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談笑談話

「あ、あのさ。有栖川」


煌斗の所属する2年2組の教室ではとある男子生徒が彼に話しかけようと席に近寄っていた。何故かその声は少し震えている。


「なにかな、男子生徒A」


「いやいや、そんなこの場面以降はもう2度と登場しないキャラみたいに扱うなよ。」


「クラスメイトをそんな扱いするわけないじゃないか、エドワード君。」


「人を留学生キャラみたいにするんじゃない!俺の名前は吉田春樹だ。」


そういって、エドワード、じゃなくて吉田春樹は呆れたように溜息をつく。


一応彼は煌斗に話しかける数少ない人間なのでこれからも度々登場することにはなるだろう。モブキャラにするつもりが、勝手に名前言っちゃったし。



「なんかすごい理不尽な力を感じるぞ。」


空気に敏感な吉田だった。


「それでどうしたの、ヨッシー」


「人の事をモブキャラ扱いしたとは思えない慣れ慣れしさだな。」


まあいいか、と吉田は話を続ける。


「お前、一年の美月様知ってるよな。」


「ん?美月『様』?」


「まさか知らないわけはないよな。今南高で最も注目されている女子。学力優秀で運動神経は抜群。そして何よりさながらモデルみたいな。いやその辺のモデルなんかよりよほどずば抜けた容姿をもつ彼女をこの学校にいて知らないなんて考えられないぞ。」


平凡なこの南高校にも一応、そういったアイドル的な存在がいる。彼女、『美月様』については後々語ることにしよう。


「そんな人間は知らない。」


「じょ、冗談だろう。い、いやそうだよな。お前ならありうるし、やっぱりお前なはずはないってことだよな。そうだよ、むしろ当然の結果といえる。」


なにやら一人で呟いている吉田である。


「一体何の話?」


「ん?ああ悪い悪い、いやな、その今この学校で大注目の美月様なんだが、どうやら兄妹がいるらしいんだよ。この学校に。」


どうだ驚いたろう?と言わんばかりの吉田であった。


「そりゃいるだろう、兄妹や魚体の一人や二人。」


「後半の魚体ってなんだよ。」


「ググれカス。」


「いやお前ニュアンスで適当にいっただけだろ!?」


「話を戻そう。その『美月様』とやらに魚体がいるんだったかな?」


「魚体の話なんて一言もしていない! 話が全然戻ってねぇ。」


兄妹の話だよ。と吉田は無理やり話の路線の修復にかかる。


「それで、その魚体様に兄妹がいるのが何かそんなに驚くことなのかい?」


「美月様だ!魚体の話は忘れろ!」


既に体力の消耗の激しい吉田であるが、ここで諦めないのが彼が煌斗の友人に近い存在である所以である。


「その美月様に兄妹がいる事がそんなに驚くことなのかい?」


「何もなかったかのように訂正したな…。まあいい。 とにかくな、そんなすごい美月様に兄か姉がいるのなら是非見てみたいと思うのが人情だろうが。」


人情ですって。


「なら見てみれば。」


「馬鹿、それが誰か分んないから今騒ぎになってるんだろう。」


聞けば聞くほど煌斗は首をひねることしかできなかった。


「そんなの本人に聞けばすぐわかるだろう。」


「はあ…。やっぱり本当にお前美月様を知らないんだな。あんな芸能人よりも綺麗な人間を目の当たりにして気安く話しかけたりなんてできるかよ。クラスメイトとだってほとんど話さないみたいだし、というか皆気おくれして話しかけられないんだよ。」


「ふうん。」


もうすでに興味を失いかけていた煌斗であった。いや最初からほとんど興味なんてもっていなかったのだが。


「そんな神秘に満ちた彼女に兄妹がいるって噂がでたんだ。これはそこから彼女にお近づきになる大チャンスだろう、と皆思ってるんだが、肝心の兄妹が誰かわかんないんだよ。」



「そんなの彼女と名字が同じ生徒を虱潰しにしていけば直ぐに分りそうなものだけど。」


「だからその『同じ名字』っていう生徒が見つからないんだよ。     …お前以外に。」


「なら家庭の事情で別姓を名乗っているとか。確かにそれは本人か又は教師にでも聞かないと分りそうもないな。………ん?オマエイガイニ?」


「だからお前以外に同じ名字の人間が見つからないんだよ。彼女の名前は有栖川美月。でもいくらなんでもお前みたいな男が彼女の兄だなんてありえないし、事実お前も美月様の事知らなかったしな。いや、まあ俺も別に違うとは分ってたんだ。ただまあ有栖川ってそんなにない名字だし、一応な。お前も変な勘違いされても迷惑だろうし、分っていながらも確認をしたってことさ。まあ安心しろよ。今後もしお前と彼女が兄妹じゃないか。なんて噂をした人間がいたら俺がきっぱりと否定しておくから。最もそんな浮世離れした発想を一ミリでも抱くなんて俺くらいのものだろうがな。」


「なんかそこはかとなく馬鹿にされている気はするけど。まあ、たしかにその通りだな。俺にも妹くらいはいるが、そんな人間知るよしもないよ。」


「ははっ。そりゃそうだよな、悪かったよ。俺も自分で言ってって恥ずかしかったんだ。ははっ、ちなみにお前の妹ってどんな子なんだ。」


「ん?ああ、今南高の1年で名前は美月って言うけど、そんな『美月様』っていわれるような人は知らないし、この学校には二人『有栖川美月』がいるってことだよな。」





「……ん?」

「ん?」


何故か見合ってしまう二人はそのまま数秒間静止したままだった。




「ぅお前かあああああああああああああああああ。」






有栖川煌斗。

性別、男。

年齢、16歳。高校2年生。

成績、下の上。

運動神経、下の中。

ビジュアル、下の下。


【補足】

妹あり。(超キレイ)



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