影の大群
ナナシを第二監獄場に閉じ込めた後、イグラズの首都であるクラッティスを見廻るカズマ達。
灰色一色になってしまった街は不気味に静かになり、いつもは賑やかな商店も変わり果てていた。
「どうなってるんだい?」
「人も時間も止まっている。原因が判らないと動きようがないぞ」
「胸騒ぎしかしないわよ。ナナシ君の言っていたことが本当だとすれば、影の物体とか虹色の石が現れるみたいだけど?」
「それもデタラメかもしれんぞ。まあ、参考にはさせてもらうが……」
「どうしたんだぁ? カズマ」
「しっ! アン、物音がしないか?」
「物音ぉ?」
耳を澄ますアン。少しずつ何かが近付いているのを確証すると、カズマに目で合図を送る。
アンからの合図で動き出すカズマ。物陰に隠れると息を静める。ミカノに合図を送り、建物を登っていく。
(あれか……。確かに影を纏っている。彼の言っていたことは本当だったのか)
カズマの手に収まるライフル銃。ミカノによって呼び出されたライフルのスコープ越しに影を認識したカズマは、うつ伏せに身体を寝かせ身を潜める。
(五体なのか五匹なのかは知らんが、さっさと片付けさせてもらう!)
カズマが引き金を引く。的確な狙い撃ちによって倒されていく物体達。建物を降りたカズマが物体達を確認する。
「消えただと!?」
「カズマ。なんだか空が変じゃない?」
ミカノが空の一点を指差す。黒い穴が出現し、そこから声がする。カズマはライフルで撃つが届かないでいた。
「この世界を破壊する」
「何の冗談だ。まさかこの状況、お前の仕業か?」
「だったら何だ。我を倒せるのか?」
黒い穴が姿を変えて降りてくる。影を纏ったオーマが迫り来る。
「死にたくなければ降参するんだ。今なら罪を軽くしてやる」
「罪、だと? 罪深きは人間だ。世界そのものだ! 罪人が我を裁くだと? 笑わせる!」
オーマの影がカズマを縛り上げる。身動きが取れないカズマだったが、アンが発生させた超重力によって一瞬影が緩んだ隙をついて脱出する。
オーマは影をアンへと向けるが、そのアンが消えた為に動きが止まる。
「む!?」
「こっちだ!」
カズマの放った銃撃を浴び狼狽えたかに見えたが、オーマのそれは笑い声に変わっていた。
「少し驚いた。少し、だ。我に攻撃は効かぬ。それ故に全力を出せないのが歯痒いが、我が全力を出すまでもないのも事実だ!」
「ちっ! セリオ!」
「うん!」
オーマの影が迫り来る直前、セリオの瞬間移動で事なきを得た。オーマは高らかに声をあげて笑うのだった。
 




