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過去


安心したのは「どうしてそんなことをしたの?」 と聞かれなかった事だった


でも、「修復できた」の言葉を見た瞬間、胸の奥で針にでも刺された様な感覚に陥った




「チョコバナナと、苺クリームでございますね

店内でお召し上がりになりますか」



「はい、お願いします!」



にっこり笑顔の店員と純平まるで、どちらがより素敵な笑顔を作れるか勝負している様だった



小さな丸いテーブルに椅子2つの席に私達は座った

これじゃ本当にデートみたいだ


「はいチョコバナナ!」


「ありがとう!」



純平は生クリームと苺のクレープを頬張りながら「ふぁっふぃのは」と言った

子供みたいで呆れてしまう


「飲み込んでから話して」



そう言うと純平は"ゴクン"と音を立てて飲み込み私に話しかける



「さっきのさ、ダイスケから?」

メールの事だ


「あ、うん」


「喧嘩?みたいなのしたんでしょ、仲直りしたの?」


「なんで知ってるの?!」


私は驚いてそう答えた

よく考えたら答えひとつだけど


「…ダイスケから聞いたの?」



「うん」



私はなんとなく恥ずかしくなり、チョコバナナクレープを少し食べて

うつ向いた

純平は私がダイスケの事が好きな事を知っている



「仲直りしたんだ」



「朝純平と電話した後メールで謝って

許してもらって…」

たぶんこれからも親友



「ふぅん…

俺なら、なんでそんなことした?って聞くけどな」



「私も聞かれるかもとは思ってた」


だからなかなか謝れなかった、言ったら全て終わる気がして




「俺だったら、えりに全部言ってもらって

それに本気で答えるのに」


「純平?」


純平の様子がおかしい

倒れたビニール傘を気にも止めず、クレープを握りしめて

私の顔は見ずにうつ向いている



「えり」


「はい?」


「このプレゼント、妹が貰ってくれんかったら

えりが受け取ってくれないか?」



「えりが好きだ」


私はなにも答えない

答えられない

言ってる意味が分からないから



音が周りから全て消えていくみたいだった

周りの物も落としたクレープも人も、ただの背景と化し純平の言葉だけが頭に残る



純平の目は私だけを見つめていて、真剣そのもの



なのに私は忘れたい過去を思い出していた



薄暗い私の部屋

ベッドの上

『えりちゃん大好きだよ』



「止めて…お父さん」





意識が遠退いていく





気がついたら私は長椅子の上に毛布を被って寝ている状態だった


窓もなく、とても静か

まるで保健室で休んだときみたい



「えり、大丈夫か」

小さな聞き覚えのある声が右隣からする

ダイスケだ


右隣にダイスケと純平が心配そうに私を見ている

どうやらクレープ屋の休憩室を借りたらしい



「ダイスケ…なんで?」


「純平から電話が来て急いでここまで来たんだよ

事情も全部純平から聞いた」


ダイスケを眉を寄せて深刻な目で私を見る


「ごめん、えり俺…」


うつ向いて泣きそうな震えた声で私に話す



「ううん、純平が悪い訳じゃないから」



私は過去のせいで幼なじみのダイスケ以外の異性に恐怖心を抱いていた


成長するに連れ、それは徐々に収まって

中学の頃には普通に話せる様になったけど告白とか、それらしい事をされるとやはり駄目だった




中学の時は告白もそれらしい事もされなかったし、純平には過去の事は教えてないから純平は本当に悪くない




「うん、純平は悪くない

知らなかったんだから…

こいつは俺が送るから」



「わかった」



2人とも口調が重い

この場の空気も

私の体も

とても重い




私は自分の過去が嫌いだ


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