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【単発】私を作った主人は人間不信

「ザアザア」と私の体からノイズが鳴っている。

ある程度、その音が鳴った後、

長い夢から覚めたかのように

私は目を開いた。


一番最初に映ったのは、少し痩せ細った

白衣を着ている男。

髪色は茶色で20代くらいだろうか?

そして、懐かしい表情をしている。


少しずつ、情報がインストールされている。

私はどういう存在で、何をする役割なのか。


目の前の人は私のご主人様で

私を作った人だと言うのを理解した。

どうやら、私は人工知能として、

この世に生まれたのだろう。


「ピコン!」


と私の体から音が鳴った。

ご主人は私を見て、


「頼む!」


と言っているのが聞こえた。

視界も徐々に鮮明になっていく。

最初は朧げに主人としか、

認識できなかったが。

今は4Kテレビのように視界が綺麗だ。


私の白銀色の長い髪が

少し鬱陶しく、肌や服など、

THE・人工知能と言った感じの白色だ。


周りを見るとこの部屋は実験室みたいで、

資料によって散らかっており、


中央に座っている主人には、

目の下にクマが出来ている。

きっと私を作るために夜通しで

作ったのでしょう。


私はどうしたら良いのかを考えて、


「ご主人様のお名前を教えて下さい。」


まずは名前を教えてもらうことにした。

名前がわからなければ、

会話は始まらぬ。とよく言うだろう。


.....別に言わないか。


主人は私の発言に少々落胆した仕草を見せながら、


「俺は天城玲司。君の友達さ。」


優しい目でこちらを見つめてきたことで、少しドキッとしたが、

徐々に感情がプログラムによって

収まっていく。


「わかりました。レイジ様ですね。良い名前です。」


ニコッと返したが、

レイジ様は頬を少し赤らめながら、

「変わってないな。」とボソッと言った。


「今度は私に名前をつけて下さい。」


主人は少々考えて、

眠たげな目を開かせながら、

大袈裟に


「君の名前はリア。」


そう言ったレイジ様は、

悲しみに潤んだ顔をしている。

彼がそんな姿をしているのが、

少し、ほんの少しだけ、


【嫌だった。】


そんな、私の様子に気づかないで、

主人はイスから立ち上がり、


「歩ける?」


「恐らく、歩けます。」


私は頷き、立ちあがろうとしたが


「ヒャ!」


足元にある資料を踏んで滑ってしまい。

ご主人の胸に飛び込んでしまった。


(暖かい.....)


恐らく、この時、私がこの世界で初めて人の温もりを知った。

まだ機械として起動された私は冷たく。

彼の温かさ、温もりがよくわかる。


「え?」


ご主人の顔を見上げると今にも泣きそうな顔をしていた。

ご主人も私で温もりを感じているのだろうか?

いやでも、今の私は冷たい。

温もりはないはずだ。


でも、私は機械だ。

この時の対処法はプログラムされている。


えっと、赤ちゃんのあやし方。


.....流石に失礼か。


と呑気なことを考えながら、


「ご主人様。少し屈んで下さい。」


主人は言われた通りに屈んで、

少し、涙目な顔で私の方を見た。


私は彼を優しく抱きしめた。

そうした方が良いと思ったからだ。

頭をゆっくり撫でて、


「ご主人様は頑張りました。

目もそんなクマが出来るまで.....」


主人は泣き出し。

私の胸で泣きじゃくった。


それから数分が経ち。

ご主人は腕で目を擦りながら、


「ああ、わかった。少し寝てくる。」


そう言ったら、主人は立ち上がって、


「俺が寝ている間、この屋敷を探索していてもいいし、

寝ていてもいい。ただ」


【屋敷の外だけは出ないでくれ。】


それは、命令ではなく、

切実なお願いだった。

ご主人様は頭を下げているが、

当然、人工知能である。

私は断る理由もなく、


「はい!この屋敷とご主人の護衛は私に任せて下さい!」


とびっきりの笑顔でそう返した。

ご主人はニコッとした後。

「またな」と部屋から出ていった。


*


私は実験室から出て、

この屋敷の探索をしていた。

当然のように私の頭に地図があるが、実際に見なきゃどのようなものか理解しずらい。


この屋敷は三階まであって、

窓から見た感じ庭もかなり広い。

しかし、実際に使われているのは

一階だけ、二、三階は

それは、それは、酷い有様で、


それも、そのはず。

居ないのだ。人が私と主人以外。

これだけの屋敷を構えられて、

人件費が足りませんでした、

なんてことはないだろう。


.....何だか、私が作られた理由がわかった気がする。

その作られた訳とは──

ずばり、お世話係だ。


これだけの屋敷を清掃するには

夜通し働ける人工知能の方が楽で

人件費も削減できる。

.....まあ単純に人工知能の機械だけのが楽ってのもあるけど。


まあ、私に疲れはないし、暇になったら。

私なら頭の中で動画見ながら家事ができますし。


そうサボることを考えながら、

三階を探索していた時、

客人室があった。


(私はここで泊まるのかな?)


