第65話 おっさん、召喚獣を手に入れる
「ぐわぁ」
「ひぃ」
「しびれるぅ」
今は深夜。
絶賛、殺し屋さん達が魔道具の電気トラップに掛かりまくりだ。
電気柵、作動中の張り紙を見落としたのかな。
警察を呼んだがなかなか来ない。
俺が殺し屋を武装解除して縛り上げた頃に警察の到着となった。
この借家ともお別れかな。
こぢんまりとした離れで気に入っていたのに。
お金もできたし、引っ越す頃合いだとは思っていから、仕方ない。
◆◆◆
三日後。
引っ越しも一段落したのでダンジョン攻略を始めたいと思う。
しかし、他の人間はパーティに入れたくない。
金で裏切るかもしれないのだ。
低階層は拳銃で無双できるだろう。
しかし、6階層あたりから拳銃の弾が全く効かなくなる。
冒険者はスキルを活用して倒すらしいが、俺にはそんな物は無い。
召喚獣でパーティを作れば良いと考えた。
だが、ここで問題発生。
召喚獣はマスターが弱いと契約してくれないのだ。
異世界の俺は最強だが、地球の俺は弱い。
だが、弱いがそれならそれでやりようはある。
俺は合成魔石の作り方を暖かい家に提供した。
そうしたのは合成魔石がどうしても欲しかったからだ。
俺が作っても良かったのだが、今までにお世話になったし恩返しのつもりだ。
代表は合成魔石を作りまくって必ず利子つけて恩は返すと言っていた。
俺は利子をくれるなら、合成魔石でくれと要望した。
余剰分の合成魔石をただで手に入れられる事になった。
魔力銀行あたりで合成魔石は活躍するだろうから、物凄く儲かるはずだ。
「さあ、青汁無料キャンペーンだよ。魔力を魔石に入れてくれた人には青汁がただ」
「それはお得だ」
合成魔石に客が魔力を注いで行く。
みんなが魔力を売らないで寄付してくれるのは訳がある。
一般人の魔力は100ぐらいだから、1000円ほどだ。
そんな訳で2000円の青汁が1000円の魔力で手に入るのだから得だと思う。
これで1日で2万の魔力が手に入る。
1日の終わりに魔力銀行に預魔力に行く。
現在、魔力チェッカーと魔力移動の魔力回路を特許登録して、魔力銀行で使っている。
ずいぶんと便利になった物だ。
便利にはなったが、不満がある。
召喚魔法のスキルオーブの値段は300万魔力だから、150日分だ。
そんなには待てない。
俺はポーションの販売を他の村にも広げた。
なにせ魔力ならすぐに集まるからポーションの作成も思いのままだ。
そこでもお金の代わりに魔力を頂く。
瞬く間に魔力は集まった。
魔力銀行へ行き、溜めた分の魔力をおろして、スキルを使う。
「魔力通販」
ぽとりと落ちる召喚魔法のスキルオーブ。
さっそくスキルオーブを使った。
「ステータス」
――――――――――――――
名前:山田 無二 LV5
魔力:65/500
スキル:
収納箱
魔力通販
次元移動
魔力壁
召喚魔法
――――――――――――――
スキルは覚えた。
最初の召喚獣は何にしよう。
俺はあの犬に会いに行く事にした。
◆◆◆
あの公園で犬は相変わらず寝そべっていた。
のんきなものだ。
「なぁ、俺の相棒になってくれないか」
唸りだす犬。
俺の何がいけないのか。
その時、客との会話を思い出した。
「あんた、傭兵上がりだろ」
「なぜ、そう思うんだい」
「雰囲気ってのかな。そういう物が伝わってくる」
そういう会話だった。
雰囲気か。
俺の雰囲気が駄目なのか。
俺はアルマと接する時の事を思い出して、気分をリラックスした。
腹を見せる犬。
こういうのじゃない。
ベロをはぁはぁだして、尻尾を振って寄って来いよ。
まあ、いいか。
「契約」
これで契約できたはずだ。
名前をつけてやらないとな。
「お前の名前はベンケイだ。なベンケイ」
「わん」
義経は最初のうちは弱かったという漫画もあるからな。
ぴったりだよ。
「初召喚だ。召喚ベンケイ」
ベンケイが俺の脇に現れた。
よし、よし、良い子だ。
俺は思いっきりもふってやった。
「帰還」
ベンケイが元の位置に戻る。
今は一軒家を借りているから、犬小屋を作ってやらないとな。
その前に洗ってやらないと。
ベンケイが察知したのか逃げ出した。
甘いぞ、甘い。
「召喚ベンケイ。捕まえた。ほら、諦めろよ」
家に連れて帰りゴシゴシと洗ってやった。
洗うとつやつやのフワフワになって抱き心地が最高になった。
いよいよ明日から探索者教習だ。




