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第219話 おっさん、子守りする

 ヴァンパイヤの肉に血を与えたら純度の高いヴァンプニウムが出来た。

 真祖ヴァンパイヤ、ヴァンパイヤ、レッサーヴァンパイヤの順に、ヴァンプニウムの純度が低いと推測される。

 血を吸ってヴァンプニウムを相手に入れると薄まるらしい。

 血を与えて培養した場合は薄まらない。

 分身と子の違いとみた。

 培養した分身に、自我は宿らない。

 だから、眷属を増やすには、血を吸って子を作らないといけない訳か。

 俺のヴァンプニウムは純度の高い物と入れ替えた。


「倉庫警備の依頼が無いんだが。二日ばかり休んだので、誰か代わりが行ったのか」


 ギルドの受付嬢に聞いてみた。


「それでしたら、人を三人、雇ったとかで、取り下げられました」

「そうか。じゃ、挨拶に行かないとな」


 その前に依頼を受けていくか。

 夜、限定は少ないというか、一件しかない。

 子守りの依頼だ。

 夜泣きが酷いので少しの間、外であやしてくれとの事。

 仕方ない、これを受けよう。


 手続きをして倉庫に行く。

 扉をノックすると見知った顔が現れた。

 あの警備員だ。


「脅かすなよ。律儀な泥棒かと思ったぜ」

「依頼が無くなったので、別れの挨拶にきた。これ差し入れの串肉だ。休みにでも食ってくれ」

「ありがとよ。悪かったな。依頼を取り下げて」

「いや、別に金には困ってない。金に困れば、ダンジョンにでも潜るさ」

「そうか。一人だと、昼の業務が回らなくてな。あんたが昼も勤められれば推薦したところだ」

「気にする事はないさ」

「そうだ、あんたが来る前に、男があんたを訪ねて来た」

「ほう知人かな」

「目の赤い物騒な雰囲気の奴だ」


 ほう、さっそく新手がお出ましか。

 襲い掛かって来るかな。

 俺なら偵察してから、襲撃するのだが。


 依頼どうしよう。

 受けちゃったからな。

 まあ、大丈夫だろう。


 俺は依頼主のお宅の扉をノックした。


「ああ、来てくれたのね。神様、感謝いたします」


 奥さんが出てきて、憔悴しきった顔でそう言った


「大げさだな」

「元気が良いのは良いのですけど、モンスター級の鳴き声で、ここ何日か一睡もしてません」


 赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。

 確かに凄い怨霊だ。もとい音量だ。


「ミルクはどうする」

「その時は扉を叩いて起こして下さい」

「それじゃ悪い。母乳の代用品があるんだ」

「そんな便利な物が」

「成分までは知らないが、俺の国では、これだけで育った赤ん坊もいる」

「まあ、ではお任せします」


 赤ん坊が連れて来られる。

 俺が抱くと泣き声がピタリと止まった。


「あら、いつもは泣き止まないのに」


 俺の気配を感じて黙ったな。

 声を出すと命がないとか感じているに違いない。

 トラウマにならなければいいんだが。


 俺は子守りを始めた。

 黙っているのは良いのだが、目をぱっちり開いて俺を凝視するのは勘弁してほしい。


「ほら、ガラガラだぞ」


 笑わないな。

 ふと、月明かりに影が差した。


 おいおい、こっちは子守り中なんだよ。

 時と場所を選べよ。


 赤毛の鎧を着こんだ男が立っていた。


「すまんな。そこで見守っていてくれ」


 俺は赤ん坊を家の前に置いてから、振り返る。


「奴はこんな子守りに負けたのか」

「奴って執事服の奴か」

「そうだ」


「お前は真祖ではないよな。俺の中のヴァンパイヤが、そう言っている」

「真祖様と俺では、雲泥の差がある。真祖様を崇めてないという事は、自然発生したヴァンパイヤか」

「そうだな。その理解で良い。死んでおけ」


 俺はヴァンパイヤの首を掴むと紫外線ライトを押し付けた。

 ヴァンパイヤは首の骨を外しライトの直撃を回避。

 そして、ヴァンパイヤは前蹴りを放った。

 距離は取られ仕切り直しに。


「太陽の光を再現した魔道具か。こんな物が出回っているとはな」


 首を嵌め直しながら、ヴァンパイヤ言った。


「ふっ、今度こそ」


 俺はアイテムボックスから、発電機と強力紫外線ライトを出した。

 起動状態で入っていたので、紫外線が辺りを照らした。

 実際は目に見えないが。

 俺とヴァンパイヤは体から煙を立ち上らせた。


「ぐおう」

「化粧品も馬鹿にはできないな。紫外線カットでこんなにダメージが少なくなるとはな」


 紫外線カットのサングラスもしている。


「おまえ、モンスターではないな。モンスターならスキルは使えない」

「くたばれよ」


 俺は煙りを上げているヴァンパイヤを掴むと、鎧を引き裂き強力紫外線ライトにさらした。

 コアがむき出しになる。

 俺はそれを握りつぶした。

 灰になるヴァンパイヤ。

 俺はライトを止めた。


 ふぃー、準備しておいて良かったぜ。

 赤ん坊はというとすやすや眠っていた。

 誰が敵で誰が味方なのか本能で分かったらしい。

 ふいに俺に血の渇きの衝動が押し寄せる。


 赤ん坊の首筋に牙を突き立てようとしてはっと我に返った。

 我に返ったのは赤ん坊が割れんばかりに泣いたからだ。

 慌ててアイテムボックスから出して血を飲む。

 血の渇きが収まった。


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