ESP
エピソード・5(跡形もなく)
「超能力は誰もが持っている。ただ本能がそれを拒絶している」
目の前でトラックに轢かれた女の手から
自分の手元に飛び込んできた、途中ページが破られたノートの
冒頭のに書いてあった一文だ。
わずか3枚しかないそこには
「瞬間移動」その能力の発動方法が書いてあった。
(ホントにこんな簡単に出来るのか?)
過去に2回、空き巣で捕まっているこの男は
ダメもとで試してみることにした。
(どうせ試すなら大きな仕事、、、そうだ、銀行の金庫にしよう)
近くの銀行に入り、金庫の位置を確認した。
後はそこへ「飛ぶ」だけだ。
そして男がソレを実行した瞬間
《ドカーン!!》
・・・例えば瞬間移動先がビルの壁の中だとしたらどうだろう。
原子同士は水と塩のようには交わらない。
そして私達は普段気付いていない。
そこには何もないように見えて
実は窒素や酸素が充満しているという事を。。。
空気の原子とその男の原子が交わった瞬間
核融合が起き、大爆発を引き起こしてしまったのだ。
ノートも跡形もなく消えた。。。
エピソード・4(制御不可能)
「超能力は誰もが持っている。ただ本能がそれを拒絶している」
波打ち際に、何故か濡れないで落ちていたノートの冒頭のに書いてあった一文だ。
わずか5枚しかないそこには
「瞬間移動」その能力の発動方法とその危険性が書いてあった。
「この能力を使うと、半径数10kmに渡って被害が及ぶので使わない事」
更に読み進めると
「予知能力」その能力の発動方法が書いてあり、その先は破られていた。
彼に突然の別れを告げられて、入水自殺を図ろうとしていた彼女は「ホントなら凄いな」と、試してみることにした。
まずは彼のこの先を見てみよう。
。。。どうやら彼には既に新しい恋人がいて、しかも現時点で既に多額の借金を背負っており、将来的にはその女にも捨てられるようだった。
(そうか、寧ろこれで良かったんだ)
そうと分かると、あんな男の為に死ぬのがばかばかしくなってきた。
(それよりこの力を使って易者でもやろうかな)
少しづつ希望の光が差し込んできたところで、自分の未来も見てみることにした。
(。。。えっ?私は1時間後にトラックにはねられて??)
しかしこの力のお陰でそれを回避することが出来そうだ。
(そうだ、この力は私だけのものにしよう)
そう思い、「予知能力」の部分を引きちぎり海に捨てた。
彼女は安心して帰宅することにした。
―1時間後・・・
彼女は無残にも大型トラックにはねられた。即死だった。
未来予知、それが必ず当たるという事は、必然的に回避も不可能。
つまり、青信号を渡るその行為は
そこにトラックが来ると分かっていても
「彼女」の意志では止められなかった。
~占いは、未来を変えるためのアドバイス、だが
予知した未来は絶対に変わらない~
エピソード・3(なす術もなく)
「超能力は誰もが持っている。ただ本能がそれを拒絶している」
そんな書き出しで始まっているノートが、何故かその少年の家の前に落ちていた。
わずか7枚しかないそのノートには
「瞬間移動」その能力の発動方法とその危険性、そして
「予知能力」その能力の発動方法とその危険性が書いてあった。
「予知能力を使っても、その未来は変えられない」
(なんだ、使えなきゃ意味ないじゃん)
更に読み進めると
「透視能力」その能力の発動方法が書かれていた。
(このノートの持ち主はSFの読み過ぎじゃね?)
そう思ったが、たまたま少年の家から徒歩5分先には海水浴場があった。
(これがホントなら、ビキニの中身も?!)
そんな煩悩にかられ、少年は試してみることにした。
(待てよ、これが嘘だとしても、試した事がばれたら恥ずかしいな)
そう思い、「透視能力」の部分は破いて庭で燃やした。
怪しまれないように現地で海パンに着替え
残った使えないノートを海に投げ捨てて。
腰まで海水につかると、その能力を発動させてみた。
―次の日、少年は1km沖で水死体で発見される。
本来「視る」と言うのは光が物体に当たって反射し
それが眼球に入射される事で感知するものだ。
その反射した光を眼が拒絶するようにするこの能力は
海水を抜け、地球、太陽、銀河系の光さえも拒絶し
結果、視界の先はただの暗黒となるだけだった。
これではただの盲目と変わらない。
前後左右を見失った少年はそのまま海に突っ伏し
なすすべもなく沖に流されたのだった。
ノートにはその能力の解除方法までは記載されてなかったのだから。
エピソード・2(力不足)
「超能力は誰もが持っている。ただ本能がそれを拒絶している」
謎の酸欠死を遂げた男の手に握られたノートの冒頭部分だ。
わずか9枚しかないそこには
「瞬間移動」その能力の発動方法とその危険性、そして
「予知能力」その能力の発動方法とその危険性、更に
「透視能力」その能力の発動方法とその危険性が書かれていた。
「透視とは深淵であるため、非常に危険である」
(何だこりゃ?)
