第13話 おっさん、商業ギルドに行く
「魔石出来てるぞ。それと闇商人がこの街に来ている」
ケイムの家に入るとケイムに声を掛けられた。
ケイムは腰に付けた袋から10センチぐらいの魔石を出し差し出してきた。
「ありがとう。収納箱」
俺は魔石を受け取り、アイテムボックスにしまった。
「闇商人を呼んでくれ」
「仕事だぞう!!」
ケイムが外に出て怒鳴った。
程なくして子供が来たようだ。
話し声が聞こえる。
「この手紙を小鳥の宿り木の客に渡してくれ」
「うん、分かった」
ケイムは子供を使いに出したのだろう。
「待たせた。追っ手だがな。それらしいのはおらん」
前に怪しい奴らが来たら知らせてくれと頼んだ。
「そうか、あいつら諦めたのかな」
俺達は談笑しながら、闇商人を待つ事にした。
◆◆◆
「挨拶はなしだ。用件を聞かせてもらおうか」
入って来た闇商人は隻腕の男で、入ってくるなり言った。
「これを売りたい」
俺はアイテムボックスから5センチの人工宝石を出して言った。
この人工宝石は魔力1万3千で作り出せる。
値段が知りたかったので闇商人に試しに売りたいと思ったのだ。
「切りのいいところで金貨100枚だな。支払いは毛皮になるが良いか?」
闇商人は俺から宝石を引ったくり、色々な角度から眺め言った。
「ご主人様、損してまっせ。金貨120枚が妥当やと思う」
アルマが口を出してきた。宝石の価値とか分かるんだな。
良い所のお嬢様だったのかも。
「奴隷の癖にしゃしゃり出るとは。むかつくが良いだろう。120枚だ」
「ではそれで。アルマよくやった」
金貨120枚分の毛皮を売り捌けるかな。まあ、アイテムボックスがあって劣化しないから良いけど。
闇商人は人工宝石を懐にしまうと倉庫の地図を置いていった。
商業ギルドに行く途中で、倉庫に寄って、毛皮を受け取る。
◆◆◆
商業ギルドの中に入ると詮索する視線が俺に絡みつく。
なんか、全員肉食系みたいな感じだ。
盗賊の出る世界で商人をやるとこんな感じになってしまうのだろうか。
空いている窓口に行った。
「加入したい」
「えっ、あなたがぁ? 加入金は大丈夫?」
俺が告げると受付嬢は俺の身なりをゆっくり見てから尋ねてきた。
「毛皮の現物という訳にはいきませんか?」
「それはちょっと」
完全に見下した表情で言う受付嬢。
「宝石ならどうですか?」
「それなら」
俺はアイテムボックスから5センチの人工宝石を出してトレーの上に乗せた。
受付嬢がはっと息を呑むのが分かる。
恐る恐るという感じでトレーを持ち、奥に引っ込んだ。
しばらくしてから、ギルドカードをトレイに乗せて現れた。
「加入金を差し引いた後の金額は口座に入れてあります」
受付嬢の態度が変わった。さっきまで敬語を使ってなかったはず、現金だな。
「ありがとよ」
横柄な態度でカードを受け取ってアイテムボックスにしまう。
回りの視線が更にきつくなった気がする。
「なあ、俺は何か不味い事したか?」
俺は振り返り後ろにいたアルマに向かって尋ねた。
「そうやね。宝石はもう出さへんほうがよろしいかと」
「なんで?」
「宝石を扱っとる大商会を敵にまわします」
ああ、マフィアみたいな連中が宝石の市場を独占しているのか。
「これなら、どうだ。収納箱」
アイテムボックスから自動巻きの腕時計を取り出す。
分かりやすいようにスケルトンのタイプを出した。
これは、ダンジョンコアから魔力を抜き取った時に換金用に作った物だ。
「なにか、こまい歯車がぎょうさん見えるけど何やねんこれ?」
首を傾げ言うアルマ。
「時計だよ」
「これがあの塔に付いとるのと同じ物なんでっか?」
まあ、これを作るのは技術が必要だからな。
時間を詳しく計った訳ではないが、時計台の針と腕時計ではさほどずれはないようだ。
「小さくしただけだよ」
「絶対売れる。大金を賭けてもええよ」
そうだ、アルマに商売させよう。
仕入れは会社で六割が基本だったから、利益の半分の売った値段の二割をアルマの取り分にするぞ。
「毛皮も預けるから好きに売って。売値の二割をあげるから自分を買い戻すと良い」
「おおきに」
借金奴隷が解放されるには奴隷になった時に作った借金を商業ギルドに返さなくてはならない。
最初の奴隷の売り買いの金は商業ギルドの借金返済にあてられる。
それと主人が買った時の倍の値段を主人に払わなくてはいけない事になっていた。
奴隷から解放されるのは稀だと聞いている。
普通は給料を奴隷には払わない。
アルマが奴隷から解放される時には俺のレベルは手がつけられないほど上がっている予定だ。
俺の秘密がばれても問題なくなっているはず。




