬌を感じない見たことの無い顔をしてもがいた。
それを断ち切ろうとするのは怖かった。殺すのも気持ちがいいとついさっきまで思っていたのに、血の気が引く感じがした。短い時間の中で何度もやはり力を抜こうか考えてしまう。
次第に抵抗の力は弱く、踏ん張っても大したことが無くなってくる……逆に恐怖心はより強く……強く……頭の中で怖い怖いと叫んでしまうほど強く……。
けれど、それなのに……股間の竿はがちがちに固くなっていた。




