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第203話 おっさん、街に着く

 街は城壁と立ち並ぶ家で構成されていた。

 城壁ぎわにみすぼらしい家がこびりつく様に建っている。

 どこも同じだな。

 街に居られない奴がスラムを形成する。


『宿をとるのか?』


 俺は屋根から下の客室にホワイトボードを差し込んだ。


「ええ、そうなるわね」


 少し間があり返答があった。


『俺の部屋は要らない。納屋でもあれば良い。なんなら、ドアの外で一晩中警護してやろうか』

「警護が必要な高価な物なんて持ってないわよ。夜這いにくるような奴もいないしね。たぶん、あなたが一番の貴重品ね。部屋の隅に立っていると良いわ」

『じゃ、クローゼットの中に居させてもらう』


 馬車は門をくぐり街に入り、街の広場に馬車は停まる。

 門の所で悶着があるかと思ったが、スキルで従えているとジェマが言ったら問題なかった。


 ジェマの後を大人しくついていき、宿に到着した。

 聞きたいことが実は山ほどある。

 うずうずしながら部屋に入る。


 部屋に入るとジェマは鎧を脱ぎ、鎧下も脱ぎ、下着だけの恰好になった。


「なによ」

『いや、何。俺は男なんだが』

「あなた、男だったの。スケルトンにも性別があるのね。でもスケルトンに見られたからと言って恥ずかしくないわ」

『いや、恥じらいを持てよ』

「さっきから文字に動揺が見られるわ。もしかして照れてるの。本当に変わってるのね。それより剣を返して」

『ああ、遅くなった』


 俺が剣を手放して、体の一部ではないと認識した途端に、剣は折れた。


「あーん、高かったのに。弁償してよ」

『悪いが金は持ってない。だが、必ず金は返す』

「絶対よ。約束だからね。破ったら承知しないんだから」


『ところで、重要な事を聞きたい。ここはどこだ』

「ラリーグ帝国のシュリルという街よ」


 ラリーグ帝国は俺が奴隷にされた国だ。

 ということは何らかの理由で、あの杭を刺された後に、俺の死骸を未開の地に放置したのだな。


『虹色に輝く杭みたいな武器なんだが、知っている事があるか』

「ええ、知っているわ。聖杭ミスランターね」

『どんな武器だ』

「何でも物凄い魔力が込められていて、当たれば死なない物はないとか」

『モンスター相手に使わないのか』

「杭だから、密着するのが難しいみたい。それに一度使うと壊れるそうよ。作るのに金貨1万枚だって聞いたわ」


 おー、最終兵器を使われたのだな。


『それを使うと死体はどうなる』

「高濃度の魔力に汚染されるそうよ。モンスター討伐に使わないのもこれが理由の一つね。素材が採れなくなるもの」

『汚染された死体とかはどうする』

「たぶん誰も居ない山なんかに捨てるんでしょ」


 あー、落ちが見えた。

 俺は高濃度の魔力に汚染された死体になった。

 そして、あの場所に捨てられた。

 アンデッドになったのは高濃度の魔力のせいだろう。


『ダイヤモンド魔導士会について噂がないか』

「隣国で解散したようね。隣国は革命が起こって、今は何だっけ。えっと人が集まって決める方式に、統治を切り替えたそうよ」

『その革命からどれだけ時間が経っている』

「始まったのが三年前。初めは一都市で起こったみたい。それが燃えるように広がって、首都も陥落したのよね」


 俺のやった事が国中に革命をもたらしたのか。

 良いか悪いかは別にして、無駄じゃなかったのだな。


『奴隷について聞きたい』

「王宮で使われているみたい。物凄い費用が掛かるから、滅多に奴隷に出来ないって聞いたわ」

『ありがとう』

「ところで何でこんな事を聞くの」

『知識欲の為だ』


 そう俺は嘘をついた。

 ここで、人間に戻ると皇帝やらの子飼いが殺しにくる可能性がある。

 ばれなきゃ良いだけだが、なんかばれそう何だよな。

 それと言うのも俺にはざまぁの宿命が宿ってる。

 皇帝とは嫌でも係わる事になりそうだ。


 これから活動する為にジェマには魔力通販の事を教えておくとするか。


「カタカタ(魔力通販(メールオーダー))」


 ぽとり落ちるチョコレート。


「何いまの!? これ骨には見えないのだけど」

『俺が作ったお菓子で、剣を壊したお詫びの一部だ。食べてみろ美味いぞ』

「えっ、いいの。甘い物が大好きなの」


 ジェマはチョコレートの包みを開けると噛り付いた。


「甘ーい、とろけるよ。もっと出せないの」

『一日1個が限界だ』

「そう、残念ね。大金持ちの夢はついえるのね。やっぱりそうだと思ったわ」

『しょげるなよ。たまには菓子を出してやる』


「こういう餌を用意したって事は。私に何かやらせたいんでしょ」

『ダンジョンコアを討伐したい』

「無理よ。無理。逆立ちしてもできっこないわ」

『戦うのは俺がやる。見てるだけで良い。獲得した魔石も進呈しよう。剣の購入代金に充ててくれ』

「かなりお得な提案ね。こうしましょ。試しに何日かやってみてから考える。1階層では負けないでしょ」

『よし、約束だ』


 何が無くてもレベルアップだ。

 ファイタースケルトンなのだから、2階層も余裕だろう。

 問題はそれ以降だ。

 金属を操る能力があれば無敵だと言いたいが、敵も同じ能力なんだよな。

 まあ、何とかやってやるさ。

 皮鎧が入っているクローゼットに俺は収まり、眠れないので戦法を色々と考え始めた。


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