敵対する双子
高校へと到着した二人。ナナシは息ひとつ乱れていなかったが、少年の方はキツかったようだ。受付の人に事情を話したナナシは、呼吸を整えた少年と一緒に校内に入っていく。
「比良姉のクラスはどこじゃろ?」
「訊くのが早いでござるよ」
他の生徒から比良の教室を訊いた二人は、急いで歩いていく。『かわいい!』や『きゃー!』という女子の声を受けながら到着するが、当の比良は不在だった。
「居ないでござるか。どこに行ったのじゃ?」
「もしかしたら屋上かもしれんじゃい。比良姉、外の風に当たるのが好きだから」
※ ※ ※
「はあ……はあ」
「我から逃げることなど不可能だ。ここは屋上だ、逃げ場はない」
「わたしは諦めない! 簡単に諦めない!」
「威勢はいいな。だがそれだけでは悪足掻きに過ぎん。我を拒んだ以上、世界と運命を共にするのだ」
なんとか逃げ回りながら入口に近付いていく比良。扉に背中を向けてタイミングを窺う。ドアノブに手を掛けるが、扉が開くことはなかった。
(開かない!?)
「無駄だ。こちらからは開かないようにした。屋上に来る奴などそうそういないそうだ。さあ、逃げ回るのをやめるんだ」
絶体絶命の比良の背中側にある、開かない筈の扉がバンッと開く。そこから現れた二人組を見て比良は驚き、魔悪邪は顔をしかめた。
「比良姉!」
「懐流!?」
「見つけたでござるよ、オーマ。否、魔悪邪!」
「記憶を取り戻したのか! 面倒なことだ!」
「世界を壊させるわけにはいかないでござる。弟の責任として、兄であるお主を止めるでござるよ!」
ナナシはバットケースから、愛用の刀を取り出した。記憶を取り戻してから初めての遭遇。鞘から刃が引き抜かれた。




