孤独巡回
数時間経過して、昼休み。
有栖川煌斗は彷徨っていた。
目的は昼食の場を見つけること。
彼には友達と呼べる人間はほぼいない。先ほどの吉田にしても普段は行動をともにしたりはしない。そのため、昼食はいつも一人でとることになる煌斗なのだが昼食時になるとグループが形成され席が移動されてしまうことからくる一人の居づらさを解消するため、校舎裏庭のベンチで食べるのが習慣だった。
去年までは―。
4月になり、1年生が入ってきたことで、彼の安息の地は奪われることになった。もともと昼休みになるとほとんど人のいない(というか普段から人がいなかった。)裏庭だったが、今年からは1年らしき生徒がよく出入りするようになった。
当然そこにはいられなくなり、各地を転々としているという現状である。
まあつまりは友達のいない高校生の悲しすぎる日常というやつである。
繰り返すが一応は主人公です。
今日は文化部の部室が並ぶ、部室棟にきていた。
南高では最近運動部の活発化により文化部が軒並み縮小傾向になっている。つまりはそこで部員の数が足りず廃部になってしまう部もあり、今現在使われていない部室が結構あるのである。そこに目を付けた悲しい高校生であった。
しかし、思惑は外れ、使われていない部室には鍵がかかっていた。
当然といえば当然。
それでも諦めきれず使われていない部室を回る煌斗だったが、幸運なことにドアが開いている部室を発見した。部室棟のほぼ最奥に位置している部屋である。もとが何の部室なのかはわからないが、昼休みの時間もだいぶ減ってきたのであわてて中に入った。
が、不幸なことにそこにはすでに先客がいた。
しかしそれを見ても煌斗が、間違えて使われている部室に入ってきてしまっただとか、今はもうすでに他の事に使われている部室だったと思わなかった―、むしろここはやはり使われていない部室だと確信したのは―
彼女の口にたばこが咥えられていたから。