第171話 おっさん、迎撃の準備を整える
秘密結社の炊き出しを骨魔導士が妨害して、不意を突かれやられたというビラを貼った。
これで騙されてくれないかな。
まあ無理だろうな。
今後、予想されるのは俺の所に殺し屋が来るかも。
なにせ詐欺魔導士1号だからな。
宝石魔導士会の裏に俺がいるって調べられている可能性も高い。
秘密結社もばれているか。
そこまでネガティブに考える事もないか。
案の定、次の日キースの野郎がスラムに来やがった。
「決闘なら受けるぞ」
「この間は油断したが、今度はやられない。決闘だ。属性魔導、土壁よ守れ。これで手出しできまい」
「お前も攻撃出来ないんじゃないか」
「属性魔導、念動。ひねりつぶしてくれる」
見えない力で押さえつけられ骨が悲鳴を上げる。
おー、流石はダイヤモンド魔導士。
だがな。
上の警戒がお留守だ。
俺は、バケツに入った酸性とアルカリ洗剤のトイレ洗剤を、上から掛けてやった。
塩素のツンと来る臭いが漂って来た。
「何だ、この臭いは。毒か。ふっ、甘いな。属性魔導、風よ清浄な空気を」
「念動が弱まるこの時を待っていた。分解」
メイスで叩かれ土壁が分解されて砂になる。
「属性魔導、雷よ守れ」
「それはこの間見た」
俺は耐電グローブを急いではめてから、キースを殴った。
キースは昏倒してピクリとも動かなくなった。
死んだらしい。
キースの懐を探ると依頼書が出て来た。
『宝石魔導士会を潰せ。ダイヤモンド魔導士会』とある。
依頼書を持ってくるのもかなり間抜けだが、いよいよ攻撃が始まったと見ていいだろう。
キースが失敗したとなれば、第二第三のキースがこれからやってくるに違いない。
宝石魔導士会や気体魔導士会が攻撃されないか心配だ。
俺はまず気体魔導士会を訪ねた。
「モーガス、不味い事になった。ダイヤモンド魔導士会が潰しに来るぞ」
「まあ、そんな事になる気はしてました。ゴブリン退治で田舎に伝手が色々とできまして、我々はそこに隠れようと思います」
「缶のヘリウムを出してやろう。全部、使ったら、スラムに使いを出せ。用意する」
「それがあれば百人力です」
これで気体魔導士会はいいだろう。
問題は宝石魔導士会だ。
ジャスミンを訪ねた。
「不味い事になった。これを見ろ」
俺は依頼書をジャスミンに見せた。
「この間のダイヤモンド魔導士は刺客だった訳ね」
「気体魔導士会は田舎に隠れた。宝石魔導士会はどうしたい」
「逃げるのは性に合わないわね。本部を設立しましょう。人数ではダイヤモンド魔導士会に勝っているわ。簡単には攻めてこれないはず」
「そうか。かなり危ないぞ」
「危険は承知の上よ。前々から思っていたのよね。ダイヤモンド魔導士の横っ面をひっぱたいてやりたいって」
「触媒を出来るかぎり置いておくから、使ってくれ」
「ジルコニアも置いてってよ。2級市民をテストしたら適性がある人が何人か出たわ。これからもジルコニウム魔導士は増やしたいから」
「分かった。置いていくよ。アニータはどうしたい」
「ムニについていく」
「好きにするさ」
後は秘密結社だな。
俺はリオンの所へ行った。
「ダイヤモンド魔導士会が動き始めている。秘密結社には踏ん張って貰いたいところだ」
「ええ、議会政治を実現するまでは頑張りますよ」
「見つからないように動けよ」
「はい。ですが、改革には犠牲がつきものです」
「困った事になったら、遠慮なく報告しろ。出来る事はしてやる」
これで、どうにかなると良いが。
「ムニ、私達はどうするの」
「ダンジョンを攻略三昧だな。だいぶ触媒を作って魔力を使っちまった。補充しないと」
「ご褒美にジルコニアの大粒が欲しいな」
「任せとけいくらでも出してやる」
とりあえずレベル300オーバーにしたい。
念動対策も考えないとな。
ダイヤモンド魔導士が数人できたら、危ない気がする。
何か考えねば。




