レイド
ナナシから事情を聞いた緋は感動していた。記憶を失っているにも関わらず、世界の危機を排除しようとするナナシの覚悟に燃えていた。
そんな感じで盛り上がる中、レイドモンスター出現の知らせが届く。ざっと目を通すと、出現場所へと急いでいく。
「あれだぜ!」
「見たことのないモンスターさ」
「二人共、レイドとは何でござるか?」
「大勢で攻略するクエストのことだ。普通のモンスターと比べられない強さだぜ」
「一緒に戦う人との連携が肝になる。チームを組んでいるならば、チームで攻略するのがいい」
岩場のフィールドを踏み荒らしながら遠吠えをあげるモンスター。その周りでは既に、数人のプレイヤーが奮闘していた。
「トロピカルバズーカ!」
「ベジタブルインパクト!」
「フィナーレ・ムーン!」
「究極・豪炎」
「ゴッドライズ」
五人のプレイヤーによる怒濤の攻撃。
それでも、モンスターには効いていなかった。強力な息吹きによって五人は吹き飛ばされてしまう。
「皆!?」
背中に背負った刀を抜いて緋が駆けていく。モンスターの息吹きを刀で祓いながら、一人ずつ救出していく。
「偵徒、大丈夫か!」
「緋くん~」
「確かにバズーカは決まっていた。美岬のパンチも、海乃さんの斬撃も。究極殿の炎も、ゴローの攻撃も。なのにアイツには効いてないっていうのか!」
「紅蓮。あのモンスターのステータスが見られない。運営のミスかな?」
「冗談キツいぜ? 海乃さん。そうだったら、札哉の野郎をブン殴ってやるぜ!」
「ボクをブン殴るだって? 聞き捨てならないな」
フィールドに現れた黒い仮面タイプのプレイヤーは、緋の肩に手を置くと詫びをしてきた。『ブン殴るのは勘弁してくれ』と前置きして説明する。
「あのモンスターは、リューゲン・ヤミ。今度のイベント用に仕込んでいたんだが、スタッフの手違いでアンロックされてしまったんだ。再ロックを行っているが時間が掛かる。済まないが、もうひと踏ん張り頼めるか?」
「しょうがないぜ。お前も運営側として頭を抱えてるんだろう。そういうことなら協力するぜ!」
「恩に着る。ボクも限りを尽くそう」
【【アタック】】
札哉の黒い拳がしなる。右手に力を込めていく。
緋の刀が眩しく光る。刀を握る手に力が入る。
「ジョーカーナックル!」
「紅蓮斬!」
札哉の拳と緋の剣技が炸裂するが、リューゲンには効かないでいた。
「エンド・ナックル!」
リューゲンの隙をついた拳は痛みを覚えるだけ。七菜は、リューゲンとの距離を開ける。
【エヴォリューション】
七菜の青い身体をローブが包み込む。
そして、そのまま姿を消していく。
【アタック】
「流星乱舞!」
目にも止まらぬ速さで攻撃を食らわす七菜。
速すぎる動きに対応出来ないリューゲンは、その重い身体をフラつかせて倒れ込んだ。
【エヴォリューション ブラスト】
「フィナーレ・フルムーン」
七菜同様、その金色の身体にローブを纏った海乃の攻撃。満月のように丸い穴を出現させ、その中をくぐり斬撃を仕掛ける。
【エヴォリューション ブラスト】
「一気に決めるぜ。ナナシ、札哉、いくぜ!」
【ファイナル】
「分かったでござる!」
「おう、決めよう」
ローブを纏った緋が両手に刀を構える。
ナナシは居合いの構えを、札哉は右足に力を集めていく。七菜と海乃、諦めずに攻撃を続ける美岬と偵徒に究極殿とゴロー。そのお陰でリューゲンに大きな隙が出来た。
「紅蓮斬・乱舞!」
「舞踊斬!」
「キリフダーストライク!」
緋の二刀流、ナナシの踊るような刀捌き、札哉の飛び蹴りが炸裂。三人の強力な攻撃に、流石のリューゲンも力尽きた。
「やったぜ! レベルなんて飾りだ!」
緋が勝利の拳を突き上げた。
ナナシのレベルも突き上がったのだった。
 




