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第5話 ハンター試験②

「次にスキル測定です。12番以外の方は20分後までにグラウンド中央に──」

「あの~、なんで12番の方はスキル測定を受けないんですか?」


 試験官の話を遮り、一人の受験生が声をだす。

 12番というのは私のことだな。

 もっともな疑問だと思う。試験をスキップできるようなものだから、そりゃ気になるだろう。


「……12番の方はスキルを所持していないからです。静粛に、静粛に。決して後ろ暗い事情はありませんし、ハンター協会も承認しております」


 会場が明らかに騒がしくなる。

 「詰んだな」、とか「マジかよ」という声も聞こえる。

 肩身が狭い。

 そして13番がこちらをすごい睨みつけてくる。

 ほんとにあとちょっと待ってほしい。


「なんでハンター試験に来たのかって──」

「その事に関する質問は受け付けません。12番も、応じる義務はありません。では休憩時間です」


 気持ちがいい人だな。

 この人さえいれば試験は問題なく受けられそうな感じがする。


 他の受験生が各々休憩に向かう中、私の横に立っていた13番が口を開く。

 改めて13番を見てみる。13番は私よりも身長が高い女性だ。長い黒髪を後ろでひとまとめにしている。目はつり目というのだろうか、少しキツイ印象だな。


「じゃあ説明してもらいたいのですが、あの身体能力は何なのですか? どの項目でも人外じみた記録を出していましたが」

「説明が難しいのですが……身体能力自体は魔力量が多いからとしか言えませんね」

「……それは百歩譲って信じるとして、なぜあなたはそんなことを知っているのですか?」


 信じてくれるのか。ありがたい。

 私としてもこれ以上の説明ができないからな」


「実は私異世界から来たものでして……神がいうにはここと法則が大して変わらないらしいんですよ」

「法則が大して変わらない世界……。なるほど。違う点は『スキルの有無』とかですか?」

「その通りです」


 察しが良くて助かる。


「私の世界では魔力量が赤より大きくなったら身体に影響が及ぶ、というのは広く知られたことだったので私も知っていた、という具合ですね。……説明が下手で申し訳ないです」

「いえ。にしても、そうか、異世界……ここと大して変わらない……。私もそうなれますか?」

「なれると思います。実際、私は力を発揮できていますし」


 13番は私という実例があるからか信じてくれた。

 よかった。ここで信じられないとか言われたらもうお手上げだった。


「なるほど、納得できました。ありがとうございます。最後にお願いしたいことが」

「はい、なんですか?」

「ツーショを撮りたいのですけど」

「はい、ツーショ……え? ツーショ?」


 いきなり何言いだすんだこの人。


「実は私インフルエンサーでして、今回ハンター試験を受けているのも知名度を上げるためなんです。あなたはさっきの話からして異世界人でしょう? 異世界人なんて珍しいですからね、ぜひ私のアカウントにあなたの写真を上げたいんですよ! どうですか?」

「あー……そういうのはちょっと……」


 もともと私メディア露出って好きじゃないんだよなあ。

 トップ3に入ってたやつが何を言っているんだという話だが。


「そうですか。それならしょうがないですね。時間とってくれてありがとうございました!」


 キャラ違くない? 何? びっくりするんだけど……。

 なんというか、嵐というか……ちょっと違うか……。


 そうだ。試験官に聞きたいことがあるんだ。


「すいません」

「はい、なんでしょう」


 すでにグラウンド中央で待機している試験官に話しかける。


「見学することってできますかね」


 スキルの程度が気になるからな、今のうちに見学しておきたい。


「可能ですよ。……そろそろ時刻ですね。今から案内することもできますが」

「ありがとうございます、お願いします」


 スキル測定ではスキル詳細や使いこなせているかなどを確認するらしい。

 グラウンドに設置されている的やらなにやらで測定を行うとか。

 実技試験の中ではかなり重要な項目とのこと。

 移動中に試験官が話してくれた。


「なら、私はかなり厳しそうですね」

「……そうですね。残念ながら」


 予想通りと言えば予想通りかもしれない。

 今更恐れてはいないが、余裕はないな。


「あちらのお席でご覧になってください。では私はここで失礼します」

「はい、わかりました」


 スキル測定を開始します、番号順にお並びください。

 と、試験官のよく通る声が聞こえる。


 観察してみると、たいていの人は標準と応用の中間レベル。たまに応用レベルがいる、といった感じだな。しかしスキルそのものの力がその程度なのかはわからない。活かしきれていない可能性もある。

