第202話 おっさん、ファイタースケルトンと戦闘する
まずは、とにかく上段からの連続振り下ろしだ。
ガンガンとファイタースケルトンの掲げるように構えた剣に当たる。
振り下ろししかしないのはそれが俺のメイスの闘い方だからだ。
薙ぎと突きはメイスでほとんどしなかった。
型なんぞ知らん。
道場に通った事がある訳ではないからな。
おっと、ファイタースケルトンが受け流しやがった。
俺はたたらを踏み体勢を崩した。
ファイタースケルトンの薙ぎが来る。
俺は剣を立て、何とかガードした。
もう振り下ろしは通用しないだろうな。
突きなんざ殆どやった事がないから、スピードも乗らないと思う。
薙ぎも俺のは大振りだから、外れるとピンチだ。
ちくしょうここまでか。
相手の薙ぎを剣で必死にガードする。
足を掛けて転ばそう。
俺はガードしたタイミングで相手に密着して足を払った。
むっ、踏ん張ってやがる。
びくともしない。
まじか。
どうすれば良いんだ。
それからは防戦一方だった。
そして、遂に俺の持ってる剣が折れた。
なに、まだまだ終わらんよ。
短くなってかえって、ガードし易くなった。
ガンガンと打ち込まれるファイタースケルトンの剣。
そして、相手の剣が折れた。
ざまあみろこれで五分五分だ。
こうなったら素手で決着と行こうじゃないか。
その時、相手の剣がなんと突然復活して直った。
えー、剣も体の一部って訳か。
ずるいな。
俺が必死でガードしていると、遂に俺の剣が根元からぽっきり折れた。
あー、今度こそ死んだな。
この時、俺の頭脳はフル回転した。
そもそも、スケルトンって何だ。
何で動く。
不思議パワーで動くのだろう。
その不思議パワーってなんだ。
念動力か。
いや違うな。
もっと別の何かだ。
ホワイトボードを見たジェマは何と言った。
たしか、骨で出来ているのかと。
だが、ファイタースケルトンの剣はどこから見ても金属だ。
そうか、骨のカルシウムも金属だ。
スケルトンの能力は金属を操るものだ。
壊れた剣は俺の手足。
再び元に戻れ。
俺は強く念じた。
剣の破片が飛んできてくっつき、壊れた剣が元に戻った。
手に持った剣が体の一部になった気がした。
「うそ、ムニさんがファイタースケルトンに存在進化した」
ジェマの驚愕した声が聞こえた。
それだけじゃないぜ。
地面や石には鉄分が含まれる。
ほとんど無い場合もあるが、ある事も多い。
地中の鉄よ剣となれ。
砂鉄が集まり、剣を生成する。
刃なんかもちろん付いてない。
色も茶色みががった灰色だ。
練習用の剣より酷い出来に見える。
だが、鈍器として使えれば十分だ。
それからは、俺は片手でガード、もう一方の手でガンガン打ち込んだ。
そして、遂に相手の頭蓋骨を壊し中のコアを剣で砕いた。
ファイタースケルトンは少し大きい魔石となった。
「凄い物を見ちゃった。ギルドに報告したら金一封が出るかも」
『何だ凄い物って』
「存在進化よ。モンスターは進化しないと言われているわ。ただね、見たって言う人もいるのよね」
『俺も見たことがあるぞ。たしか猫のモンスターが豹ぐらいになった』
地球の出来事だが。
確か魔力が溢れて進化したのだったな。
俺のはちょっと違うような気もする。
力の使い方が分かったという感じだ。
「存在進化は実在するのね。大発見だわ」
『興奮しているところ悪いな。さっさとダンジョンから、出よう』
「ええ」
ダンジョンから出ると露店が立ち並んでいて、客の冒険者が俺を見て身構えた。
「おいおい、ダンジョンモンスターが外に出て来たぞ」
ダンジョンのモンスターは外に出られないのを忘れていた。
俺は外のモンスターだからこれには当てはまらない。
「私のスキルで従えたの。モンスター使役というスキルよ。ほら挨拶して」
ジェマはモンスター使役なんて持ってないはずだ。
俺を庇うために嘘をついたのだろう。
『俺は人間には危害を加えない優しいモンスターだ。よろしくね』
「こいつ白いボードに字を書いたぞ」
「いいでしょ、変異種よ。しかも存在進化したの」
「嘘だろ。存在進化なんて。ほらに決まっている」
「信じたくなければ良いわ。さあ、ムニ行きましょ」
このまま街に行って人間に戻るのはどうだ。
まだ、早まる事はない。
状況を調べてからでも遅くない。
俺は乗合馬車に乗れなかった。
乗客から文句が出た為だ。
仕方ないので屋根に乗った。
高い所だと良く見える。
あー、立派な道が出来てるな。
闊歩していたモンスターもいない。
スケルトンになってから、どれぐらい日にちが経ったんだろう。
スケルトンは食事も眠りも必要ないから時間の感覚が無い。
たぶん、一年ぐらいだろう。




