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第98話 おっさん、ひらめく

 虎時(とらとき)らは改心したようだった。

 秋穂から刑務所での態度も良くて模範囚になったと言われた。

 あの魔力回路は罪の意識に作用する奴だから、どんな強情な罪人も改心すると禁書に書いてあった。

 まあ殺したくても殺せないやんごとなき人物が犯罪者になった時は重宝しそうだ。

 異世界ではそういう使われ方をしているんだろう。

 想像だがな。


 恐れていた事が始まった。

 それはスタンピード。

 今回のは鋼毛鼠だ。

 小猿鬼がいなくなって、餌が確保できたため大繁殖したらしい。

 だが、大きい個体はいない。

 数が多いだけだ。


 社員総出で鈍器を持って鋼毛鼠を叩きのめすが、一向に減る気配がない。

 埒が明かないな。

 ベンケイも走り回り鋼毛鼠を噛み殺して回るが、たかが知れている。


 ヘリの音がしてバラバラと何かが落ちる。

 それを鋼毛鼠が食べて死んでいく。

 自衛隊のトラックも到着して毒餌を撒き始めた。

 警察車両や消防車からも毒餌が撒かれた。

 終わったようだ。


 今回は軽い被害で済んだな。

 ニュースをつけると海外が酷かった。

 5メートルもあるワニのモンスターが大挙して押し寄せ混乱した街などが映し出される。

 ビルがバリバリとワニに食われる。

 倒壊する建物。

 さながらパニック映画だ。


 日本が軽く済んだのはひょっとして俺の活動のせいか。

 もしそうだったのなら、報われた気がする。


「よし、死骸の後片付けをするぞ」


 俺達は死んだ鋼毛鼠を冒険者ギルドに持って行って魔力に変えた。

 魔力銀行に行くと沢山の人が押し寄せていた。

 その顔は見知った顔だった。

 冒険者ギルドを経営しているオーナー達だ。

 換金するモンスターの死骸なら沢山ある。

 金を道端にばらまいたようなものだ。

 冒険者ギルドが盛況になるのもうなずける。


 そして、俺は魔力銀行の中に入ると魔力を買えるだけ買い、そしてインクの材料に変えた。

 魔力の相場は1円を切っていた。

 物凄く得した気分だ。


 哲候(てっこう)さんからメールをもらった。

 死骸が多くて困っているので、魔力に変える魔力回路を送ってくれとあった。

 人気取りのパフォーマンスをするらしい。


 今回のスタンピードは猿鬼の数百倍の数がいたらしい。

 よく毒餌の備蓄があったなと思ったら、前回のスタンピードの反省で簡単に殺せる方法を模索したとの事。

 異世界のモンスターは確かに毒に弱い。

 地球のモンスターは毒耐性を身につけているはずだが、効き目のある毒を開発したようだ。

 次回はこんなに簡単にはいかないだろう。

 今回の毒に対する耐性を獲得しているはずだ。


  ◆◆◆


「ふいー」

「なんや、おっさん臭いな」


 俺は異世界に戻り、アルマの前でソファーに身を横たえ弛緩した。


「いや、俺はおっさんだよ」

「つかれたんか」

「今回は楽勝だったけど、世界を運営している存在ってどういう考えなんだろう」

「うちが思うに、バランスちゃうかな」

「バランス?」

「増え過ぎず、減り過ぎずやな」


 でも、進化は望んでいるような気がする。


「そうなのかもな。俺の役割ってなんだろな。切り札か。いや違うな。せいぜい不確定要素か。時間が止まるのも謎だ」

「眉間に皺寄せて、えろう難しい事を考えとんな。物事なんてなるようにしかならんのや」


 なるようにしかならないか。

 まあ、真理ではある。

 俺は俺の出来る事をしよう。


 よし、魔力回路を開発するぞ。

 老若男女問わず虜にする物。

 えーと。

 毎日する事。


「なあ、アルマ。起きたら何をするか言ってみてくれ」

「そうやな。お目覚めの接吻をして、歯磨き洗顔やな。そして化粧や「それだ!!」」

「なんや、大声を出してからに」

「サンキュ。助かったよ。愛してる」

「愛してるやなんて」


 俺が考え付いたのは身だしなみだ。

 一部例外を除いて、誰もがする。

 身だしなみを整える魔力回路。

 洗浄?

 いやいや、それは現代の道具で事足りてる。

 俺が考えついたのは魅了の魔力回路だ。

 これは精神魔法の一種で、異世界では王侯貴族には通用しない。

 精神魔法に対する備えは大物ほど厳重にしている。

 大店の商人にも通用しないだろうな。


 場末の娼婦なんかが使っているらしい。

 異世界では馬鹿にされる技術の一つで、相手に少しだけ魅力的に映るというのがこの魔力回路の特徴だ。

 だが、地球では魅力が少し増すというのは大きな要素ではないだろうか。

 魅力の魔力回路を社運を賭けて売り出す事にした。


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[一言] わにわにパニック!!
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