初心が蘇る、
日向がJRの指宿駅に降り立った時、11月従順なのに「暑い」と感じた。また「春季キャンプはここで十分ではないか」と思えるほど今日の指宿は夏のような日差しだった。改札口を降りると、羽鳥が迎えに来ていた。
「わざわざ遠くまで来て頂きありがとございます。近くに黒豚の肉が美味しい店がありますので、いかがですか?」と羽鳥が言ったが、「せっかくですが、時間を無駄にしたくないのでトレーニングを始めましょう」。と日向が言ったことに、羽鳥は自分の甘さに気付く同時に、この一瞬の心のすきが大きな失敗を招くことにも気づいた。
「羽鳥さん、とにかく走って走って無駄についている、筋肉と脂肪を落としてください。近くに総合公園がありますよね。そこで1時間ランニングを始めましょう。」「わかりました」と羽鳥が言い指宿総合公園に車を走らさせた。
総合公園に着くなり、「ではゆっくり走ってください。ジョギングていどの速さでお願いします」。「ストレッチはやらないのですか?」との羽鳥の質問に「羽鳥さん、筋肉は収縮伸展でパワーを出しますよね。つまり筋肉はゴムと同じです。なのに皆さんがよく行っている静止するストレッチを行えば筋肉はどうなりますか?ゴムも伸ばし続けていれば弾力性かを失われるように、筋肉もそのパワーを失ってしまいます。だから私は静止するストレッチは運動前は不要だと思っています。そしてゆっくり走ることがストレッチにもなっています」。この日向の的確すぎる説明に羽鳥は納得し、ゆっくり走りながら「あの人は一体何者なんだ」。と思いつつも中学生の時に自主練で総合公園を走っていた時の気持ちが蘇っていたことも感じていた。