第34話 おっさん、ミスト・ダンジョンの攻略に掛かる
俺は次のターゲット、ミスト・ダンジョンの入り口に立っていた。
やはり他の封印ダンジョンと同様に石碑があり、入り口までは簡単にたどり着いた。
「まずは情報通りなのか、確かめてみよう」
「はいな」
「「はい」」
俺はダンジョンの中でミストゴブリンを見つけた。
どこから見ても普通のゴブリンなんだが。
メイスで殴り掛かる。
「やったか?」
ミストゴブリンはバラバラに四散し霧になる。
おう、これは物理は効かないかな。
「モニカ頼む」
「燃え盛る亡霊の妄念よ渦巻け、竜巻」
モニカが持ったカセットガスバーナーから青白い火が蛇のようにくねる。
蛇は小さい竜巻を作り霧を巻き込んでいく。
霧は更に四散し希薄になる。
しばらく見ていたら霧は一纏まりになり、ゴブリンの形になった。
三割ほど小さくなったようだが、死ぬまではいかないようだ。
ミストゴブリンは俺の方に向かい歯をむいて威嚇し逃げて行った。
「うん、倒せないな、あれは。一度外に出よう」
「うちには対処が思いつきまへん」
「手強い感触だわ。流石、悪名高い封印ダンジョンね」
「強敵」
◆◆◆
外に出て考える。
まず物理は駄目だ。魔法は効くけど効率が悪い。
ドロップ品はポーション、生産系、鑑定系を抜くと戦闘補助する意味合いの物が殆んどだから使えない。
魔道具は性能が低すぎて魔法やスキルに大分劣る。
霧を吸着する粉なんてのがあれば良いのだけど、思いつかないな。
アイテムボックスに収納できればいいのだが。
ああっ。
思い出した。
酔って口にした俺の願いは物を沢山収納できるスペースが欲しいだった。
叶っているじゃないか馬鹿野郎。
俺のアイテムボックスには際限なく物が入る。
俺を異世界に拉致した野郎は悪魔か、悪魔なのか。
願いは叶えるが最悪の場所に送り込む。
捻くれた野郎には違いない。
まあいい。
ダンジョンの攻略を考えよう。
やっぱり、ここは掃除機に吸い込む手かな。
魔力通販で掃除機を買う。
上乗せの魔石の充填は冒険者ギルドでやってもらった。
冒険者ギルドでは魔石の充填サービスが既に始まっている。
さて、リベンジといこうか。
発電機の乗った台車をアルマに押してもらい。
俺は掃除機を操る。
ダンジョンに入りミストゴブリンを見つけ掃除機で吸い取る。
「早く処理を!」
「はいはい。手はずどおり焼けば良いのね」
台車の上のスチール製ゴミ箱の中は燃え盛っており、そこにエリナは掃除機の紙パックを放り込む。
ギョワーという断末魔の悲鳴でミストゴブリンは魔石になった。
でもこれ弱っちいミストゴブリンだから通用する手だよな。
掃除機の口までモンスターを追い込む手段が必要だ。
風魔法だな。今の経済力なら余裕で買える。
よし、帰って仕切りなおしだ。
◆◆◆
スキルオーブが手に入るまで俺達は商売に力を入れた。
幸い商品はよく売れている。特にボールペンの売れ行きが凄い。
風魔法のスキルオーブはスキル屋の本店に在庫があり入手してもらう事に。
ついでに方向察知のスキルオーブも入手してもらう。
代金は全部で金貨450枚だったが、余裕で払えた。
風魔法はエリナに覚えて貰う。
役割分担はエリナがモンスターを風魔法で拘束、俺とアルマが掃除機を操り、モニカが台車と焼却と紙パックの交換を担当する。
1階層のザコは問題無かった。
一応俺が先頭で罠探知しながら、進んだ。
いよいよボス敵だ。
ボスはカイザーウルフに見えるが霧になるのだろう。
ミストカイザーウルフと名付けた。
ボスのミストカイザーウルフは素早かった。
俺は体当たりを食らうたびに疲労が蓄積するのを感じる。
「こいつ、接触するたびに何か吸い取ってる」
俺はメイスでミストカイザーウルフを叩く。
ミストカイザーウルフが霧になる。
「今だエリナ!」
「拘束。やったわ!」
エリナが風魔法でミストカイザーウルフを拘束する。
アルマが掃除機を引っ張って駆け寄り、拘束されたミストカイザーウルフを吸い取る。
「この、この、早う入ってくれや。やっとやわ」
そして、焼却され討伐は成功した。
1階の攻略は終わった事になる。
掃除機さえあれば、ミスト・ダンジョンは楽勝だな。
行けるぞ。
ガンガン行こう。




