泣いた
淳平のお気に入りのカラオケは時間制限がなく
好きなだけボックスの中にいられる
そして何より安い
ボックス内には時計は無く鏡1つにカラオケに必要な道具が揃っている
ソファーに隣り合って座り最初に話したのは淳平だった
「で、話しってなに?
えりになんかあったんか」
勝手にえりの事だと勝手に決めつける淳平
いや、合ってるけど
「なぜえりの事だと分かる」
「わかるよ、何年お前と一緒にいると思ってるんだ」
淳平は
余裕の笑みを浮かべて話す憎たらしい黒ぶち眼鏡だ
「で、えりがなした」
「どうしたって…」
隣の下手な歌声を聞きながら、ノリノリの笑い声を聞きながら
俺は昨日の出来事を話した
えりは昨日
俺に漫画を返しに来ていた俺のオススメの漫画
えりも好きそうな少年漫画だ
えりが買ってくれたリンゴジュースを飲みながら
俺は漫画の話しをしていた
次にどんな展開になるのか、主人公はどんな行動をとるのか
そんな話し
だけどえりは「うん」とか「そうだね」しか言わず
なんだか上の空だった
ぼーと台所の方を見ているようだった
俺は話しを途中で止め、テレビをつけた
見たかったものがあるわけじゃない
ただなんとなく、えりの気を台所から離したかった
俺は話すのを止めた
テレビの音だけが部屋に響く
静かの中
えりは口を開いた
「ね、ダイスケ」
「ん?何?」
えりの言葉に耳を傾ける
様子がおかしい理由が分かるかもしれない
「あの、マグカップ…」
えりの気にしていたのはマグカップの事だった
うん、何となくそんな気がしていた
マリとのペアのマグカップ
「マリ日付き合って1ヶ月記念のデートをしてたんだよ、映画見て…買い物して…このマグカップは映画館の近くに雑貨店があったんだ
ポップ広告が可愛くてマリ好みで、そこであのマグカップ買ったんだよ」
聞かれてもいないのに俺はえりに、"のろけ話"をした
えり苦笑いをしながら聞いている
俺ののろけ話なんか変か、やっぱり
「ずっと側に、ずっと一緒に居られるようにってマリが俺の部屋に2つ共置いたんだよ」
そう言うと
えりの表情は変わった
なんだか、寂しそうな
そんな顔
そしてえりはマグカップを割った
割った後泣いていた
静かに、ゆっくり
泣いていた
俺は軽く混乱していた
マグカップが割れたショックもあったけど
泣いているえりを俺はどうしていいか分からない
ただ見ているだけだった




