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窓の向こうの雨景色  作者: 葵枝燕
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 私を残して、一人でどこかに行ってしまったあの人に、私は何ができただろう。苦悩を抱えていたあの人に、何をしてやれたのだろう。

 どうせなら、私も共に連れて行ってほしかった。あの人と一緒なら、どこにだって私は行けるはずだったのだ。それなのにあの人は、私をここに置いて行ってしまった。そこにどんな意図があったのかなど、私には計り知れない。考えを巡らせたところで、答えは見つからない。ただ、わかることは一つだけだった。

「私を、置いて行ったのは」

 ()てていったわけではないのでしょう? そうなんでしょう?

 私をここに置いたのは、私を思ってこその行動だと、理解はできる。しかしそれは、もっと深く納得するまでには足りないのだ。

 ねえ、声を聞かせて。私に触れて。この(なが)(なが)い問いに、答えを(ちょう)(だい)。棄てていったわけじゃないと、あなたの言葉で教えて。

「ねえ、迎えに来て」

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