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第13話 おっさん、安住の地を得る

 森が遠目に見えてきた。

 あれがサラクオアシスらしい。


「みんな動くなよ」


 俺は電池で走る玩具のミニカーを置いた。

 ミニカーには唐辛子を満載してある。


 ミニカーはサンドシャークのいる所に行き大口に飲まれた。

 サンドシャークにカプサイシンが効いてのたうち死んだ。

 この方法でどんどん行くぞ。


 だが、3匹を倒した後、サンドシャークはミニカーを飲み込まなくなった。


「あー、どうするかな」

「あの」


 気の弱そうな少年が話し掛けてきた。


「なんだ」

「ひっ、ええと」

「なに、おねえに話してみ」


 アルマが優しく語り掛ける。


「聞いた事があるんです。サンドシャークに出くわした旅人が、じっと動かずに枝を投げて誘導したって」

「なるほどな。やつら砂の上にいる獲物の振動を探知するのか」

「それである程度誘導したら騙されなくなって、今度は投げるのを石に変えたって言ってたよ」

「ミニカーは覚えられたって事だな。じゃ、玩具を変えれば解決だ。魔力通販(メールオーダー)、ラジコンゲット」


 ラジコンも3匹ぐらい仕留めて学習された。

 仕方ない今度はゼンマイの鼠だ

 鼠で4匹。

 いったい何匹いるんだ。



 そうだ石でも反応するのなら、ロープの先にサンドウルフの肉を結んでハンマー投げすれば。


「みんなの力を貸してくれ」

「おう、何をすればいいんだ」

「肉をどれだけ飛ばせるか競争だ」

「何だそんな事か。俺は力だけはある。俺が一番だな」

「いいや俺だ」


「よし、手が空いている奴は肉にロープを付けてくれ」


 肉にロープがつけられ唐辛子がまぶされる。


「よし、やってやるぜ」


 男はぐるぐると肉を回してから気合を込めて投げた。

 肉が落ちた瞬間、地面の砂が割れて大口が肉を飲み込んだ。

 ちょろいな。

 肉の重さや形状や落ち方がみな違う為にサンドシャークは学習出来ないようだ。

 瞬く間に数を減らしていった。


 もう平気かな。

 いいや安心したところをガブっといくのが定番だ。


「よし、最後の一押しだ」


 振動を変えるということはリズムを変えるという事だ。

 ラジコンにオルゴールを載せた。

 音の振動がラジコンにも伝わるだろう。


 オルゴールを演奏しながらラジコンが進む。

 オアシスに近づいたラジコン。

 地面が割れガブっと食われた。

 やっばりな。


 映画とかでも大体そう。

 やっつけたと思って安心すると酷い目に遭う。


 これが最後の一匹だったようだ。

 念のためにもう一度ラジコンに行かせたが、大丈夫だった。


 恐る恐る俺達は進み、森に到着した。

 森の奥には壊された石壁が見える。


「遂に俺達はやった」

「オアシスに辿り着けたぞ」

「グエルオアシスの野郎、ざまぁみろ」


「ついにうちらやったのね」


 アルマが感慨深げにそう言った。


「そうだ。第一歩を踏み出した」

「うちは決めたで。あんたの奥さんになったる」

「元々妻だがな」

「運命って事や」

「二度目だが結婚式を上げよう」

「ええね。仲間もぎょうさんいることやし」


「聞いてたわ。結婚おめでとう」


 アズリが祝ってくれた。

 アズリはなぜか泣いている。

 生まれ故郷に帰ってきて感極まったという事にしておこう。


「ありがとう」

「ねぇ、これから私達はどうしたら良い」


 アズリが涙を拭ってそう言った。


「任せろ。みんな、聞いてくれ! 族長を決めないか」


 俺はそう提案した。


「そうだな。トップを決めないと話が進まない」

「投票かな」

「そうだな。それしかないだろ」


「俺はアズリを支持するぞ」


 そう俺は表明した。


「万能スキルの兄さん、裏方に徹するつもりですかい」

「こういうのは血筋が大事なんだよ。説得力がある」

「まあ、投票するとしようじゃないか」


 100均のコピー用紙で投票用紙を作る。

 筆記用具は100均のボールペンだ。


 そして、投票は終わり。

 アズリが選ばれた。

 仲間とつるんでいる奴が少なかったのが勝因だな。


「私は若輩者だし経験も少ない。皆で助けてほしい」

「そうだよな。女の子は助けてやらないとな」


 男達のアズリの対する評判は良い。

 今のところそうだろな。

 たぶん問題が続出して評判が落ちるに違いない。

 大体そんなものだ。

 それを乗り切るとその体制に慣れて、守ろうという気概も生まれるってものだ。

 先は長い。


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