これが日常。
#01 これが日常。
「おはよ」
寝起きにはいつも妹の声。
「はぁ~あ、ってかあっち行ってろ」
少なくとも、この頃はまだ義妹の事を好きになれなかったのだろう。
「あ、朝ご飯できてるからね…」
しょんぼりとした顔で部屋の扉を閉める。
(はぁ~、やっと、これで一人)なんて何かすっきりしねぇ朝だなぁ。
今日は折角の休みだってのに。
まずは、下へ降り、洗面所で顔を洗うのが山下家の日課だ。
「和也、おはよう」
シュシュと歯磨きをしながら、鏡で和也の顔に挨拶をする。
「父さん、おはよ」
顔をニ、三回洗い、タオルで拭きながら返事をする。
「あら、あなたそろそろじゃない?和也もおはよう」
目玉焼きをフライパンでさっと作りながらデジタル時計をチェック。
「お、母さん、おはよ」
これが山下家の日常。去年までは。
去年、妊娠中だった母さんが自転車で事故を起こしてしまい、自身は指の骨折だけで済んだが、お腹の中の子供は流産と医者に言われ、母さんと父さんは日が暮れても泣いていたのを鮮明に覚えている。でも、どうしても諦めたくないという一心で、養子をもらった。それが、俺の義妹、竹下彩だ。
最初に会った時からもそう、俺がいる前ではずっと笑顔。俺は現在、中学二年生なのだが、一学年違う、それも下だ。だからこそ、思う時がある。(大人だなぁ)と。
「お兄ちゃん、食べないの?」
と義妹が問い掛ける。
つい、いつものくせが出て、
「今から食うからよ」
と携帯を触りながら椅子に着く。