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エクストリーム・ウォー ジョーカー  作者: 碧衣玄
ロードバスターズ
7/40

災難

 暗い暗い通路に幾つもの檻。そこに収容されるのは、この国で罪を犯した人間。窃盗や暴行、恐喝といった罪を犯した者は、第一監獄場に収容される。


 そしてもう一ヶ所。殺人や爆破、テロといった凶悪犯罪者が収容される場所がある。第二監獄場だ。

 ここに収容された者の刑は、無期懲役か死刑となる。


「困ったでござる」


 檻の中に居るものは凶悪犯罪者。にもかかわらず、腰に提げていた刀を取られ、項垂れているナナシが閉じ込まれている。柵をガタガタ揺らして叫ぶナナシの声が響き渡る。


「出してほしいのじゃ! 拙者は無実でござるよ!」


「止めておくんだ。無駄だ」


「おぬぅしぃはぁ~?」


 涙混じりで訊くナナシに、ナナシの檻の向かい側に居る男は首を横に振った。


「罪人が罪人に名前を訊くとはな。無駄の極みだ」


「拙者は無実でござるよ! 誤解なんじゃ!」


「第一ではなく第二。どんな誤解で第二に放り込まれるのか」


「本当に誤解でござる~!」


※ ※ ※


「灰色の世界。随分と賑やかな街のようでござる」


 ナナシは慣れた様子で辺りを窺う。影を纏った物体や、虹色の石が無いか歩いていく。


「オーマも出てきてないようじゃ。はてさてどうしたものか」


 顎に手を当てて考えていると、『動くな!』という声に睨まれる。ナナシは刀に手を伸ばすが、刀を抜くよりも先に身体を押さえられてしまう。


「は、離すでござる!」


「馬鹿を言え。このクラッティスの変わり様。お前の仕業だな!」


「誤解でござるよ!? 拙者は来たばかりでござる」


「尚更怪しいな! 俺達以外に動ける者はいないようだ。そんな中、見慣れない人間が彷徨いているんだ。怪しむなというほうが無理だ」


 ナナシを押さえる青年の他に、三人の人間が近寄ってきた。ナナシは抵抗虚しく縛られてしまう。自分が記憶喪失であることや、これまでの経緯を話すものの信用されずにいた。


「どう思う? セリオ。俺はまだ、こいつを信用するには値しないと思っている」


「カズマの言うのはごもっともだよ。けど、この人は大丈夫な気もするんだよね」


「セリオは優しいな。確かに、年下を疑うのは心が痛む。だが時には鬼にならないとだ」


「カズマは厳しいね。そうだよね、よく見れば刃物を持ってるし」


「これは護身用でござるよ!?」


「うーん。君を信じたい気持ちもあるんだけど……とりあえず、これは没収。僕も全く疑ってないわけじゃないから」


 緑色の頭髪の青年セリオは、ナナシの刀を回収した。困っているナナシの顔をジーッと見つめる女性ミカノは、金色の髪を靡かせながら微笑んできた。


「とりあえずさ、今は言う通りにしてほしいんだよね。アタシが説得してみるから。ね?」


「ミカノ。甘やかすと隙を突かれるぞ。見た目に惑わされるな」


「カズマは厳しすぎよ。アタシ達以外に動ける人が居たんだから、むしろ喜ぶべきなのに」


「最近取り逃がしたのを根に持ってるんだぁ? カズマの負けず嫌いぃ。アタイが慰めてやろうかぁ?」


 カズマにベッタリと密着する女性。

 空気を読まずくっついてくる女性に『止めるんだ!? アン!』と言って叫ぶカズマは、さっきまでの冷徹な印象とは全く違って見える。


「ナナシ君だったわよね? 悪いようにはしないわ」


「ミカノ殿……承知したでござる」


※ ※ ※


「そういうわけか。それならば希望はあるかもだな」


 ナナシの話を黙って聞いていた男は、笑い声を発しながらナナシを落ち着かせた。首を傾げるナナシに、男はハッキリと言い放った。


「彼等は〈ロードバスターズ〉。警察の協力者達だ」

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