第7話 ハンター試験④
昼休憩ということで、内部にある店で購入したおにぎりを食べしばし休む。
まだ30分くらい時間があるな。うーん……実践か……正直肩慣らしはさっきまでの測定でできたし、外にでて体を動かすのは少し面倒くさい。念を込めるという意味はあるかもしれんが。
やはりやることはないのでスマホをいじる。
今見てるのは国が出してるスキル一覧表。いやー数が多い。千はあるのではと錯覚してしまう。本当はもっと少ないだろうけど。
詳細をみるだけでもかなり面白くて暇つぶしになる。
そうやっていると時間が近づいていたので慌ててグラウンドに戻る。すでにほとんどの受験生が戻っていた。
数分後には全員揃い、試験官とその補佐も戻ってきた。
手元になにやら用紙を持っている。しっかりした紙だ。
「では、審査結果を発表いたします」
試験官がそう言葉を発した瞬間、あたりの空気が緊張する。
ここで落ちたら、ハンターにはなれないからな。
私はそれほどだけど。落ちたら落ちたでしょうがない。
すこし横目で見てみると、13番と5番こと牙河、2番はそれほどって感じ。なんかわかる。これまでの様子からして、この人たち自分に自信もってそうだし。
「1番、4番、6番、7番、8番、11番の方は不合格となります」
小さな悲鳴が上がるのが聞こえる。
人によっては人生をかけてここにきている人もいるかもしれない。
中には、就職活動の一環みたいな人もいるかもしれないし、実力試しに来ているだけの人もいるかもしれない。
なんにせよ、落ちるのはたいていの場合ショックな事である。
試験官がそれらの人に退場を促す。
後に残ったのは7人だ。
安堵した表情の人もいるし、さっき上げた、余裕ですって顔してた三人は変わらずだ。私もそういう表情だろうから落ち着いた人が四人いることになるな。
なかなかシュールな絵面ではなかろうか。
さてさて、とにもかくにも実践測定だ。
どんな試験になるのやら。いきなり試験、となったから普通するような対策とか何もしてないんだよな。
「今回の実践測定では、ハンター協会が生け捕りにした魔物と戦ってもらいます。会場は補佐が作成したあちらの檻です」
おー、予想が当たった。
とはいっても、順当に考えたらそうだよな。ここで変わり種を出しても特になんのメリットもないだろうし。
「今回用意した魔物はマッドウルフです。体調は約1.5m、鋭利な爪と牙、厚い毛皮が特徴です。20分経過するか、討伐するか、あるいは失格になった時点で試験が終了します」
失格、というのは怖気づいたとかそういうことだと思われる。
たいていの人は魔物と戦った経験なんてないだろうから、度胸とかそういう精神面の話だな。本当にハンターに向いている人はなんの恐れもなく向かっていくんだ。
物理的な問題は一次試験で取り除かれるし。
「測定は番号順に行います。2番、前に」
フードをかぶった少女が前に出る。
少女とは言っているものの、実際は18歳とかだろう。ハンター試験を受けられるのは18になってからだからな。女性の年齢を推考するのはマナー的にアウトだと思うのでこれ以上はやめておこう。
4mほどの棒が何本も立ち一辺10mほどの閉鎖空間を作っている。
あの棒は石でできているように見えるが、実際は魔力で強化されているから丈夫だろう。でなきゃ試験で使用するはずがない。
補佐のうち一人が地面に手を当てると、3、4本の棒が地面に埋まり入り口が出来る。2番が入ると棒は元に戻り、完全に閉じ込める形になった。
棒自体はそこそこのスピードで動くので出入りはすぐに済みそうだ。
入ったのを確認し、また別に補佐が動き始める。
「では、マッドウルフを召喚した時点で測定開始とします」
召喚か。
地球じゃそういう魔術で拘束し、あらかじめ檻に入れて受験者が入ったのを確認してから拘束を解いて~みたいにしていたな。
用意、とは言っているから、今はどっかに隔離でもされているんだろう。
十数秒後、2番と対辺の位置にある空間がゆがんたかと思うと、そこからマッドウルフが現れた。マッドとは、正気でない、という意味だったかな。その名の冠する通り正気には見えない表情をしている。
マッドウルフは2番を認めると、口を開け突っ込んでいく。それに反応し、2番は「石弾」の用意、そしてその口から異常な音を出す。
正直うるさい、なんというか不快になる。耳鳴りを思わせる音だ。彼女のスキルだ、確か「異音」だったかな? その名の通り嫌な音だ……。
その音にひるんだマッドウルフは動きを止める。止まったマッドウルフに、2番は石弾をいくつも叩き込む。
動きだしたら「異音」を、動きが止まれば「石弾」を。
これを繰り返して数分が経過し、マッドウルフは息絶えた。
コワい。嵌め技じゃないか。
丈夫な相手なら魔力が尽きるかもしれないが、そこそこの強さの魔物までなら通用しそうだ。ほかの魔術を覚えたり、魔力量が増えればさらに良くなるだろう。
「測定終了。2番は出てきてください」
2番は当然、といった風な表情で出てくる。
合格を確信していそうだ。じっさい彼女は合格するだろう。
3番は10数分程度でマッドウルフを討伐、試験は終了した。
だいぶビビってる風だったから受かるかは少しあやしいところだな。
「5番、前に」
5番こと牙河が前に出、檻の中に同様に入る。
空間が歪み、マッドウルフが出現する。
それと同時に牙河は両手を地面につけ、「獣化」のスキルを発動させる。
牙河の肌が獣らしい毛に覆われ、その骨格すらも変わっていく。両手を地面につけたのは、獣化を発動した状態だと、四足歩行の方が楽だからだろう。
骨格が変わることを想定しているのか、ズボンはかなりゆとりのあるものを履いているので、動くには支障なさそうである。上も半そでなので問題はなさそうだ。
牙河の元の身長が170後半くらいだったはずなので……今はマッドウルフより若干小さいくらいの体長だ。(人に対して体長という言葉をつかうのはアレな気もするが……)
そのあとは取っ組み合いの喧嘩だ。実態は殺し合いだが。
牙河は耐久性は多少高くなった程度でマッドウルフからの攻撃も効いてしまう。ただ、攻撃力、というか筋力は大幅に上がっているようで、ちぎっては投げ、ちぎっては投げ……。
なんというかえげつない戦いののち数分後に牙河はマッドウルフに勝利した。
あとで風呂入ったほうがいいよ。
9番は3番と似たような感じ。10番は完全に怖気づいてしまい、失格となった。
失格になったらもう挽回はできないようで、そのまま去っていった。
あの人の場合、ハンターにならない方が身のためだろう。
そして、私の番となった。
スキルの有無という不安点がすでに取り除かれているので、今更不安はない。
銃を携えて檻に入る。
マッドウルフが現れる。
頭を打ちぬく。
マッドウルフは倒れた!
