鬼に金棒
第二監獄場で叫ぶナナシ。ガタガタと柵を揺らしながら必死に訴える。
「拙者は誤解じゃ~!」
「……どうやら、本当に誤解だったみたいだ」
「カズマ殿!」
「お前を出してやろう。人手が欲しいんだ」
「影が現れたでござるか!?」
「そうだ。親玉っぽいやつも現れた」
「恐らくオーマでござろう。やはり動いていたか」
檻の鍵が開けられる。フゥーッと息を吐き腰を触る。いつもあった刀が無く、心許ないナナシ。
「刀は別の場所に保管している。悪いがダッシュだ」
「拙者は構わぬが……」
向かいの檻の男に目をやるナナシ。ナナシは、何故男が檻に居るのか不思議で仕方なかった。
「彼は罪を犯した……人を殺めたんだ。だからそこに居る」
「人を!?」
「お喋りは終わりだ。行くぞ」
※ ※ ※
「どんだけ出てくるのよ!?」
「アタイの重力で退治するにも限度があるってぇ!」
「四方八方に出てこられたら対処に遅れるよ!」
影の物体に囲まれつつも、セリオの瞬間移動で一ヶ所に集め、アンの超重力で対処していたが、尽きることなく沸く物体達に戦意を削がれつつあった。
「カズマが来るまでアタイは耐えるよぉ!」
※ ※ ※
「どこだったか」
「カズマ殿、早く! ヒビが現れたでござる!」
「破壊の兆候だったな? 急がないと! ……よし!」
刀を見つけ、それをナナシに手渡す。
腰に刀を提げたナナシの顔には覇気が甦る。
「行くでござるよ」
「ああ」
今のナナシの心境は、鬼に金棒であった。
 




