表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/40

仮想世界

 腰に提げた刀に視線が集まっていることに気付いていたナナシは、ビルの陰に身を隠していた。そう、視線を感じているのだ。

 当たり前のように街を人が歩き、車が走って騒がしい。ここまで灰色の世界に来ていたが、普通の風景が広がる街並みがそこにはあった。


(どういうことじゃ? 灰色の世界続きだったから感覚が麻痺しているのは否定せぬが)


「そこの」


「はひっ!?」


 後ろから声を掛けられ驚くナナシ。

 声を掛けてきた女性は首を傾げた。髪を腰まで伸ばしており、若干目付きは鋭さを持っている。


「そんなに驚くことはないじゃないか。そんなに疚しいことを秘めているのか?」


「いや、その……反射的に驚いてしまったでござるよ。あははは」


「あとそれ。その腰の。街中じゃ目立つさ。見たところ本物みたいだし。僕の目は欺けないさ」


(拙者の刀を本物と見抜いたうえで、全く動じない心の強さ。この者、只者ではござらん)


「僕を疑っているのかい? それはお門違いってものさ。別に警察に言ったりはしない。丁度良い知り合いもいるし」


「知り合い?」


「警察と繋がりのある人物さ。少々性格に難はあるが悪い人じゃない」


「それではお願いでござる。行動しづらくて困っていたのじゃ」


※ ※ ※


「別に構わないわよ? 事情を説明してもらわないといけないけどね。うん、了解したわ」

 

 カチャカチャとキーボードを叩きながら通話を終えた女性。金髪を後ろで束ねて気合いを入れている。ブルーライトを軽減するメガネを掛け、口には飴玉を転がしている。


「刀を装備している少年、ね。普通なら銃刀法違反だけど、なんだか訳ありみたいだし。彼女の頼みでもあるし」


※ ※ ※


「刀を持ち歩いているなんて、まるで先輩みたいさ」


「先輩?」


「僕の大学の先輩なんだ。夏郷って名前の人なんだけど」


「かざと……夏郷。夏郷殿のことでござるか!?」


「そうさ。知っているのかい? 夏郷先輩のこと」


(刀を使う方の夏郷殿のことだとしたら、この世界は一度来ている世界でござる! 灰色ではない理由が分かったでござるよ)


「おーい」


「あっ、すまないでござる。名乗り遅れたが拙者、ナナシと申す」


「僕は矢吹やぶき 七菜なな。さて、行こうか」


 七菜に連れられた場所は、鮮やかな光が眩しく、大きな音が飛び交うゲームセンターだった。

 慣れた様子で入っていくと、個室のマシンが並ぶ所へまっしぐら。ナナシは訳が分からないでいた。


「ゲームを知らないのかい!? 君くらいの歳なら普通にやっているのに」


「拙者、記憶を失っているでござる。この世界の人間なのかも分からぬのじゃ。この世界に来たのは二度目ではあるが」


「それでさっき先輩の名前を聞いて反応していたのかい。世界を渡るすべを持っているの?」


「拙者に選択肢はないのじゃ」


「君は一体?」


「世界の破壊を防ぐ為に動いているでござる。詳しい説明は長くなってしまうでござるよ」


「街中では落ち着かないのなら、とっておきの場所がある」


 七菜の指示に従いマシンに入ると、戸惑いながらもメットを被った。


【スタート】


(な、なんじゃああ!?)


 ナナシの意識がスーッと吸い込まれていく。広い広い草原が鮮やかな地点フィールドへと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