5.待叶草 ~(4)
これでこの話はおしまいです。
静まりかえっていたリビングルーム内が徐々にザワつき始める。
「ところで・・・」
オーナーが話を続けた。
「言ってませんでしたが、この待叶草の呪いは、この話を聞いた人すべてにかかります」
この声にみんなが一斉にザワつく。
「何それ?」「ちょっとやめてくれない!」
文句と悲鳴が飛び交った。
「みんな、静かにして!」
部長がみんなをなだめる。
「大丈夫だよ。話にもあった通り、純粋な心も持って言葉を唱えれば必ず救いの言葉が降りてくる。そうすれば呪いは解けるから」
「えー無理無理!」「やめて下さいよ」
みんなの文句と悲鳴は収まらない。
――やれやれ。やっと話が終わったか。
そう、このゲームは言ってみればこれからが本番なんだ。
部長が蒼い顔をしながら説明を続ける。
「これからに十五分間、この部屋に籠って言葉を唱えて下さい。無心で唱えれば必ず救いの言葉が降りてきます。あと注意点ですが、絶対に他の人と相談してはダメです。答えが解っても、それを声に出してはいけません。他人に教えたことと一緒になります。その時点で呪いが解けなくなるので気を付けて下さい」
脅しともとれる部長の言葉に泣き出しそうな女子もいた。
「僕はこの扉のすぐ裏にいます。答えが解った人は僕にその答えを教えて下さい。その答えが合っていればその場で呪いは解かれます。じゃあ、これから十五分です。頑張ってください」
部長が扉を開けて外へ出る。
一年生と二年生が残った部屋でまた女子からの悲鳴が上がる。
「どうしょう? みんな解る?」「駄目だよ。相談しちゃダメだって言ってたじゃん!」
薄暗い部屋の中でみんなが唸りながら悩み始めた。
あんまり趣味がよくないな――なんて思いながらも、俺はまわりの人を傍観していた。
さてと。俺のターゲットは一年女子ナンバーワンの加納唯花だ。
本当は肝だめしでペアを狙っていたのだが、作戦変更だ。
部屋でできるだけ粘って彼女と二人きりになるのが俺のストーリーだった。
人が悩む姿を見るのはおもしろかった。
ブツブツと小声で唱えるもの。
目を瞑ったまま指をおでこにあてるもの。
悩み方も人それぞれバリエーションがあるものだ。
「あ、僕、解ったかも!」
男子のひとりが叫んだ
「嘘?」
悲鳴にも聞こえる声が漏れる。
その男子は扉をノックすると、そこから部長が顔を出した。
男子は自分の出した答えを部長にそっと耳打ちする
「はい、正解です。よかったね!」
「やった!」
男子は叫びながらガッツポーズをした。
「嘘?」「解ったの?」
数人のため息混じりの声が響く。
「ごめん。じゃあ、みんなもがんばってね」
男子はそう言いながらそそくさと部屋を出て行った。
部屋の中はまた急に静まりかえり、みんな一斉に考え始める。
「あ、解った!」
今度は一年生の女子だ。
その女子も同じように部長に耳打ちすると、正解をもらって部屋から出て行った。