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第213話 おっさん、ジェマと別れる

 ジェマを寝台に寝かして、見守る。

 何か出来る事はないか。

 ヴァンパイヤの毒ってなんだ。

 地球では魔術だとか呪いとか言われてた。

 呪いなら心当たりがある。


 体内の魔力を表示する魔力回路を使った。

 むっ、線の形をしたジェマの魔力と違う魔力がある。

 よく見ると少しずつ広がって浸食している。

 魔力回路ではないのなら、違う生物がジェマの中にいるって事だ。

 線は血管だろう。

 血を媒介にして広がるんだな。


 ヴァンパイヤに銀を押し付けた時に血の臭いがした。

 血の臭いイコール鉄の臭いだ。

 そうか、この世界のヴァンパイヤは血中の鉄を操るのだな。

 じゃあ、操られている血を俺が金属支配して抽出すれば助かるかも。


 ジェマの中のヴァンパイヤ成分を俺が金属支配する。

 しかし、浸食は止まらない。

 ジェマの指先を切り、傷口からヴァンパイヤ成分を取り出す。

 ヴァンパイヤ成分はペットボトルに保管してアイテムボックスにしまった。

 500ミリのペットボトル二本だから1000ミリだな。

 これはやばそうだ。


 ジェマの顔色は青い。

 血が足らないのだな。


『皆さん、血が足らないので、誰か一人分けて下さい』


 血液型の問題があるので、輸血は賭けだ。


「俺が血を分けてやる」


 チャドの親族が名乗り上げてくれた。

 魔導を使い500ミリリットルを輸血する。

 傷用のポーションで傷を治し出来る事は終わった。


 夜通し看病して、朝を迎えた。


「おはよう」


 ジェマが起きた。

 やった助かった。

 涙は出ない。

 スケルトンだからな。


『俺が仇を討ってやる。幸いヴァンパイヤのトリックの種が分かったしな』

「気をつけてね」

『ああ、行ってくる』


 犬を借り、ニンニクドレッシングの臭いを辿った。

 村から少し離れた所に猟師小屋に行き着く。

 こんな所に潜んでいたのか。


 猟師小屋の扉を開けて中に入ると、土に埋まったレッサーヴァンパイヤが居た。

 起床の時間だ。

 俺はこんもり盛り上がった土に蹴りを入れた。

 レッサーヴァンパイヤが日の中に投げ出されて、全身から煙を上げる。


「グギャー」


 犬歯をむき出しにして威嚇するレッサーヴァンパイヤ。

 俺は銀箔を空中にばらまいた。

 銀箔は空間を満たした。

 ヴァンパイヤに銀箔が張り付き、苦悶の声を上げる。

 ヴァンパイヤは苦しさのあまり小屋の外に飛び出した。

 体から出る煙が一層激しさを増す。


 ダメージで動きが鈍っているようだ。

 俺はダイヤモンドカッターの刃を心臓部分に打ち込んだ。

 程なくしてヴァンパイヤは魔石を残して灰の塊になった。


『仇は討ったよ』

「仇だなんて。死んでないわよ」


 村長の家に帰った俺はジェマに迎えられた。


『俺と一緒にスクーターに乗るか? それともしばらく療養するか?』

「あのね。私、考えたの。確かにドラゴン討伐はやったわよ。でもあれは私の力じゃあない。あなたの力よ」

『何が言いたいんだ』

「旅を終わらせたいわ。元々、貧乏農家の生まれで口減らしに出されたのよ。この歳になるまで雑用依頼で食いつないで装備を整えたわ。でもね、向いてないと思う。スケルトンに殺されそうになったのが私の実力よ」

『好きにするさ』

「止めないの」

『冒険者は命がけだ。無理強いはできない。疲れているだろう。今日はゆっくり眠ったら良い』

「ええ」


 俺は深夜、手紙を書いた。

 『別れは言わない。達者でな。置いていった物は好きに使ってくれ』と


 ジェマの枕元にダンジョンコアを置いた。

 それから、化粧品を出してやる予定だったな。

 化粧品も何種類か出してやる。


 庭に新品のスクーターを出して、ガソリン容器20個にガソリンを容れて置いた。

 馬車にガソリンを積めば好きな場所へたどり着けるだろう。

 村に来た商人にでも運んでもらうがいいさ。

 ガソリンは気化するのでまとめて屋内に置くと危ないとも書いた。

 その他、スクーターの注意書きも残す。

 お次は一年使っても足りるぐらいのマグネシウムリボンを出した。

 こんな所で良いだろう。


 ポチと一緒に旅に出る。

 街道を月が煌々と照らした。

 そう言えば、レッサーヴァンパイヤって自然発生する他にヴァンパイヤに噛まれてなる者もいる。

 今回のはどっちだろう。

 痕跡を追ってみるか。

 情報収集したいが、この体ではな。

 ヴァンパイヤになるべきだろうか。

 老婆が言ってたコウモリの向かった先は皇都の方向だ。

 皇都に向かって移動しながら考えよう。


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