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あっやべ黒い鹿を放置してしまった。
とりあえず話聞いておこうかね。
「とりあえず君はどうしてそんな傷を?」
「………私は黒鹿の種族なのですが、黒鹿の角は冒険者の間で高く売れるらしいのです。それで先程冒険者に襲われてしまいました」
黒鹿………そのままやな。
ふむ………冒険者に襲われてしまったのか。
まぁ人間相手に話なんてほとんど通じないよなぁ魔獣って………
俺だって全言語翻訳のおかげだしな多分。
「………妻も子も奴らに殺されてしまいました。私は、奴らに怪我を負わせることしか出来なかった………ひとまずこの魔の森に、私は逃げこむことにしました」
魔の森?ここが?
なんの変哲もない普通の森っぽいよ?
「この魔の森は人も魔獣も滅多に入らないと言われていましたが、貴方がいるからだったのですね」
いやそれ初耳だわうん。
俺の感覚じゃさっき来たばっかだからね。
ぶっちゃけ何もしてないぜ!
「せめて奴らを全滅、させたかった」
悔しそうに、歯を食いしばって言う黒鹿に、元人間である俺は何も言えなかった。
人間から見たら、黒鹿の群れが家族だとは思わないだろう。
そもそも会話をする気もないだろうしな。
人も魔獣も、相手から見たら敵でしかない。
「人も魔獣も、生きるのに必死なのだな」
小さく呟いた瞬間、黒鹿が呻いて倒れた。
「グッ……ゲホッ」
「お、おい大丈夫か!?」
「………血を流しすぎたようですね。」
アイちゃん!黒鹿のステータスを!
種族 黒鹿
Lv.25
HP 59/650
MP 100
攻撃 330
防御 125
魔攻 130
魔防 200
スキル 突進Lv.3 角突き Lv.4
うっお死にかけてるな!!
体力めっちゃ減ってるよヤバいよ!?
俺が黒鹿の前でオロオロしていると、息も絶え絶えに黒鹿が、言葉を紡ぐ。
「私の話を聞いてくださったドラゴンは貴方が初めてです。……普通に死ぬより、貴方の糧となって死にたい」
え、なにそれ潔すぎ男前すぎる
今はなんか状況おかしいけどドキッとした
「………さぁ、どうぞ。お構いなく…………もうすぐ、妻と子の元へ行ける………」
苦しみを長引かせるよりは、一瞬で、か。
でもこの身体で何が出来るかな。
剣術あるけど剣がないし、魔法はまだレベルも足りなければそもそも数値が敵わないしな。
あ、ドラゴンって炎吐けるんだよね?
『はい、ドラゴンはドラゴンブレスを吐くことが出来ます。喉の奥に力を込めて、息を吐くようにすれば出来ます』
ありがとうアイちゃん!
「………わかりました。いきますよ」
「……あぁ、ありがとう、ござい、ます………心優しきドラゴンよ……」
黒鹿はそう言って目を瞑った。
俺は、勢い良く息を吸い込んで、喉の奥が熱くなるのを感じながら、思い切り息を吐いた。
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初めての魔獣倒しが介錯だなんてね。
『レベルアップしました』
アイちゃんの言葉も、あまり頭に入ってこない。
いい魔獣だったなぁ
こーやって考えると人も魔獣も考えは変わらないよね。
でも黒鹿さんから美味しい匂いがする。
なんか、本能が食べろって告げてる。
…………ごめんなさい黒鹿さん。いただきます。
俺は目を瞑って黒鹿に噛み付いた。
結論から言うと、美味だった。
魔獣の肉は美味しい。こんな肉食べたことないや。
少し気分を落ち着かせて、俺は自分のステータスを見ることにした。