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紅海月の少女

作者: サブ麻酔
掲載日:2015/08/19

世界観重視、ファンタジーテイストの淡い初恋読み切りです。

ちょっと事故のシーンの描写が生々しいですが、残酷な描写とまで…はいかないと思います。

教室は、海の中だ。

サメやウツボみたいな強い奴がいばって泳ぎ、弱い小魚が食べられる。

カラフルで個性的な、色んな魚が行ったり来たり。


僕は何だろう。

特に襲われないけど、自由に泳げる尾びれがない。

海底に生えているワカメとかかな。

ペラペラで、水流に逆らわない。

車いすを押して、たまに友達のところに行くぐらい。

退屈だなぁ。


退屈になると、ボーッとする。

ボーッとすると、視線が勝手に泳いで。

いつも同じ場所に止まる。


クラスの中を、体重がないみたいにふわふわ泳ぐ彼女。

視線の泳ぎつく先だ。

彼女は、ベニクラゲ。


「また、月島を見てるんだ?」

そう話しかける友達は、潮の流れ。

僕一人じゃ行けない場所へ、背中を押して連れていってくれる。

教室は海だっていう見方を教えてくれたのも彼だ。


「どうしてベニクラゲって呼ぶんだ?

ベニクラゲって不死身のクラゲだろ?」

彼はいつも不思議そうに問う。


ごめんね。

答えられない。

二人だけの秘密なんだ。


僕の尾びれがちゃんと動いた頃。

自転車に乗ってたら。

交差点を漂う、同じ海にいたクラゲに衝突した。


僕は上半身が何とか動かせたけど、クラゲは動かない。

海底に血が広がって。

なんてことをしてしまったんだ、と立ち尽くした瞬間。


「あー、びっくりした」

彼女はひょいと起き上がった。

裂けたカサが、一瞬でつながって。

血だまりは消えていた。


あとに残されたのは、動かない尾びれ。

彼女は僕をおぶうと、ふわふわと僕の家まで運んでくれた。

死なないの、内緒ねって笑いながら。


こんなこと、あっていいのだろうか。

不思議でついつい観察してしまう。

たまに喋ると、普通の女の子なのに。

学校指定のシャツの上に赤いカーディガン。

色からして、あの神秘の生命体にそっくりだ。


でも、それ以前に。

視線が惹かれる。

どうしてだろう。

そう友達に聞いたら、おめでとうと言われた。

「へえ、流輝が月島を!」


探究心じゃないことを隠しておくのは、もう無理だった。

自由の利かなくなったワカメの初恋は。

自由なベニクラゲ。


あの日の痛々しい紅色は、水に薄められて。

海が優しいピンク色に染まる。



感想やリクエスト等ありましたらよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここからまた新しい作品を創作してほしいです......。自分の語彙じゃ表せないですが、無理やりでも言葉にするならふわふわした夢の中みたいな雰囲気。ぜひ続きがあるなら読んでみたいです。ステキ…
[一言] 暗い水族館に幻想的に映し出された 綺麗なクラゲを思い浮かべました。 クラゲって美しいとグロテスクの丁度中間で 目をひきつけて話さない魅力があります。 その様な雰囲気を感じました。 同じ教室…
[一言] 独特の世界観に魅力を感じます。 目を閉じて、脳内で物語を映像化してみました。 幼くもしっかりとした顔付きの10代の男女が、空想と現実の世界を行き来していますね。 小説では現実路線の物語を描く…
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