GM
新田の行動力は素早く、4名のトレードを成立するために韋駄天のごとく行動に移した。GMとは、クラブの営業とチームの強化の両者のマネジメントを統括するものであり、仮説を設定し、データを収集・分析し、措置を抽出する「思考」の回路と、情報を統合し、知識として蓄え、行動を決定し、結果から学ぶ「行動」する力が求められます。GMには「知行合一」が求められ、新田にはその能力が備わっていた。
大牟田のトレード先としては、東京シャークスが有力と考えていた。今季の東京シャークスは、投手陣が崩壊して、先発投手が完投した試合は、僅か3試合だった。役割分担が明確になった現野球でも、完投試合が3試合というのはあまりにも少なすぎる。そこで新田は、東京シャークスを選択したのだが、本当の狙いは、沓谷データによるある一人の選手の抽出である。その選手とは、今季1軍出場が無しの新川外野手である。沓谷データによると、新川のベースランニングタイムは球界NO1であるという。したがって新田は、どうしてもこの新川を獲得したかったのてをある。
石村については、名古屋クロッチーズが最有力と新田は考えている。今季の名古屋クロッチーズは、期待した左右の助っ人外国人が揃って結果を出せず、シーズン最後まで中軸を固定できないでいた。
しかしここでも沓谷データによるある一人の選手の獲得が真の狙いであった。その選手とは、大川原内野手で、大川原もまた東京シャークスの新川と同様にベースランニングのタイムは、新川に次ぐ2番目のものであった。大川原もまた今季の1軍の出場がなかったので、両トレードがスムーズに問題なく成立すると考えてしまうが、トレードはそう簡単に進まないものであることを新田は理解していた。
ここが新田がGMとしての才能であり、腕の見せ所てをもある。