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第127話 おっさん、作戦を立てる

「あの女、とんでもない玉だわ」


 パティから尾行の報告を受けた。


「何かしでかしたのか」

「人相の良くない男とつるんでいたから調べたら盗賊だった」


 通りで目撃情報がなかなか集まらない訳だ。

 盗賊をしてたんじゃ、用心深くもなるっていうものだ。


「尾行はもう良いや。ありがとな」


 盗賊なら街の外で仕事に及ぶだろう。

 その瞬間が始末するチャンスだな。


 俺はジェリが泊まっている宿で見張った。

 確かに人相の良くない男達が出入りしている。

 こいつらを動かすのは。

 そうだ、マルコに俺が商材を仕入れる為に、金を持って隣の街まで行くと伝えよう。

 問題はその情報をマルコからどうやって盗賊の一味に伝えるかだ。


 マルコがジェリにそんな話をする訳はないよな。

 それなら。

 パティに商人役をやらせて、護衛にジェリと盗賊一味を雇おう。

 俺は変装しないとな。

 兜じゃ声でばれる危険性がある。

 ふむ、魔力通販でコスプレ用の衣装を調べる。

 おっ、等身大の日本の兜がある。

 これをかぶれば異国の戦士に見えないだろうか。

 面頬もあるし、ばれないはずだ。

 無言の行の最中で声は出せませんと言い訳するとしよう。


 よし、作戦開始だ。


「こんちは」

「ああ、ムニさん。露店の件ありがとうございました」

「それでな。紙の仕入れに行かないとならない。商会のトップが女性で、色々とうるさいんだよな」

「その色々って言うのは聞きたくないね」

「そんな事を言うなよ友達だろう」

「助けてもらっているし、聞いてやるよ」

「仕入れに行くには大金を持っていくだろ。護衛が欲しいんだけど。会頭は占いに凝ってて、女性の塩魔法使いじゃなきゃ嫌だと言うんだ」

「なんだ、そんな事か。ならジェリを紹介してやるよ」

「一筆、紹介状を頼むよ」

「任せろ」


 俺は魔力通販で毛染めと兜を買って変装した。

 異国感が出ていると良いんだが。


 ジェリの居る部屋をマルコに言われた通り、3回ノックして一拍置いて2回ノックした。


「マルコ、来てくれたの」


 ドアが開くと喜色満面のジェリがいた。

 だが、俺達が視界に入り顔がみるみる落胆の色に変わる。


「あんた達、誰?」

「マルコさんからあなたを紹介されました。これが紹介状です」


 ジェリは紹介状を読むと頷いて口を開く。


「話は分かったわ。いいわよ。護衛をしてあげる。ただ私一人では心細いから、仲間を何人か連れていっても良いかな」

「ええ、結構よ」

「知ってると思うけど私はジェリ。よろしくね」

「私はパティよ」


 沈黙が間を支配した。


「あんたの護衛、一言もしゃべらないけどどうしたの」

「何でも彼の国では無言の行なるものがあって、願い事が叶うまでは無言を貫くそうよ」

「へぇ、そうなんだ」

「彼はミツヒデ」


 俺は合掌してお辞儀した。


「よろしくね。ミツヒデ」

「出発は明日よ。大金を持っていくので、この事は内密にね」

「ええ、分かっているわ」


 コロリと騙されたな。

 ジェリの顔を見た時ははらわたが煮えたぎったが、騙された所を見たら少し溜飲が下がった。


 よし準備だ。

 馬車を借りて適当に空の壺を積む。

 空じゃ不味いか。

 何を入れておこうかな。

 塩といきたいが、ジェリに利用される事も考えられる。

 砂糖にしておこう。


 俺は街の警備担当の人間に会いに行った。


「盗賊の一味を見つけたんだが、殺すのは不味いよな」

「生死不問の賞金首は殺しても大丈夫だ。だが、手下はなるべく生かして捕らえてほしい。色々と聞きたい事があるんでな」

「賞金首の手配書を見せてくれるか」

「それなら、壁に貼ってある。見て行くと良い」


 俺はデジカメで手配書の写真を撮った。


「発掘品か。便利な物だな」

「売らないぞ。賞金稼ぎの飯のタネだからな」

「そうか、残念だ」


「ところで捕まった手下はどうなるんだ」

「情報を吐かせた後は公開処刑だな」

「そうか、なら良い」


 ジェリは生かして捕らえよう。

 俺がぶっ殺す必要もあるまい。

 処刑されるさまをみてから、この街を旅立つとするか。

 忘れている事はないよな。


 ああ、隣組の組長と料理店と武器屋に知らせておかないと。

 めんどくさいな。


「こんにちは」

「玩具のおっちゃん。早くバスタブ出して。レースするんだ」

「はいはい。組長は居るかな」


「何かな」

「仇が見つかった報告にきた。それと、料理店と武器屋に伝言を頼みたい。子供に頼んだら不味いか?」

「いいじゃろ。みんな集まって。玩具のおじさんが伝言を持って行って欲しいそうだ」

「やるやる。走るのは得意なんだ」

「ただじゃ嫌だな」


「よし、飴をやるよ」

「分かったやる」

「私もやる。飴ちょうだい」


 これで準備は万端だ。


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