再会の共闘
到着した世界は灰色だった。街は静まり返っている。そして感じる兄の気配。刀を構えて進んでいく。気配を殺して進むナナシの耳に物音が聞こえてきた。
「邪魔だああ!」
(この声は魔悪邪! 誰かと戦っておるのか?)
「イイ気になるなよ!」
(そうとう苦戦しているようじゃ。一体誰が?)
物陰から戦いの様子を窺おうとするナナシ。そんな彼の視界に入ってきたのは魔悪邪。そして、もう一人。
(あれは……)
「逃がさないって!」
(……ウル殿!)
赤い髪を靡かせ炎を纏う少年。鎧を纏った魔悪邪に果敢に挑んでいる。
「そんな重たいもんを着けてたら、俺とは戦えないって!」
「調子に乗るな!」
影で生成した剣を使い攻撃を防ぎながら、強固な鎧を利用して強引に押していく。影を手足のように操り、相手の身体に巻き付けていく。
「何だこれ!? 動きが取れないって!」
(ウル殿が危ないでござる!)
物陰からダッシュし、勢いよく飛び上がって刀を抜く。魔悪邪の影をスパッと斬って着地した。
「魔悪邪。また破壊でござるか」
「摩士! どうして分からない!」
「拙者には分からぬよ。世界を壊そうという思考は」
「我に無いものを全て持っているからか!」
「お主は思い違いをしているだけでござる! 誰もお主を見捨ててないでござるよ!」
「摩士、お前には分かるまい! 孤独の辛さは!」
影で翼を生成すると、幾つもの剣を生成して上空から飛ばしてきた。雨のように降り注ぐ剣を刀で弾くナナシ。
「ウル殿!?」
「俺は大丈夫だって。そっちこそ無茶は禁物だって!」
青い炎を纏ったウルは、不思議な穴を出現させて剣を避けていた。不思議な穴へと吸い込まれた剣は、魔悪邪の背後に出現させた穴から現れ降り注ぐ。
「ふざけるな!」
剣を影に戻して事なきを得る魔悪邪。翼を勢いよく動かして風を起こす。影を風に乗せて泳がし、二人の視界を埃のように遮る。それで出来た隙を突いて急降下していく。
「これでは目が見えないでござる!?」
「仕方ない……ここは……」
「終わりだー!」
「……俺のステージに連れ込むって!」
「何!?」
自分の周囲に穴を出現させて誘い込み、自らも穴へと入っていくウル。出現していた穴は消え、風に乗っていた影も消えた。
ナナシはその場で立ち尽くすが、灰色の世界に色を取り戻すべく走り出す。