終了。
なんともあっけない最期だったな、マッドウルフくん。
まあ、なんだ。石弾で滅多打ちにされたりちぎっては投げを繰り返されるよりはマシな最期だと思う。わざわざ祈りはしないけど。君害獣だし。
厚い毛皮といえど、魔力の圧でゴリ押せばそんなものはないに等しいのだ。
最後は13番だ。
試験官のいうことに従い、檻の中に入る。
マッドウルフが召喚されると同時に、マッドウルフが動く間もなくチャクラムを頭部めがけ投げる。そのスピードはなかなかのもので、かなり深く刺さっている。思い出したけど、アレ彼女のスキルか。加速みたいなやつだったような……。
死には至っていない。生き絶え絶えであることは確かだ。
チャクラムを念力か何かで引き抜き、もう一度マッドウルフ目掛け投げつける、他の投擲具も一緒に。
その一撃プラスその他でマッドウルフは息絶えた。
あまりにも早すぎて抵抗出来てなかったじゃないか。
「測定終了、13番は出てきてください」
さて。これでハンター試験は終了だな。
「以上でハンター試験を終了とします。二日後に通知書が届けられますので必ずご確認ください。12番は本部まで取りに来るようお願いします」
私は家ないからね。
「お疲れさまでした。バンドは受付にて返却してください。出口はあちらです、気を付けてお帰りください」
☆★☆
ハンター試験から二日後。
私はハンター協会に通知書を受け取りに来ていた。
この二日間はほとんど外で走ったりとか、そのくらいしか運動をしていない。ハンターになればそういう施設を借りられるだろうから、今日までの辛抱と耐えていたけど……果たして合格は出来ているのか。
まあ、あんな感じにワンパンして不合格ですって言われたらキレるけどね。
「宮間様、お待たせしました」
私は受付の椅子に座って通知書を持ってくるのを待っていた。
「こちらが通知書です。通知書に書かれていることに従い、この後の行動をとってください」
通知書は封筒に入れられた紙切れ一枚だ。
シンプルだな。封筒の中に入っていることを確認し、いったんホテルに帰る。相変わらずカプセルホテルで暮らしてます。そろそろ懐が寒くなってきたころだ。
ホテルに帰ってき、ちゃんと閉め外から見えなくなったことを確認し、封筒を開け中の紙を取り出す。
私の受験番号や名前などが書かれた後に、合否結果があった。
結果は合格だそうだ。
ふう、よかった。とりあえず職は得たということだ。
裏面を見る。どうやら、明日に新人研修があるらしい。
集合場所はハンター協会のB211室。あの受付をした建物の二階にあるらしい。新人研修が終わったら、ちゃんとした資格証をもらえるとのこと。
持ち物は戦闘の際に必要なものと、この通知書、あとは飲み物とか、お金とかだ。
そうだな……特に買うものはないかな。銃はあるし、服装もこれでいいし、飲み物は当日買えばいい。
それはそれとして、室内でじっとするのはあまり性に合わないので外に出る。初日? 初日は精神的に疲労していたんだ。
外に出ると、落ち葉がひらひらと足元に落ちてくる。
そうか、今の季節は秋だったのか。気がつかなかった。自分でも思っていたより追い詰められていたのかもしれない。
☆★☆
翌日。
私はハンター協会のビルの二階にいた。
広すぎる。211室どこだ? マップを見てもちょっとよくわからない。
外で魔物とドンパチしてばっかの私に優しくない。私は頭が良くないんだよ……。今日早めに来ておいてよかった。
えーと……211……211……あ、あった。ここか。
中で待機、だよな。
持ち物も忘れナシ、飲み物は買った。
よし。扉を開ける。
「だ~か~ら~写真撮るのやめろって! さっきから言ってるだろうが!」
「うるさいね! どうしようが私の勝手で」
パタン
なんか今良くないものが見えた気がする。
えー、喧嘩をする牙河と13番、それを冷めた目で見る2番。
部屋を間違えたかな。うん、きっとそうに違いない。
「よう、遅かったな」
牙河が扉を開け、私を出迎えてくる。
「ハァ~~~~……」
「ため息つくなや」




