プロローグ
存在自体が、人類社会、ひいては世界そのものに対して多大な影響を与える者たちが居る。
我々はそのような存在を『主人公』と呼んでいる。
平凡な日常を舞台にする主人公はこれにはあたらない。例えば、『第二次世界大戦で連合国に敗北した歴史を持つ日本人』の99%は、それぞれの人生の中で輝く"普通の主人公"だろう。
我々が『主人公』と呼ぶのは、あくまで『世界』の存続や発展、あるいは現行社会の根底を覆す能力、もしくはそれを間接的に引き起こす立場にある人物のことを指す。
彼ら『主人公』の身の振り方次第で、もしかしたら10年後には、世界核戦争が勃発するかもしれないし、強大な超能力が暴発して、明日には『この世界』そのものが消し飛ぶ可能性すらある。
逆に、彼らが居ることで、宇宙連邦による地球侵攻が阻止されたり、悪の秘密結社による人類支配化計画が頓挫することだってある。
通常、それは『下位世界』の人類や、彼らに影響を与える『主人公』に独力で回避してもらわなければならない。所謂、「自分の尻は自分で拭け」というヤツだ。
だが、誰もが気付かない内に、実は『世界』が滅亡一歩手前に立っていることがあるとしたらどうだろうか。
それは『主人公』にすらどうしようも無い状況で、放っておいたら魔界から出てきた魔王軍に日本が占領されたり、意思を持ったAIがアメリカを滅ぼすかもしれないということだ。
そのような事態を回避するため、我々は『世界』に対して間接的な干渉を試みる。
そして、キミはその実行役として、我々に産み出されたのだ。
もうずっと前のことだ。大体こんな話を俺は聞かされたような気がする。
俺はこの役目に文句は無い。むしろ気に入ってすらいる。
こんな面白い仕事は、多様性を獲得した人類すら手に入れられないものだからだ。
世界に重大な影響を与える『主人公』の『親友』。
これが、俺に与えられた役割である。