表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/284

第32話 おっさん、塩漬け依頼を受ける

 朝一で冒険者ギルドに行く。

 依頼の掲示版を見て大分下の方にある塩漬け依頼を剥がした。

 金額が破格で盗賊の持ち物を自由にして良い旨書いてある。


 やってみるとするか。

 エティの窓口に並ぶ。


「ムニさん、この依頼受けてくれるのですか。嬉しいです」

「なんとなく、ピッと来たんだよな、この依頼」

「これ、10パーティほど挑戦してますが、未だに成功はおろか、帰って来た人もいません。ですが、ムニさんなら出来ると思います」

「そうか、程々にやってみるよ」


 手続きをしてもらい、四人でバイクに跨り、問題の盗賊団の居るであろう場所に急ぐ。


  ◆◆◆


 樹海の入り口に三日掛けて着いた。


「今回の依頼はどないなもんやろか?」

「樹海盗賊団と名付けられた盗賊の討伐だ。樹海の奥地に拠点を構えているらしい」

 アルマの問いに俺は答えた。


「受付している時に後ろから聞いていたけど、難しい依頼なんだって。大丈夫なの?」

「うーん、樹海に踏み込んで無理そうなら諦めるよ」


 エリナは心配そうに聞いてきて、俺は軽い口調で答えた。


「秘策?」

「秘策があるかだって、無くもない」


 モニカが一言、言う。俺は言葉を推測して返事をした。


「まずは、盗賊の歩いた痕跡を探そう」


 俺達は樹海に踏み込み、探索を開始した。

 迷わない様に木に紐を結びながら、鉈を片手に進む。


 3メートルぐらいの蛇モンスターがスルスルと木立をぬうように接近してきた。


「気をつけろ!」


 俺は警告の声を上げた。


「亡者の手よ絡み付け、拘束(バインド)


 モニカが詠唱し、手に持ったカセットガスバーナーから青白い火が飛んで蛇モンスターに絡みつく。

 蛇は苦しみもがくが、火の束縛は離れない。

 程なくして蛇モンスターは息絶えた。


「よくやった。でも森で火は危ないから気をつけろ」


 俺の言葉にモニカは少し複雑な顔で頷いた。


「なんや、初めてアンデッドダンジョンに行った時を思い出すわぁ。そんなに時間も経ってへんのに昔の事みたいや」

「分かる分かる。展開が早すぎて理解がついていけないのよ」

「劇的展開」


「俺もだ。俺もこの一ヶ月は急展開すぎて正直とまどう。あれっ、さっき結んだ紐がない」

「ほんまや。野生動物のいたずらやろか」


「そんな訳ないと思うが。やばいぞ。闇雲に歩くのは駄目だな。今日はここで野営しよう」


 エリナとモニカは先に休んだ。

 俺はアルマと二人焚き火を前に雑談していた。


「なぁ、ご主人様。ご主人様の夢は何? うちの夢はお嫁さんや」


 俺はとんでもない事を気づいてしまった。

 異世界に飛ばされる前、酔って会社の同僚に夢を語ったのを思い出した。

 確か、俺の事を誰も知らない外国に行って、通販で生活したい。

 あと四つほど語った気がする。

 思い出せないのは措いておくとして、全て叶っているじゃないか。


「うわ、俺の馬鹿。酔ってたからといってなんでそんな事を言ってしまったのだろう」

[なんや、分からんけど。酔ってとんでもない夢を語ったみたいやな」

「ああ、夢が叶ってみてみると後悔する事もあるんだな」

「そうやな。夢に憧れている時が幸せなのかもしれへん」

「俺は疲れた。交代の時間になったら起こしてくれ」


 夜中過ぎ見張りのアルマが大声を上げ、起こされた。


「敵襲や!」

「盗賊団の方から来てくれるとは、ついているな」


 盗賊は半分ぐらいが松明を持っている。

 俺はヘッドライトを出して装備した。


「お頭また間抜けな冒険者ですぜ。俺達に目印を取られた事にも気づかないとはお笑い草だ」

「おまえら、やっちまうぞ」

「「「おー」」」


「みんな俺に任せてくれ」


 俺はそう言ってから、アイテムボックスからトイレのすっぽんを取り出し盗賊の前に躍り出た。


 俺はトイレのすっぽんを使いレベル200のパワーで殴りまくる。

 盗賊は思い思いの武器を抜いて応戦したが、俺の魔力壁に阻まれ有効な攻撃をできずに数を減らした。

 中には身代わり人形などを装備している奴もいたが二度殴れば問題ない。

 固い奴も三度ほど殴ると魔道具の魔力がなくなり無防備になった。

 盗賊が使ってきた攻撃力アップと俊敏力アップのドロップ品も俺にはさほど効果がないようだ。


「おい、引き上げるぞ」


 盗賊の頭が声をかけると潮が引くように逃げだした。


「元気なのを一人残して後は止めを刺そう」


 手分けして殺して回る。

 遺体は入れたくはなかったが、アイテムボックスに入れた。


「おい起きろ、まだ死にたくはないだろう」


 俺は一人残った盗賊の頬を叩きながら言った。


「うっ」


 短く呻いた後盗賊は目を覚ました。


「やっと起きたか。アジトに案内しろ」

「案内すれば殺さないんで?」

「ああ、約束は守る」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