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戦いを終えた者

 ふかふかなベッドに身体を預けていたナナシは目を開けた。本棚や机が視界に入る。身体を起こして窓を覗く。青々とした空が広がり、道を見下ろせば、人が行き来している。

 トントンと、ノックをする音がする。ガチャッと扉が開き、一人の少年が入ってきた。金髪とは不釣り合いな柔らかい笑顔を覗かせる。


「よかった。意識を取り戻したんだね」


「……お主は? 拙者をここまで連れてきてくれたのでござるか? 女の子(・・・)に無理をさせてしまったようじゃ」


 ナナシの言葉を聞いた途端、少年の顔色がみるみる変わる。肩をガックリ落としているあたり、ショックを受けているようだ。


「僕は……僕は……」


「ど、どうしたのじゃ!?」


「僕は女の子じゃなーい! 男だー!」


「……すまんでござる! 拙者の勘違いでござった」


 少年の悲痛な叫びを聞いたナナシは、精一杯の謝罪をした。


※ ※ ※


「僕は、桜庭さくらば甲多こうた。十四歳。さっきはごめんね。よく間違われるんだよ。だから条件反射で」


「そうでござったか。拙者、ナナシと申す。助けてくれてありがとうでござるよ。甲多殿は十四でござるか。拙者と変わらぬかもじゃ」


「変わらぬかも?」


「記憶喪失なのでござる。この〝ナナシ〟という名前も仮の名なのでござるよ」


「そうだったの!? あああごめん! そうとは知らずに訊いちゃった」


「気にしないで。甲多殿は知らなかったのだから当然でござる」


「ねえ、ナナシ君。さっきの街の光景って何だったの?」


「少々長くなるのじゃが……」


 ナナシは甲多に事情を説明する。

 話を聞いた甲多は、ナナシの手をギュッと握って感動していた。何度も何度も頷いている。


「そうだったんだね! 大変なことを背負っているんだね! この世界を救ってくれてありがとう!」


「そんなに礼を言われることではないでござるよ。当然のことをしているまででござる」


「うん? ということは、もう行っちゃうの?」


「オーマも退散したみたいだのでな」


「そう……残念。もっと一緒に居たかったなあ」


 残念がりつつテレビをつける甲多。その表情がみるみる険しくなっていく。先程までの柔らかい笑みとはかけ離れた表情だ。


「甲多殿?」


「まただ。何でこんなことを」


「どうかしたのじゃ?」


「僕と同じ抹殺師の仕業だよ。これで五件目。無差別に人が斬りつけられているんだ」


「抹殺師?」


「あ、ごめん。この国に居た冷獣って化物と戦っていた者のことなんだ。僕もそうだったんだ。戦いが終わって平和になって、抹殺師の役目も終わったのに……何で!」


「役目を終えた反動じゃろうか」


「何度か気配を追ったことがあるんだけど、この犯人も気配を消すことに長けているみたいだから。僕の仲間も動いているけど」


「物騒でござるな。放っておけないでござる。甲多殿、拙者にも手伝わせてはもらえぬか」


「でもナナシ君とは無関係だよ」


「いいや。折角オーマから救った世界で、物騒なことが起きている。それを置いて行けないでござるよ」


 ナナシの真っ直ぐな目を見ていた甲多は諦めた。なんだか自分と重なって見えたからだ。『お願い』と握手を交わす。

 ナナシは強く頷いた。

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