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第236話 おっさん、奴隷と知り合う

「おい、そこの異様な風体の男。止まれ」

「俺の事?」

「そうだ、顔を見せろ」


 現在、皇都に帰ってきて門のところで絶賛、捕まり中だ。

 ヘルメットの方が異様だと思ったんだがな。

 マスクとサングラスを外す。


「あんたか。変な兜は辞めたんだな。今度も変な格好だが、何かこだわりがあるのか?」

「いやないよ。しいて言えば体に良い恰好」

「この口にあてた布切れがか」

「そうだよ」


「そうか、邪魔したな」


 門番の俺を見る目が可哀そうな者を見る目になった。

 マスクを馬鹿にしたらいけない。

 疫病を防止するのに絶大な効果がある。

 異世界で言っても仕方ないが。


 とは言っても俺の目的は口元を隠す事だからな。

 犯罪者にならったとは口が裂けても言えない。


 俺は宿に行き、ジャスミンとアニータの到着を待った。

 失敗したな。

 夜通し移動する必要は無かったか。

 眠くならないものだから、ついつい先を急いでしまった。

 露店を見に行くか。


 カントリーママの評判が凄いので、人を雇い店番を任せている。


「店長、お帰りなさい」


 露店で迎えてくれたのは少年のあどけなさが残る青年だった。

 なよなよとした仕草に騙されてはいけない。

 こいつの正体は。


「お前よく俺の変装が分かったな」

「だって腰のメイスが同じだったから」

「これだから、レジスタンスの工作員は」


「店番を代わります?」

「いや、とうぶん忙しい。店番を続けてくれ」

「そう言えば、伝言を預かっています」


 伝言を見る。

 三人に任務ありとだけ書かれていた。

 ソロでは不可能な仕事らしい。

 先に俺だけで仕事の内容を聞いておくか。


 イリスの花屋に行くと、イリスはタインの魚屋に俺を連れてった。


「今回は厳しいわよ」

「そうなのか」


「タイン、説明してやって」

「ぶっちゃけると、皇帝の宮殿を襲撃する」

「それは大ごとだな」


「ジャスミンとアニータがメイドとして潜入。お前はそのサポートだ。そして、奴隷をさらってくる。計画通り行けば荒事なしで行けるはずだ」

「それは襲撃というより、脱出作戦じゃないのか」

「脱出させる時に襲撃をして騒ぎを起こす。迎撃に出る兵士もレジスタンスだ。戦うふりをする」

「それはやっぱり脱出作戦だろう」


「襲撃の方が恰好良い。後で襲撃を成功させたって噂を流すんだよ」

「概要は分かった。細かい打ち合わせは二人が戻ってからだな」


 二日後、ジャスミンとアニータが帰って来た。


「帰って早々悪いが任務らしい」

「ちょっと、休ませてくれないの」

「旅行の後にはお仕事が控えているものなんだよ」


「ムニ、変な常識をアニータに吹き込まないで」

「バカンスに行ったら、その後は仕事だろう」

「そうだけど。盗賊退治とバカンスは違うわ」


「くだぐだ言っても始まらないから準備に掛かるぞ」


 さて、俺は夜間に訪ねていって二人の報告を持ち帰るだけだ。

 どうって事のない任務だな。


 二人は無事メイドとして潜入できた。

 俺は複数のコウモリになって宮殿に侵入して繋ぎを取った。

 人間の姿にはならないので手紙を運ぶコウモリってだけだ。

 ばれる心配は皆無だろう。

 遠目に皇帝を見かけた。

 始末したかったが、護衛の数が多いので諦めた。

 護衛に手間取ると逃げられる危険性が大きい。

 それに思ったのだが、影武者という可能性もある。


 確実になるまで手出ししない方が良いかもな。


 襲撃は上手く行き、無事に奴隷達を救出できた。

 俺はイリスに頼まれて奴隷の魔力回路を潰した。

 そして。


「ご命令を」


 かしこまる少女。

 こいつは奴隷687号。

 助け出した奴隷の一人だ。

 奴隷の魔力回路は潰したが、奴隷の習慣が抜けないらしい。


「最初の命令だ。変装するぞ」


 ウィッグとカラコンを渡す。

 カラコンを付けるのを嫌がるかと思ったが、躊躇なくつけた。

 俺なんか初めてコンタクトをする時は、怖くて何度もためらったがな。


「できました」

「次の命令だ。名前を変える。687号だからムハナだな」

「かしこまりました。ムハナとお呼び下さい」


「気に入らなければ別の名前でも良いんだぞ」


 きょとんとした顔をするムハナ。

 そして困った顔になった。


「すまん、困らせるつもりはなかった」

「マスターのしたいようにどうぞ」


 こいつの面倒を見る任務なんて受けなければ良かった。

 僅か一日の事とはいえジャスミンに丸投げしたい。

 つくづくそう思う。


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