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私を残して、一人でどこかに行ってしまったあの人に、私は何ができただろう。苦悩を抱えていたあの人に、何をしてやれたのだろう。
どうせなら、私も共に連れて行ってほしかった。あの人と一緒なら、どこにだって私は行けるはずだったのだ。それなのにあの人は、私をここに置いて行ってしまった。そこにどんな意図があったのかなど、私には計り知れない。考えを巡らせたところで、答えは見つからない。ただ、わかることは一つだけだった。
「私を、置いて行ったのは」
棄てていったわけではないのでしょう? そうなんでしょう?
私をここに置いたのは、私を思ってこその行動だと、理解はできる。しかしそれは、もっと深く納得するまでには足りないのだ。
ねえ、声を聞かせて。私に触れて。この長い永い問いに、答えを頂戴。棄てていったわけじゃないと、あなたの言葉で教えて。
「ねえ、迎えに来て」




