人はいつか後継者に事業を引き継がなければならなく、それは就任した時から始まっている。
日本プロ野球2018シーズンが終わろとしている9月30日の昼、新田の携帯に一本の電話が入った。相手は、プロ野球球団静岡ブルーアースオーナーの広野からであった。ブルーアースはフィットネス関連・旅行業務・イベントの企画運営を展開する会社で、静岡ブルーアースを所持して5年になる。
新田は現在、東京体育大学で運動生理学を専攻して現在は城内大学スポーツ経営学部准教授を努めている。新田は東京体育大学から名古屋クロッチーズに入団し3年目から頭角を現して正捕手座を射止めたが、試合中の肩部死球の影響で自慢の強肩に陰りが見えたことで、プロ野球人生は6年という短いものであった。その後学生時代に専攻していた運動生理学の知識をさらに得るために大学院にして准教授の地位まで登り詰めた努力家家である。
広野も東京体育大学野球出身なので、広野と新田は先輩後輩の関係にあたるが、同時に活動したことはないが、卒業後の新田の独創性のある運動生理学とスポーツ経営学には、以前から注目していた。新田も、5年前にプロ野球球団を買収した広野のことが、大学野球部の後輩とし興味があった。そんな広野からの電話に新田は、疑問を感じながら対応した。
「新田さんですか?静岡ブルーアースオーナーの広野です」と学生時代から変わらない太い声が聞こえた。
「新田です。お久しぶりです。今季は残念でしたね。」とコンセントリーグ最下位に沈んだブルーアースを労った。
「今季ではない。毎年だ。余計な話しは除いて単刀直入に言うが、ブルーアースのGMをやってくれないか? 返事は明日中にくれ? 俺たちの故郷静岡を元気にしてくれないか?」と一方的に話すと広野は電話を切った。曲がったことが嫌いな広野らしい電話に思わず微笑んでしまった。そして気持ちに迷うことはなかった。「故郷か」新田はもう何十年帰っていない故郷静岡を思い出していた。