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こんにちは、葵枝燕です。
新連載『窓の向こうの雨景色』、始めていこうと思います。
ちょうど梅雨時に構想を練っていたような気のする作品なので、できれば六月中に完結までいければいいなと思っています。いや、「完結させます!」ってぐらいの気持ちでいきます!!
さて、この作品は二部構成になる予定です。本編とその後日譚みたいな構成です。
一回一回の話は短めなものになるかと思いますが、あたたかく見守っていただければ幸いです。
それでは、どうぞご覧ください。
カフェというには雰囲気が賑やかで、レストランというにはスイーツばかりのメニューが並ぶ。そんな店で私は一人、窓向こうを見つめていた。
闇が空を覆い、雨が町を濡らしていく。人々は濡れるのを厭うかのように、傘や雨合羽で武装しながら急ぎ足で横切っていく。車のテールライトが、光の余韻を残して次々と走り去った。何もかもが忙しく、暗い町を駆け抜けていた。
「あ」
見憶えのある濃紺の傘が、視界を通り過ぎようとする。気になって目で追う。僅かに見えたその横顔は、私の知らないものだった。
溜め息が零れる。見憶えのある傘の持ち主が見知らぬ人だった――それだけのことで、どこか期待していた自分がいたことに気付いてしまったのだ。同時に、一方的に期待して落胆した自分に、嫌気がさしてしまう。期待なんてするだけ無駄だというのに。
私を呼んでくれるあの人は、来てくれるわけがないのだから。