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第二十二話 魔蔓延る大森林 反撃の“楔”

 【――ゲート。オープン】


 その言葉を合図に、巨大な門が一際眩い輝きを放つ。


 「こ、今度はなん――っ!」


 静焔をはじめ、その場にいる者たち全員が息をのんだ。


 異界に繋がる門の中から、何かが近づいてくる。


 それが放つ圧倒的な威圧感。


 殺気は感じない。


 押しつぶされそうなほどの力の塊が接近してくるにつれ、間の空間が急速に圧縮されていく感覚。


 歴戦の猛者たちが、縛り付けられたようにその場から指一本動かせない。


 徐々に、その異様な存在の影が見えてきた。


 「ひ――」


 締められる首を無理やり開きながら、静焔は叫ぶ。


 「退けぇぇぇぇ!」


 反射的に、その場にいた者すべてが、後方の森まで全力で撤退する。


 瞬間。

 

 門の向こうから数百単位の魔崩が縦横無尽に放たれた。


 無数の光の粒子となり、その魔崩が消えた後。


 森の一部に、破壊の限りを尽くされて大きく抉れた空間が生み出される。

 

 魔崩を放った元凶が、完全に門から姿を現す。


 深紅の装束に身を包んだ痩身の魔軍。


 それは、抉れた空間へゆっくりと歩いて行くと、周囲を見渡す。

 

 静焔たちの姿は、そこにはなかった。

 

 その事実を受け、それは振り返る。


 ――後から出てきた2体の赤い魔軍へと、言葉を介さず情報の共有を図る。


 

 静焔たちは、森の中にある大岩の影に身を寄せていた。


 「はぁはぁ、間一髪、だったな……」


 「あ、あんなの、反則っす」


 息も絶え絶えに話す静焔に、黄鶴が呼応する。


 「なんだぁ。おめぇら、逃げてきたのかよぉ」


 少し離れたところから、馬順が呆れたように言う。


 「あ、あなたこそ……。こんなところで何……してるのよ」


 雪焔に詰められ、馬順は顔を反らしてそれを無視する。


 「あいつ。さっきの光柱に吹っ飛ばされて気絶してたっす」


 「てめぇ。勝手に何言ってんだぁ」


 「なんっすか!私と霆華がいなきゃ追撃で死んでたかもしれないっす!」


 少し離れた場所からにらみ合う馬順と黄鶴。


 その馬順の右肩を、ポンっと叩く手があった。


 睨むように振り向いた馬順に、手の主である霆華が冷静に声をかける。


 「馬順。みんなに門のこと、話してもいいかな?」


 「ん?あぁ、勝手にしやがれぇ」


 馬順の返答を聞き、霆華はここにいる面々へ届かせるよう、声を張る。


 「みんな!あの門を止める方法を、馬順が教えてくれた。聞いてほしい」


 「門を止める方法?そんなこと、何で馬順が知ってるんだ」


 霆華の言葉に、蒼達が即座に反応する。


 チラッと霆華は横目で馬順を見る。


 ガリガリと頭を掻きながら、馬順は気だるそうに答えた。


 「あぁ。あの門に流れる魔力の流れを読んだ。それだけだ」


 「魔力、とは一体――」


 さらに問い詰めようとする蒼達を、静焔が手で制した。


 「蒼達。俺は、馬順を信頼している。まずは、霆華の話を聞いてくれ」


 静焔の真剣なまなざしに、蒼達はそれ以上の追及を止めた。


 静焔が目配せをし、霆華が軽く頭を下げる。

 

 「じゃあ改めて。門を止める方法は、――“楔”を打ち込むことです!」


 空間に、一瞬の沈黙が下りる。


 「ちょ。ちょっといいか、霆華」


 静焔が、少々慌てたように声を上げる。


 「はい。大頭!なんでしょうか」


 「その……もう少し詳しく説明してくれるとありがたいんだが……」


 「あぁ、それは俺が言うわ。その方が手っ取り早そぉだ」


 馬順が座り込んだまま皆に視線を向ける。

 

 「あの門。てっぺんから魔力が広がってぇ動いてる。だからぁ、その流れを止めちまおうってぇ話」


 「川をせき止めるみたいにっすか」


 「まぁ、そう言うことだ」


 案外原始的なやり方に、拍子抜けしたような表情がちらほら見える。


 「そ、その、“楔”って一体何なのよ」


 雪焔が期待を込めたような口調で問いかける。

 

 馬順はにこりと、柔らかい微笑みで受け止め、返す刀で告げた。


 「――それが分からねぇから、今からテメェらが持ってるもん、全部出せやぁ!」


 

 (異様な光景だなぁ……)


 霆華は目の前に並べられた武器や薬の数々を眺める。


 各々が所持しているものを地面に並べ、馬順が“楔になりそうなもの”を選別する。


 「……どいつもこいつも、碌なものもってねぇなぁ」


 「いらんこと言ってないで、さっさと決めるっす」


 「本当、何でこんな、恥ずかしい……」


 黄鶴と雪焔が外側から馬順を急かす。


 大岩に登り、魔軍の追撃を見張る静焔と蒼達はその様子を静かに眺めていた。


 「この緊張感のなさは、いかがなものか……。我が子もいるのが嘆かわしいな」


 「そうか?俺は悪くないと思うがな!」


 愚痴をこぼす静焔は、蒼達の真意を測るように目を向ける。


 「静焔。我らはもう老兵だ。胆力を鍛えられた若者がいる未来は明るいではないか」


 「俺は、まだ隠居するつもりはないが」


 「そいつぁ、俺もない。ただ――」


 蒼達はやかましく騒ぐ4人を見下ろす。


 「ただ、この戦場からあいつらを生きて帰す義務は俺たちにある、と思わねぇか」


 未来をつなぐ義務。


 それは、第一線で刀を振るい続けてきた静焔が朧げに感じていたものだった。


 見えずとも、明確な形となって眼前に現れたそれに、静焔は小さくため息をつく。


 「――いくつ年を重ねても、悩みは尽きないものだ」


 「まぁ、それが人生って奴だろうよ。俺も最近黄鶴たちと話が話なくなってきてな――」


 大岩の上で、二人の老兵は他愛ない話で笑いあった。


 

 「――ん?これは……。おい!これは誰のもんだぁ!」


 しばらくして、馬順が声を上げる。


 「あぁ!それは俺が、前線砦から持ってきたもんだ!」


 大岩の上から、静焔が声を上げる。


 馬順の手には、瑠璃色に輝く菱形の物体が握られていた。


 「こいつぁ、使えるぜ。何に使うかは知らねぇが、こいつは魔力をため込む。


 あいつの魔力をここに閉じ込めちまえば門全体に魔力は流れねぇ」


 「馬順。ということは、それって……」


 霆華が結論を急かす。


 馬順は霆華を一瞥したのち、全体へ告げる。


 「こいつは、“楔”になる。――門を、止められるぞ!」

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