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第123話 おっさん、叱られる

 遊んでいる子供達に手招きをした。


「なになに」

「これをあげよう」


 スーパーボールを地面に叩きつけた。

 食い入るようにスーパーボールを見つめる子供達。


「駄目よ。知らない人に物をもらっちゃ。人さらいかもしれないでしょ」


 年長の女の子がそう言った。


「おじさん、こう見えて強いんだ。それで賞金稼ぎをしている。ある賞金首がここに来たとの知らせがあったんだが。これだけ人がいると見つからなくて困る。それで、君たちに手伝ってもらおうと考えた訳だ」

「駄目よ。信用しちゃ。物で釣るのは悪い大人なんだから」


 これは困った。

 どうすれば信用してくれるかな。


「ほら、おじさんは冒険者もやってるんだ」


 俺はギルドカードを出した。


「冒険者はごろつきだって聞いたわ」


 逆効果か。


「じゃあ、信用できる大人の所に連れて行ってくれ」

「いいわよ。隣組組長の所に連れていってあげる」


 俺は子供達と一緒に隣組組長の家を訪ねた。


「組長、怪しいおじさんを連れて来た」


 怪しいか怪しくないかと言われたら怪しいおじさんだよな。

 異世界転移者だし。

 仇討ちの途中だし。


「ども怪しいおじさんです」

「何だね。どういう御用かな」

「実は賞金稼ぎをやっていまして。ターゲットがこの街に来たようなんで、追いかけて来たんだ。街の人間が多いので、子供達に情報提供を願ったしだいで」

「ばかもん!!」


 あまりの迫力に俺は首を引っ込めた。


「考えが足らんのにも程がある。いいか。賞金首は周りの視線に敏感だ。子供達が注目していたらどうなる」

「不思議に思うとか」

「追手の一味だと思うだろ。そこで子供がばっさりやられたら、どうなさるね」

「すいません。考えが至らなかった」

「分かったのなら、よろしい」


「困ったな。子供達の報酬に玩具を一杯仕入れてしまった」

「ここは一つ。子供達を危険にさらそうとしたお詫びに配らんか。何ただとは言わん。回覧板に賞金首の情報を載せてやろう」

「大人は危険に遭っても構わないのか」

「凶悪犯の情報も回覧板に載せておる。賞金首とて大して変わらんだろう」

「じゃ、頼む。この街には10日滞在予定だ」

「わしの所に情報が来るようにしてやろう。毎日来て子供におもちゃを配りなさい」

「分かったよ。よし、配るよ。近所の子供を集めて来てくれ」


 俺はスーパーボール、メンコ、知恵の輪、ゴム紐、ボール紙とペンのセット、五寸釘、ビー玉を配った。

 ちくしょう、海沿いの街に行くっていうんで、今回は凄いのを用意したのにな。

 放出するか。


「ちゅうもーく。ここに取り出したるタライ。ここに水を張って小さい木の船を浮かべる。ここで終わりじゃない。ここに樟脳をちょこんと乗せるとあら不思議。風もないのに船が進む」

「うわー」

「どうなっているの」

「ほしい」


 まあ、俗に言う樟脳船と言う奴だ。

 今回の目玉だったんだけどな。

 まあいいか。

 喜んでくれているみたいだし。


「材料の木とセルロイドがあるから、興味がある子は作ってみると良い」

「うん、作る。材料をちょうだい」

「カッターの刃は鋭いから気をつけるんだぞ」

「平気だよ。へへん。ナイフの扱いには慣れているよ」


 樟脳船を作る科学教室みたいになってしまった。


「よし、競争しようぜ」

「俺のハヤブサ丸に勝てるかな」

「俺の快速丸の方が速いぜ」


「よし湯舟を出してやろう」


 アイテムボックスから湯舟を出す。

 子供達は水を汲みに井戸に向かって駆け出した。


「お茶をいれたよ。一服したらどうだ」


 組長がお茶を淹れてくれた。


「頂きます」

「あんた、ただの賞金稼ぎじゃないだろう」

「実は賞金稼ぎっていうのは真っ赤な嘘で、本当は仇討ちの旅なんだ」

「そうだと思ったよ。あんたには賞金稼ぎ特有の匂いがしない」

「冒険者をやっていて盗賊は相当数ぶっ殺したけどな」

「修羅になってない。子供の安全を気にかけた。そういう事だ。修羅になったらいけない」

「肝に銘じておくよ」


 今回は説教を食らってしまった。

 ちょっと調子に乗っていたのかもな。

 反省しないと。

 次の街に行ったら子供達を利用する事は辞めておこう。

 次は武器屋だな。


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