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第115話 おっさん、砥石を売る

 武器屋を巡る口実としたのは魔力通販で買った砥石。

 それを店でアイテムボックスから取り出した。


「じゃまするよ。砥石を売りに来たんだがどうだい。その名も両面砥石。砥ぎと仕上げが一つの砥石でできちゃう」

「ほう、この工夫は見たことがないな。砥石を貼り合わせて表と裏で違う石が使えるのか。考えたね」

「良いアイデアだろう。包丁を砥ぎに出す主婦辺りに売るために、いくつか仕入れたらいいんじゃないかな」

「まいったね。うちは武器屋だってえの」

「でも、包丁を扱ったりするだろう」

「まあな。ナイフも包丁も似たような物だからな。よし、いくつか買ってやる。冒険者の連中にも売れるだろう」

「それと、こういう奴らが来なかったか」


 俺は人相書きを取り出した。


「客の情報は喋れないな」

「こいつらはさ。武器屋のツケを踏み倒して別の街に移っちまった」

「それは許せんな」

「そうだろ。馴染みの武器屋に頼まれたんだよ。他の街に行商に行ったらやつらを捕まえてくれってな」

「よし、力になろう」

「なに、奴らが来たら何食わぬ顔をしておいて、後でこっそり教えてくれりゃ良い」

「おう、覚えておくよ」


 ふう、どんなものかと思ったが割と上手くいくみたいだ。

 武器屋を回って同じ事を説明した。

 これであいつらが武器のメンテナンスに現れればこっちのものだ。


 次の日、武器屋が訪ねて来た。

 宿の食堂で話を聞く。


「あいつらが見つかったのか」

「いやそうじゃねぇ。砥石がよ。評判があまり良いものだから、追加で仕入れられないかと」

「なんだそっちか」

「がっかりさせて悪いな」

「追加でいくつ欲しいんだ」

「20いや30だな」


 一万円分の魔力では砥石は三個しか買えない。

 生贄の魔力回路を使うとして。

 半日ほどかかるな。


「半日ぐらいかかるがいいか」

「おういいぜ。それでな。店の前を貸すから、売り子をやってくれないか」

「それは。ちょっとな」

「なに、こっちは手数料を少しもらえれば良い」


 うーん、困ったぞ。

 俺が売り子なんかしていたら確実にやつらに気づかれる。

 どうしたものか。


「その売り子、私がやってあげましょうか」


 通りかかったパティが話を聞いてそう言った。


「やつらと面識があるんだろう」

「ええ、でも私の借金の返済期日はまだよ。会っても世間話ぐらいは出来るわ」

「そうなのか。じゃ、頼もうかな。パティがやるけど良いよな」

「主婦相手の商売だから、女性でも構わない」

「よし決まりだ」


 さてと、このダンジョンのハードスネイルは動かない奴だ。

 生贄にするには丁度いい。

 俺はダンジョンにもぐってハードスネイルを探した。

 殻に閉じこもったので、盾を構えて接近。

 魔力回路を広げその上に殻を転がした。

 後は魔力を吸い上げる時間、耐えれば良い。


 よしまずは一回目と。

 こいつら、魔力が1000もないぞ。

 生命力がなくなると、ハードスネイル死んで魔石を残した。


 次にいくか。

 半日ほどでなんとか砥石30個仕入れる事ができた。


 砥石をパティに届けて考える。


 やばいな。

 砥石30個で足りるかな。

 たぶん足りない。

 在庫がもう無いと言おうか。

 いや、アイテムボックスを店で使っちまった。

 アイテムボックスに30個しか入れてないなんて不自然すぎる。

 墓穴を掘った感が否めない。


 カタツムリの好物ってなんだっけ。

 そうか、石灰石を食べるって聞いたな。

 なら、石灰をばらまいて、しばらく待ってみよう。


 しばらくしたら、来るわ来るわ。

 おかげで、砥石数百を仕入れる事ができた。

 これだけ売れば在庫切れって言っても不自然ではないだろう。


 フードを被りパティの様子を見に行った。


「どうだ、やつらは来たか」

「安心して、来ないわ。それより砥石がもう無いんだけど」

「それなら、たんまり仕入れてきた」


 やっぱりな、30個じゃ足りなかった。

 主婦の数なんて、物凄い数がいるからな。

 一つ分の砥石で二役するんだから売れない方がおかしい。

 おまけに砥ぎやすいように台座もついている。

 値段設定を間違えたかもしれない。

 だが、二倍の値段じゃ不自然過ぎる。

 まあ、安く売りだしたのだから後には引けない。


 ここから値上げするか。

 今までは特別価格だとか言って。

 そんな事をしたら店の主が良い顔しないだろう。

 情報を貰う立場で反感はまずい。


 仕方ない明日も砥石を仕入れるか。


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