更に読み進めると
「念動力」その能力の発動方法が書かれていた。
この怪事件の現場にいたその刑事は
(死に方も死に方だが、随分と悪趣味なこった)
そう思いながらも最後まで読み終えた。
と、野次馬の中に偶然、今回の事件とは無関係の
指名手配犯と思しき男の影が視界に入った。
刑事と目が合ったその男は踵を返して走り出した。
「ま、待て!」
人ごみを掻き分けその男を追い掛ける、、、と同時に
さっきのノートの事を思い出した。
決して試そうと思った訳ではなく、ただ必死だっただけだ。
無意識に能力を発動させた瞬間、その男が宙を舞い
刑事の目の前に落ちてきた。
(ま、まじか?!)
この瞬間、この刑事にも欲が出た。
(最後の2Pだけ隠滅しよう)
そう考え、そこを破き、近くに居た警官に男を引き渡すと
近くのコンビニのゴミ箱に捨てた。
現場に戻って引き続き酸欠男の現場検証を再開する。
急に吹き荒れた突風。
「きゃー!!」
悲鳴の先に居る女性が上を見上げて叫んだ。
刑事もつられて上をみると、建て付けの古い巨大看板が突風に煽られ
今まさに刑事の頭上に落下してくるところだった。
とっさにさっきの能力を使った刑事は
直後、看板の直撃によってこの世を去った。
避ければよかったのだ。
しかし力に酔いしれてしまった。
この能力は自分の実際の力の10倍の力までしか出せない為、
その巨大看板を減速させることは出来ても
止めることは出来なかった。。。
直前の突風の為、その手に握っていたノートは
どこか遠くに飛ばされていた。
エピソード・1(時を止めて)
「超能力は誰もが持っている。ただ本能がそれを拒絶している」
薄汚れたノートの冒頭部分にはそう記載されていた。
定年間近のその男は、道端に落ちてたそれを
(もしかしてデスノートかも)
などと、ばかげてるとは思いながらも、なんとなく拾ってみた。
11枚目で破かれているそのノートには
「瞬間移動」その能力の発動方法とその危険性、
「予知能力」その能力の発動方法とその危険性、更に
「透視能力」その能力の発動方法とその危険性、続いて
「念動力」その能力の発動方法とその危険性が書かれていた。
「その力には限界があり、体力も削るので安易に使用してはいけない」
(わしみたいなメタボには使えないって事かな)
更に読み進めると
「時を止める方法」なるものが書かれていた。
(ん?これだけ「能力」って書かれてない。もしかして危険性がないって事か?)
そこまで考えて男は苦笑した。
(なにまじになって読んでんだ?わし。こんな事出来る訳がない)
しかしその方法は誰にでも簡単に出来るものだった。
(まあいいか。やってみるだけなら…)
やるなら真剣に考えなければ。
まず半径1kmの時を止めたらどうなる?
その範囲を走っている車は止まり、その先の車は止まらないのだから、、、大事故!?
では地球全体では?
いや、再び動き始めた時に月やそのほかの惑星が
突然違う位置に現れたら大混乱になるぞ。
では銀河系?いや、同じ理由で駄目だ。
となると、やはり宇宙全体を止めるしかないのか。
念のため同じ部分を何度も読み返す。
やはり自分以外の全ての時を止められるとある。
(よし、やるぞ!うまくいったら何でも出来るぞ。何をしても完全犯罪かも)
―彼の時間で10分後、彼は酸欠死体としてビジネス街のど真ん中で発見される。
冒頭でも話したように、私達の周りには何もないと思っているが、実は空気に囲まれている。
時が止まるという事は、この空気の流れも止めるという事だ。
つまり彼は酸素を吸う事が出来なくなったのだ。
突然の事に瞬間で意識を失ったので、能力の解除は彼の死を待つしかなかった。。。
~fin~




