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赤髪の決意

「初めまして...だよな?えーっと...」

「春野美波、です。赤城先輩。」

桃髪の少女、春野美波。どこか(・・・)に似ている、そう思いながら拓磨は彼女に話しかけた。


「俺のことを先輩、って呼ぶあたり君はもしかして領ヶ嶺学園の生徒なのか?」

「はい。私は学園中等部3-2組の生徒です。部活は特にやっていません。」

「ふーん...。ところで、何で俺の所に来たんだ?」

「実は...1つお願いがありまして。他の人には話せない、赤城先輩にしかお願いできないことなんです!」

「え、俺にしかお願いできないこと...?」

(まさか、まさか俺がこの後輩とー

circle(サークル)の、クランマスターになっていただきたいんです!」

「...は?」


〜説明パート入ります〜

初めまして。領ヶ嶺学園新聞部部長兼説明係の月影雅です。

今回は「circle」という単語についてお話しましょう。「circle」とは、元々は領ヶ嶺学園のある研究グループが開発した、()()()です。開発されたのは2年前。最新鋭技術のMR(マインドリアリティ)システム(以下MRS)を使用しています。MRSとは、使用者の精神だけをSS(セントラル・サーバー)に送り、そこでバトルする、といったものです。例えるならS〇Oの携帯機版と言った所でしょうか。相手さえいればどこでもバトルする事ができ、学園内の()()()()()にしかプレイすることはできませんが根強い人気を誇っています。人数の多さゆえにランクという物も存在しています。おおよそ690人のプレーヤーが確認されています。しかし、

続いて、「クラン」についての解説です。「クラン」とは「circle」内での、いわばプレイヤーの連盟、連合、同盟、みたいなものです。「軍団」とも言えるでしょう。このシステムは「circle」完成と同時に実装されていましたが、当初はあまり注目度は高くありませんでした。しかし、最近になって()()()()が追加されたことでその数は急増しています。ちなみに、拓磨さんの休学中にこの特典は追加された為、彼はこの事を知りません。

以上。

〜説明終わり〜


「何でクランなんだ?あのシステム...ただ仲の良い奴と何時でもチャットできるって機能だろ?」

「それはそうなのですが...最近、アップデートが来まして。」

「アプデ?」

「はい。簡単に言うと、クランにランキングが着けられるようになって、1位のクランのメンバーはどんな願いでも叶えられるという物です。」

「えっ、何その鏡の中で戦うラ〇ダーみたいなのは...」

「まあ、()()がありますからね。一般的には無理でもこの学園なら可能ですよ。」

「...アレ、ねぇ。で、どうして俺にクランを作って欲しいんだ?俺なんか雑魚だぞ?」

現在の拓磨の()()()()()()()()は107位。お世辞にも強いの部類には決して入らない。

「だからですよ!先輩は決してランクは高くないですが、そこそこの実力はあります!高ランカーから狙われず、雑魚狩りをしてコツコツランク上げするのにはもってこいなんです!」

「はぁ...。絶対貶してるよな?」

「褒めてますよ!」

「...まぁ、いいけど。で、なんであえてクランを作ってくれー、なんて頼んできたんだ?なんか叶えたい願い事とか言うのでもあるのか?」

「...それが、ですね。聞いてくれますか...?先輩。」

「...?お、おう。」

今までの明るい雰囲気はどこへやら、春野は顔を俯かせてしまう。

「実は、私の兄がですね。3ヶ月前ほどに...交通事故にあってしまって。それがかなりの大事故で未だに植物状態のままなんです。」

「...」

「でも、今の医療じゃ延命措置しか出来ないって...そう、病院から言われてて。このままじゃ、兄は死んでしまうんです!だからcircleのコレに頼るしかないんです!お願いします、先輩!」

涙を浮かべながら必死に訴えかける彼女。

「ッ!あ、あぁ...。お兄さんを治したいのか。」

(治す、か。もしかしたら、()()()()...)

「...分かった。引き受けるよ。」

「本当ですか!?あ、ありがとうございます!先輩!」

彼女の顔がパアァ、と明るくなる。

「じゃあ、詳しいことは学園で説明します!私は先に行ってますね!」

「おっけー。じゃあ、気を付けてね。」


バタン、と玄関のドアが閉まる。時間を見ればまだ7時半。

「まだ、間に合うか。」

と、呟き彼は着替えて家を出ていった。

しかし、向かうのは学園とは逆方向。

巨大な市立病院、堺原総合病院。そこに()は入院している。

病院の中に入り、エレベーターに乗り、目的の病室へ向かう。名札には、《櫻井》と記されていた。

「失礼します...って、桜ノ宮さん。」

そこに居たのはベッドで眠る拓磨と同じくらいの年齢の桃髪の青年と彼を見守るように寄り添う中学生くらいの少女。拓磨は、彼女―桜ノ宮真由を敬称付きで呼んでいた。

「赤城さん、おはようございます。今日も学校はお休みですか?」

「いえ...今日から、復帰です。」

「そうですか。ふふ、早いものですね。3ヶ月は。」

「相変わらず侑斗は目覚めないんですか?」

「はい。...でも、仕方ありませんよ。それに、()()は不慮の事故です。あなたが責任を感じる必要はありませんよ。」

ベッドで眠る青年―櫻井侑斗(さくらいゆうと)

かつての拓磨の親友だった男だ。

3ヶ月前、拓磨が起こしたある事故によって大怪我を負い、未だに植物状態にある。

「でも...やっと、治す希望が出てきました。」

「希望?...拓磨さん、何を?」

「大丈夫です。...絶対、侑斗を治してみせますから。では、失礼します。...これ、飾っておいてください。」

拓磨は桜ノ宮に花を渡す。それは、ピンクのゼラニウム。花言葉は―「決意」。





補足

桜ノ宮真由

櫻井家のメイドを務めている少女。詳細はまた後々。

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