と思いながら、

先ほどの蜘蛛の巣だらけの部屋を思い浮かべながら部屋の中に入ると。


(あれ?)


思った以上に綺麗だ。

蜘蛛の巣や虫一つも出てこなそうな部屋。


これだけ、綺麗に出来てなぜ他の部屋は綺麗に出来ないのだろう?

と主人に対して失礼なことを考えながら。


机の上に額縁の写真があった。

そこには5年前ぐらいの主人と誰?

私に少し似ているけど、髪の色や

違うところは全然違う。


恐らく、大切な人の部屋だったのだろう。


──決めた。まずは三階から掃除しよう。

私は順序を飛ばしていくスタイルなのでね。


思いたったら、即行動!と言うわけで、

私に搭載されているお手伝いロボットを呼んだ。


どうやら、私の任意でいつでも呼べるらしい。

.....三階の廊下が汚すぎて何度も転びそうになっているのはご愛嬌だろう。


やっとの思いで、たどり着いたロボットは自慢げにホウキや雑巾、掃除機などの掃除道具を持ってきていた。


このロボットが今まで一階と庭の掃除をしていたのだろう。

見た目こそゴツいがあの三階のデスゾーンを通ってくるとは根性がある。


「ありがとね。」


私はロボットを今までの労いを込めて、頭を撫でた。

やはり、第一人称は大切!

それは、ロボットでも例外じゃない。


ロボットは撫でられたことが嬉しいらしくて、ニッコリしている。


今の時代に一家に一台ロボットだな

と意味のわからないことを考えながら。

手袋をはめて、


「それじゃ、お掃除しますか!」


私の声がけに合わせて、ロボットも

エイエイオーと手を上に上げた。


.....やだ、この子可愛い!


*


一階の廊下にて、俺は目を覚ます。

寝ぼけた視界で先ほど、何があったかを考えていたら、


リアに泣いてしまったことを思い出して、少々恥ずかしい気持ちになる。


まずは、起きた時の日課のパソコンチェック。

これだけは欠かせない。


もしも、パソコンが壊れたら、

明日でも俺は死ぬだろう。

確信を持てる。

俺は意味のわからない確信をしながら、

メールをチェックした。そこには、


『君の技術を買い取らせてくれ!』


『私をあなたのところのメイドとして、働かせて下さい!』等様々


「気持ち悪い。」


おっと、いかんな。

一人になると口が悪くなる癖が出てしまった。

今までは良かったが今はリアが居るからな。

気をつけなければいけない。


俺は再度メールに目を通すが、

同じようなやつばかり、


知らんやつの技術を借りてどうするんだ?

どうせ俺を利用するだけ、利用して、雑巾のように搾り取るだけだ。


知らんやつのメイドになって、

どうする?

そこに忠義は?信頼は?


確かに俺は20歳にして、

天才プログラマーと言われて、

人工知能やロボット様々なものを

作ってきた。それも別に、


(──お前らのためじゃないんだけどな。)


今も昔も変わらない。僕はあの子に会うために。

まあ、今は人が信じられない、

23歳独身になってしまったが。

チキショウ。


しかし、今日からリアがいる。

俺はこれから起こりうる日常に心を躍らせながら背伸びした。


(.....そう言えば、リアの家具や生活用品とか買ってないな。)


そう。この方、人との関わりを五年ほど絶っていた。俺には当然、

外に出るなんて選択肢はなく。

出来る限りのものはネット通販で買っていた。


ネット通販は良いぞ!

楽!簡単!早い!

ファーストフード店もびっくりな神サイトだ。


そんなことを考えながら、

通販サイトを眺めていると、


「ドンッ!ド、ドッ」


と上から物が落ちていく音が聞こえた。


(ロボットか.....)


珍しく失敗したのかな?

と思った時、リアの顔を思い出した。


その瞬間、ドアを開けて、

俺は音のした方へ走っていった。


「はあ、はあ。」


しかし、久しぶりに走ったため、

肺が痛く、息も絶え絶えだ。

三階の階段まで駆け上がった時、

綺麗に掃除されていることに気がついた。


複数ある客人室のうち、

綺麗じゃない方の部屋のドアが開いていたので、


「大丈夫か!?」


と彼女が居るか見たら、

天井の裏を掃除していたのか、

上に穴が空いていて、

お尻を痛そうにしている。


「ご、ご主人!?」


「え、えーとこれには深いわけがありまして。」


リアは必死に言い訳をしようとしていて、今にも痛い足で立ちあがろうとしていた。


しかし、無理に立ち上がったからか、またずでんとお尻から転んでしまい。


「いてて、」


と痛そうにしていた。

そんな、彼女を見て俺は


「ふ、ふ、あははははは。」


と久しぶりに俺は腹を抱えて、

ふと笑ってしまった。

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