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第二話 彼女の作り方

 なんで彼女から連絡があって嫌な気持ちになるの? と思うだろうが、この気持ちをわかってもらうには説明がいる。


 まず、陰キャの僕にも彼女がいた。


 清潔であることには気をつけていたからかもしれない。


 この時、同じ年頃の男といえば、接客なんてせずに汗を流していた。だからだろう、ニキビだらけで顔にワックス塗ってますみたいな髪型をしていた。


 が、僕にはニキビもなくワックスじゃなくてジェルを使って根本から満遍なく髪をケアし、髪型を整えていたのである。さりげなく自然に。


 とにかくここでひとつ垂れさせてもらうけど、恋愛の好き嫌いとかの前には、キモいキモくないという段階があって、僕はキモくない方にいようとしていた。


 さらにいうと舐める舐められないみたいな段階もあって、そこも馬力と身長でクリアしていたところはある。


 そういう段階をクリアして、僕には彼女がいたわけだ。


 この彼女というのがほんと鬼のような女だったのである。


 最初は普通。むしろ、生徒会長なんかやってたりしてしっかり者だった。


 ポニーテールが素敵な、どことなく頼り甲斐のある自律心を匂わせていて、女子校にいたら王子様扱いされるだろうな。


 という美人。


 この美人が嫉妬深かった。


 付き合い出してからというもの、クラスの女と話すと、僕だけわかるように強目に机を叩いたりして警告を出す。強目に教科書をどんどん机で揃えて視線を引こうとする。


 まぁ、最初はそんなものだ。 


 嫉妬してるな可愛いな、とか思っていた。


 が、それはやがてどんどん進歩、進化を遂げて、この頃にはもうやりたい放題やっていた。手がつけられないほど増長していたのである。


 デートで奢らないと拗ねて道端に寝転んで「愛がない」と叫ぶ。


 ラインで毎晩寝るまで延々と話し続ける。


 僕が先に寝ると、起きると通話が切れている。


 学校にいくともう背中がブチギレていて、話しかけると人気のない場所に顎で呼ばれて胸の辺りを殴られる。


 のだが、向こうが先に寝るのは普通だった。


「いやいや、ちょっとおかしいんじゃないの」


 と、その邪智暴虐を咎めるとふん、という顔をしてこう言ってきた。


「先に寝られると寂しくなるでしょ」


「といってもねぇ、たまには先に寝ててもいいでしょ」


 すると、爆音で泣き出し、喚き出し、私は彼氏に嫌われている、あいつは浮気をしている、と仲の良い友達を訪ね歩いていくのである。


 この風説の流布泣きには、僕もほとほと困り果てていた。


 彼女は他の生徒の視線だと少なくとも、とてもまともで、さらには5年ぶりの女性生徒会長でもあらせられるから、僕なんかはそれこそ女だけでなく男からも、なんか猿みたいな奴が生徒会長を傷つけていてムカつくと思われていた。


 簡単に孤立させられて、僕は学校の中だと敵しかいなくなっていて、会話したければ彼女と話すしかないというような状況を作り上げられていたわけである。


 さらに彼女は、僕の母親が夕飯の時間は夜の仕事でいないことと、バイトが終わる時間をも徹底して把握していて、バイトが終わって帰って寝るまでの間、僕と通話を楽しみ、時間を搾取するのである。


 僕にだってやりたいことはあったが、こんなんだとできるわけないよね。空談、というハイデガーの言葉を思い出すなりしてやり過ごしていた。


 だから、電話が来るとため息が出るのだった。


「電話どうしたの?」


 なんて聞かれて僕は慌てた。八角さんに彼女がいると知られたくなかった。


 もしかするとワンチャンあるのかな、なんて思っていたせいだ。


 八角さんのことは小学校の頃から好きだ。さらに不完全燃焼の恋心を抱いていたわけだから、ガスが溜まりきっていて、出会ったと同時に火はついていたのである。


「親から、母親から」


 なんて言って、バイブレーションをそのままにしているが鳴り止む気配はない。


 こうなると、彼女は無限にメンヘラインを送ってくるから、僕は八角さんに断って、彼女にラインを送った。


『今日は残業頼まれた、ごめん』


 送って秒で『断れ』と命令が来たが『ごめん』と謝って既読をつけないように即タスキルした。


 これでしばらくは静かになるだろう。


 すると、八角さんはこんな事を言ってきた。


「ねぇ、マツくんってさ今彼女とかいる?」

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