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word41 「黒いパソコン 材料」②

 この黒いパソコン1つで、1日に何度も検索できないことはもう十分に分かった。過ごした時間と僕の勘が言っている。何をしたって無駄である。これでは24時間に1度しか検索することはできない。


 そして、1つでできないならば2つ以上使ってやるしかない。シンプルな発想だ。


 シンプルだけど、僕が今までこの発想を持っていなかったのはそんなこと無理に決まっているからだ。誰かに言われた訳ではないけど黒いパソコンは世界で1つだけだと確信していたし、2つ以上あったとして一体どんな無理難題の入手法だろうか想像もつかない。


 作るなんてもっと無理だし、まずこれを構成しているおそらく希少な材料が手に入りっこない。


 だから、考えもしていなかった。黒いパソコンを2つ以上保有するなんて。でも最近そうでもないと思ったのだ……。思わされる出来事があった……。


 ショッピング検索の登場だ。宇宙のどこかから一瞬で物を取り寄せるこの機能。これを使えばどうにかできるんじゃないだろうか……。


 姉の記憶を消した時に感じた異質な雰囲気。それは初めて黒いパソコンに触れた時のものと酷似していた。地球の人類の脳内から外れた力。記憶を消す装置すら取り寄せられるのであれば、もしかしたらこの黒いパソコン自体も……。


 ここで、ショッピング検索の説明をもう1度読んでみる。一応スマホで写真を撮っていたものだ。


『ショッピング検索は宇宙中にある物の内、商品として売られているものの中から、条件に合う物を見つけ出し、望むならばそれを取り寄せることができる機能です。購入には毎日の検索で貯まるポイントを消費する必要があり、購入にも1日1つまでの制限があります。なお、所持ポイント以上の値がする商品は検索しても表示されません。』


 説明はこうだった。


 この説明から僕の望み通り黒いパソコンを購入しようと思えば、2つの条件を満たしていないといけないことが分かる。まず1つ目が黒いパソコンがどこかで売られていること、そして2つ目が黒いパソコンを購入する為に必要なポイントを所持していること。


 どちらも予想の段階では難しいと感じる。1つ目の条件から既に、宇宙の全てを知っているこんなものが宇宙のどこかに売っているとは思えない。さらに2つ目の条件もたぶん無理だ。


 どういう基準で値が付けられているかは定かではないが、ショッピング検索で要求されるポイントはけっこう高いのだ。ポイント自体は1回検索をするごとに1ポイント、つまり1日に1ポイント貯められるのだけど、その要求量は買えば安いものでもかなりのものである。


 僕は試しにその辺のスーパーやコンビニで売っている物でショッピング検索をしたことがある。僕が好きなポテトチップス・コンソメ味だ。食べたくなったのに家に無くて、安ければ買いたいと思ったという理由もあるが、それでショッピング検索で日本のものを取り寄せた時の費用はどれくらいか実験した。


 どこでも100円くらいで買える、セールをしていれば80円とかもあるだろう。そのくらいのものなのに、黒いパソコンで取り寄せようとすれば5ポイントが必要だった。


 タダで貯まるポイントなのでそれでも安いけれど、100円のもので5ポイントなら普通のパソコンを買うのにだって何十年もかかってしまう。


 1ポイントの価値が日本円における価値と比例するとも思っていないけど、記憶を消す道具は1番安い僕が持っているものでも40ポイントの値がした。価値のあるものはちゃんとそれなりの値段になっているっぽい。


 となると、僕はまずもう少し価値の低いものから検索してみたい。黒いパソコン目的のショッピング検索だけでは、現時点で黒いパソコンは買えないという情報しか落ちない可能性があるから。


 それでも別にどちらが先でもいいのだけど、たぶん黒いパソコンが1つしか無いのは正解だと思うのだ。これも勘だけど、こんなものが2つ以上あってどこかで売られているなんて、どうしても考えられない。2つ目の条件以上に、1つ目の条件が満たせない。


 だから、今日の僕が検索するワードに選んだのは……


「黒いパソコン 材料」


 これだ。


 材料が何かを調べるのではなくショッピング検索。材料となるものがあるのであれば、これでも分かる。


 黒いパソコンを作ろうと思えば、それは材料と作り方を黒いパソコンで調べるしか無い――。


 矛盾しているけれど、そう思うのだ。


 黒いパソコンの画面のデザインが変わって、結果が分かる――。


 僕はそれを見て「ビンゴ」と、思ったのだった…………。

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