第２２話 おっさん、ヴァンパイヤを討伐する
アンデッド・ダンジョンの前にやって来た。
「これって封印ダンジョンでしょう。この間のばれないダンジョン討伐ってこれの事？」
「封印迷宮。秘密討伐」
「そうだ、この迷宮を踏破する。５階までは踏破したけど、二人の慣らし運転の為にも一階から行こう」
アルマは発電機と強力紫外線ライトを載せた台車を押す。
モニカは動噴の乗った台車を押して、エリナはノズルを握る。
何回か農薬を壁に吹きつけ試運転は終わる。
エリナには水魔法の試験もしてもらう。
この世界の魔法だが、ゼロから物を作ると魔力の消費が凄い。
その為火魔法は不遇だ。
材料の火を持ち歩くのは難しい。
どこにでも材料がある土と風は人気属性になる。
水は微妙だと聞いた。
攻撃力を考えるのなら風だろう。
防御の魔道具を三人に買ってやった。
魔力壁の超劣化版だが、効果はそれなりにあるだろう。
「それじゃ、復唱。ご安全に」
「「「ご安全に！」」」
前の曲がり角から４体のスケルトンが現れた。
エリナはプシュープシューと農薬を吹きつけ、アルマは台車の向きを変えて光がスケルトンに当たる様にした。
スケルトンは魔石になる。
「いけそうだな」
◆◆◆
６階のボス部屋までは順調に攻略が進んだ。
さてボスは何かな。
ボス部屋の扉を閉じるとデュラハンが召喚された。
骸骨の馬に乗ったデュラハンの素早さに三人とも対応出来ていない。
エリナが農薬の水を使って水弾を撃ち始めるが当たらない。
俺はメイスを抜くと駆けて来た骸骨馬の前足を砕いた。
デュラハンは馬から落ち剣を抜いて襲い掛かって来る。
「三人とも今だ！」
農薬と紫外線ライトを浴びて、デュラハンは溶けて魔石になった。
次の階層で出てきた動く鎧も農薬とライトを浴びるとすぐに魔石になる。
奇襲を掛けてくるレイスが少し厄介だったが、７階層もボスまでは問題なかった。
さて、ボスは何かな。
杖を持った姿で悟る。こいつはリッチだな。
「エリナ、頼んだお前が頼りだ」
手始めに火の玉をリッチは放ってきた。
「盾！」
エリナの詠唱が聞こえた。
台車に乗せてあったバケツに入った農薬が盾になって火の玉を阻む。
「でかした」
俺は水風船を取り出すとリッチ目掛けて投げた。
水風船を手で受けたリッチの半身が溶ける。
あと少しだ。
リッチは炎の壁を作り出した。
俺は魔力壁を信じて突っ込む。
リッチに肉薄した俺はバケツをアイテムボックスから取り出し、中の農薬をリッチ目掛けてぶちまけた。
白い煙を出してリッチが溶けて魔石になった。
「ふぃぃ、なんとかなった。エリナ魔力は大丈夫か」
「ええ、まだ残り三千ぐらいあります」
俺はレベル１００の魔力から計算するとレベル１０の魔力は千だ。
エリナは魔力が多いのか。
「次行くぞ。おー！」
「「「おー！」」」
階段を降り次の階層に向かう。
次の階層のザコ敵、メイジスケルトンは強敵だ。
リッチほどではないが魔法を使う。
エリナの農薬の水魔法が攻守に渡って大活躍を見せた。
魔力の節約の為、リッチの魔石に俺の魔力を入れてエリナに持たせる。
ボス部屋の前で考えた。段々ときつくなってきたって事はここのボスは厳しいな。
引き返すかな。いやせっかくここまで来たんだ。これを攻略して今日は終わろう。
「みんな、このボスを倒したら今日は終わりだ。気を引き締めていくぞ」
ボス部屋に踏み込む。
召喚されてきた姿は人間と変わりない。
こいつは何だ。
もの凄いスピードで距離を詰めてくる。
俺はメイスで殴り掛かるがかわされた。
エリナが水魔法で援護してくる。
俺は水風船を投げた。
水風船は見事身体に掛かったが、敵は溶けない。
犬歯を剥き出して威嚇する姿をみてピンと来た。
ヴァンパイヤじゃねえかこいつ。
そうと決まれば。
「収納箱」
ポロポロと銀の指輪が落ちた。
それを拾い全ての指に嵌める。
換金用に銀の指輪買っておいて良かったよ。
「そして、魔力通販」
次に出したのがニンニクドレッシング一ダース。
「エリナ、このドレッシングで水魔法だ」
俺は指輪の嵌った拳でヴァンパイヤを殴る。
指輪が当たった箇所が煙を上げた。
ドレッシングの水弾が撃たれ何発か当たる。
よしよし、効いているぞ。
ヴァンパイヤは苦し紛れに霧になって態勢を立て直そうとした。
霧の動きは遅い。
「今だ。紫外線ライトで照らしてやれ」
アルマが霧を照らすとギャーと断末魔の悲鳴を残してヴァンパイヤは魔石になった。
「よし、今日は撤収！」
宿に帰り泥の様に眠った。
