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第153話 おっさん、レクチャーを受ける

「こっち」

「手を強く引くなよ。痛いだろ」

「宝石魔導士になったのを、早くジャスミンに知らせたいの」

「分かったから。よし、肩車してやる」


 俺はアニータを肩車してやった。


「わーい。高ーい。良い眺め」

「ところでまだ歩くのか」

「その角を右」


 細い路地を歩き、宝石魔導士ジャスミンさんの下宿に着いた。

 アニータが窓に小石を投げる。

 程なくして、赤毛の女が現れた。


「ジャスミン、久しぶり」

「今日は二人なのね」


 ジャスミンは警戒している目で俺の方を見た。


「ムニだ。あんたに用があってきた」

「何よ。早く言いなさい」


「この国の腐った所を変えたい」

「たわごとね。無理だとしか思えない」

「アニータ見せてやれ」


「アニータ、宝石魔導士になったんだ。属性魔導アトリビュートマジック、火よ灯れ」


 アニータがジルコニアを見せてから魔導を使うとろうそくほどの火が灯った。


「えっ、アニータちゃん魔導士になったの。その宝石を見せて」

「うん、今ので少し欠けたけど」

「色はダイヤモンドね。でも宝石は色々だから。属性魔導アトリビュートマジック、火よ灯れ」


 火は灯らない。


「駄目ね。宝石魔導士の触媒じゃないわ。当然ダイヤモンドも違うのよね」

「そうだな」

「水晶って事もないわね。スキルを貰った時に調べているはずだから」

「珍しい宝石だ」

「そう。高いのでしょう。それをこんな所で使って良いの」

「そこは色々と裏技がある」

「裏技なんて物があるのね」


「雑談はこの辺で。俺に協力してほしい。もちろん無料じゃない」

「何をしてくれるの」

「触媒だな」

「私の触媒が何か知っていてそう言うのね」

「ああ、サファイヤとルビーだろ」

「安く用意できるの」

「それは無理だが。代わりの物を用意できる」


「ダイヤモンド魔導士の炭って訳ね」

「ああ、それだ。じゃじゃーん、一円玉」


「これどこの国のお金よ」

「俺の母国だな」

「軽いわね。金属とは思えない。属性魔導アトリビュートマジック、火よ灯れ」


 火が灯る。

 実はサファイヤとルビーの主原料は酸化アルミニウムだ。

 つまり宝石魔導士はアルミニウム魔導士という訳だ。


「これ良いわ。硬貨の大きさから察するに、これって銅貨の価値よね」

「そうだな安い」


「火力はダイヤモンド魔導士の炭よりましね」

「そうなんだ、そこら辺の知識も不足している。魔導士の知識が俺には無い」

「レクチャーしてあげても良いわ」


「まず、なぜダイヤモンド魔導士が有名なんだ」

「最強だからよ。属性魔導で重要なのは純度と硬さ」


 ダイヤモンドはほぼ炭素で出来ている。

 だから高火力という訳だ。


「ああ、ダイヤモンドは堅いな。すると気体と液体は雑魚か」

「そうね。貴金属魔導士は金属では最弱の代名詞だわ。触媒がばか高い上に柔らかい」


「汎用性のトップは万物魔導士か」

「ええ、腹立つ事に彼らはルビーやサファイヤでも魔導が使えるのよね。水晶もよ。流石にダイヤモンドは無理だけど」


 そうだよな酸素化合物は至る所にある。

 水素なんかは不遇だな。

 水は柔らかい。

 凍らせれば威力が上がるのか。


「ところでスキルオーブはどこから手に入れているんだ」

「ダンジョンコアを魔道具にしたら、偶然、スキルオーブ創造の魔道具が出来たのよ。レシピは色々な国に伝わっているから、どこの国にもあるわ」

「無料で配っても余るって訳か。制限はないのか」

「生み出すには魔力が必要なのだけど、大量の魔力をどこから手にいれているのかは機密になっている」


 もしかして生贄はこの為か。

 くそう、舐めやがって。

 魔導士でない人間なんてどうでも良いってか。


「どうしたのよ。顔が怖いわ」

「嫌な事を思い出しただけだ。フレッドという魔導士に心当たりはないか」

「知っているわ。ダイヤモンド魔導士会の会長よ」

「そうか」


 敵はお偉いさんか。


「ところで私の触媒のイチエンダマはどれぐらい融通できるのかしら」

「そうだな。一日50枚でどうだ」

「良いわね。乗ったわ」


「ダンジョン討伐をしたいが、2級市民でないと無理か」

「そうね。私がアニータとムニの保証人になってあげる」

「アニータは1級市民にしたら不味いか」

「不味いわね。最初に試験した人の首が飛ぶわ」

「それは可哀そうだな」


「アニータ、宝石魔導士になりたい」

「なら、良い考えがあるわ。アニータの触媒を細かく砕いて砂を混ぜるの。都市伝説に土魔導士の話があるの。秘境を旅した魔導士でない男が自分の触媒である土を見つけ出すのよ」


 たぶんレアアースの類を見つけ出したんだな。

 なら俺もいけるか。


「じゃあ俺も頼む」

「あなたも魔導士なの」

「ああ、属性魔導アトリビュートマジック、火よ灯れ」


 チタン片を触媒に火を灯した。


「それなら、あなたは冒険家という事にしましょ。二人の触媒は秘境で獲得したって事ね」

「よし、それでいこう」


 俺は1級市民になれるようだ。

 しかし、俺はあの研究所での出来事を忘れない。


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