 特に目を引いたのは獣化だ。身体強化と似たようなスキルだろうか。私はあんな魔術は知らない、この世界特有のものだろう。

 効果は、普通に身体強化だろう、たぶん。もしかしたら知らない効果もあるかもしれないし、一括りにするつもりはない。


「以上でスキル測定を終了します。次は20分後に魔術測定を行います。対象は2番、10番、12番、13番の方です。指定時刻までにこのグラウンドに集合してください。休憩時間です。お手洗いは係員にお尋ねください」


 ああ、そうか。魔術は全員使えるわけではないのか。

 これも変な感じがする。そうか、魔術がなくてもスキルがあるからわざわざ魔術を鍛える必要がないのか。

 意外と使える人も私よりは使えないかもな。 



☆★☆



「時刻になりました。2番、10番、12番、13番はグラウンド中央にお集まりください」


 呼ばれたのでグラウンド中央に。

 男性が私しかいない……。私以外は全員女性だ。


「測定は番号順に行います」


 2番、前に。と試験官は声を張る。

 2番の人はフードをかぶった少女だ。長い黒髪を下ろしている。無表情で何を考えているかつかみにくい。


「習得魔術は『石弾』と『身体強化』の二つで合っていますか?」

「はい」

「では、まず石弾の測定から始めます。あの的に向かって石弾を打ち出してください。使用可能な石はこのグラウンド上にあるもののみです」


 このグラウンドは真っ平というわけではなく、ところどころ石やらが転がっている。こういう地形にした方が実力が見やすいのだろうか。

 壁際にベンチなどはあるから、休憩は問題なくできる。


 石弾はそのまま石を打ちだす魔術だ。石を作りそれを打ち出すことも、元からある石を打ち出すこともできる。

 使用する石によって威力が変動しやすいから、試験官は制限を設けたのだろう。

 身体強化は初歩魔術に属するかなり簡単な部類の魔術。私ももちろん使える。初歩だからと言ってバカにしてはならない。そもそもこの魔術の区分は術式の複雑さで決定されている。なので初歩魔術でも魔力を大量につぎ込めば強くなりうるのだ。

 実際、身体強化はかなりの上位ハンターに用いられていた。こちらではどうか知らないが。


 あの2番の子は割と使いこなせているようだ。石弾も打つのがスムーズだし、身体強化の倍率も申し分ない。ああそうそう、身体強化は握力で測っていた。


 10番も似たような感じに測定していく。

 習得してるのは2個とか3個らしい。二人ともどちらかだった。


「次、12番。習得魔術は……初歩全般、応用大部分、発展三個、で合っていますか?」

「はい」


 標準は使えない。

 構築が初歩よりちょっと難しくなる割に威力がそこまで上がらないから、正直習得する暇がなかった。今も特にやる意味が見いだせないし。


「そうですね……。初歩、応用は得意なものを二つずつ、発展はすべて見せてください」

「了解です」


 初歩は……何にしようか。さっきの身体測定からして、私の場合バフ系は測定が難しいかもしれない。うーん……魔矢と水球でいいか。応用は爆破と光線。うんこれにしよう。

 魔矢はほとんど銃の下位互換だけども。

 試験官にその旨を伝える。


「ではまず魔矢から測定しましょう。あちらの的に向かって魔矢を放ってください。合計二回行います。ではどうぞ」


 私の身体能力は自分で言うのもアレだけどかなり人離れしている。

 だが魔術は人並だ。構築速度はさして早くないし、だいたい魔力量でごり押ししているだけだ。発展は取得自体はしているが、実際に使うことなんてほとんどない。

 ここ数年は初歩しか使った記憶がない。景気付けに爆破で銃をバズーカみたくした時くらいか? 初歩以外を使ったのなんて。


 魔矢は魔力を飛ばすだけの魔術だ。

 銃のように弾の生成と発射が分かれていないのでそこまで火力が出ない。出ないとは言え、大の大人をぶっ飛ばすくらいの威力はあるけれども。

 魔矢は問題なく二回とも的に命中。問題なく終わった。


 水球はそのまま水をだす魔術。以上。

 こちらも問題なく終了。


 その後もほとんどが普通の魔術で特筆すべき点はなかったので省略する。

 私は魔術は人並みだからね……。銃の扱いなら自信はあるんだけれども。


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