彼女との出会い
今回は最初、主人公とは別の視点から始まります。
午後5時位になり、辺りが夕焼け色に染まった頃…一人の黒い長髪に
赤い目をした少女が図書館で本を読んでいた。彼女の名前は兎上 理香。
あまり人と関わりたがらず、いつも一人でいる。顔立ちもよく
常に成績は学年トップだが、このような性格のせいか、あまり男
子受けはよくない。それどころか、校内で彼女の名前を知らない人
も少なくない。女子の中には、勉強を教えてもらおうとした者もいる。
しかし大抵、「あなたみたいな人に勉強を教えているほど私は暇
じゃないの」と言い、何処かへ行ってしまう。そんな評判の悪い彼
女は本を読み終え、片付けをすると、少し走り気味に図書館を出て
いこうとした。
◇◆◇
僕が本を取ろうとした時、突然後ろから誰かがぶつかってきた。
「おい、危ねーな!」
と、怒鳴りながら後ろを振り向くと、黒い髪の少女が僕を睨み付けていた。
「あなたこそ、そんな所に立たないでくれる? 通行の邪魔だから」
あまりにも的を得た反論だったので、僕は何も言い返せなくなって
しまった。
「ま、まあ、ここに立ってた俺も悪かったよ……」
それ以外言うことが思い浮かばず、僕は黙り込んでしまった。
すると彼女は、
「『俺も』じゃなくて、『俺が』じゃないの? 勝手に私にも罪を負わ
せるのはやめてくれる?」
彼女言ったことに対する苛立ちがつい隠せず、僕は大きな声で怒鳴った。
「ぶつかってきたのはそっちの方だろ!」
すると彼女は大きく溜め息をつくと、あきれた顔で僕のことを見た。
「あなた、男のくせに、器が小さいわね……はい、これ、あなたが
落とした本よ……下らない本を読んでいるのね……じゃあ、私は急いでるから」
と言い残すと、彼女は行ってしまった。
「……言いたいことだけいいやがって!」
その後、図書館で騒いだせいで、僕は来月図書館に出入りすること
を禁じられてしまった。そして僕は本を借りると家に帰り本を読んだ。
そこで、驚くことを発見した。本の間の絵に、なんとさっきの少女と全く
同じような絵があったのだ。さっきのことを思い出した僕は妹に当たって
しまった。すると、
「何があったのか知らないけど、妹に当たらないでよ、お兄ちゃん!」
と妹にまで怒られてしまった。
◇◆◇
次の日、僕は成績は悪いのに、無駄に校内の女子の顔と名前を完全
に記憶しているという犬飼に昨日の少女のことを聞いた。
「………多分、B組の兎上さんだと思うよ……たしか兎上さんあんまり
人と関わるのが嫌いみたいだから、かえってもうなにも関わらない方がいい
んじゃないか?」
「……そうだな……」
僕は友人の言う通り、仕方なく彼女に対する怒りを押さえ込み
授業を受けることにした。しかし、僕は次会ったらただじゃおかないと
心に決めたのだった。
2話終わりです。
感想待ってま~す!